ぽれぽれ経済学

人民元と外貨準備金

2023年5月24日

人民元の外貨準備金

中国は中央銀行として世界で一番早く
デジタル通貨の研究を始めた国です。
なぜ中国は世界に先駆けて自国の通貨
人民元のデジタル化を進めているのでしょうか?

前回は中国のデジタル人民元の発行目的の一つ
「人民元の国際化」について解説しました。
人民元の国際化を強化することで
為替リスクを減らし
国際的な地位を高めることが
人民元のデジタル化でさらに進められる
可能性があるということでした。

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今回もその続編として
人民元の国際化に欠かせない
「外貨準備金」について詳しく解説します。

「外貨準備金」とは、
各国の中央銀行が貯めている外貨のことです。
為替レートが急に変化したとき、
私たちが急に大損しないように
為替を安定させるために使います。

国の貯めている「外貨準備金」など、
私たちの生活に関係がない。
と思われる方もいらっしゃるかもしれません
が、中国の目指すものがどんなものなのか、
その動きをイメージしていくためにも
「外貨準備金」は大切なキーワードになるので
一緒に見ていきましょう。

外貨準備金とは

各国の通貨当局の管理下にある、すぐ換金できる対外資産のこと。通貨当局が急激な為替相場の変動を抑制するとき(為替介入)や、他国に対する外貨建債務の返済が困難になったときに使われる。

人民元が世界で信用されるために

中国ではすでに60万人の市民が
無料で配られたおよそ18億円もの
「デジタル人民元」を市内で利用している
段階です。

中国の人口は多いので全土で使うには
もう少し決済の処理スピードを
上げていく必要があるので、まだ
本格導入には至っていません(2023年)

中国がデジタル人民元の導入を急ぐ最大の理由は

  • 世界で人民元が広がれば発言権が強まること
  • 通貨発行利益が得られること

デジタル人民元の開発はそのための1歩に
すぎません。

人民元が世界で信頼され通用する通貨に
なるにはいろいろな方法がありますが
世界中の国で「外貨準備金」として
貯めてもらうのも一つの手です。

すでに中国は世界の中で一番
「外貨準備金」を貯めている国です。
中国自身は外貨をたくさん貯めることに
成功しました。

中国の次なるステップは
ほかの国に人民元を貯めてもらいたいのです。
それが人民元が国際化して
さらなる高みへと昇る証になります。

まずは中国がどのように「外貨準備金」を
貯めることができたのか見ていきましょう。

安い人件費から始まった中国の成長

中国は1976年に毛沢東が亡くなって、
鄧小平が権力を握ると、後に
「社会主義市場経済」と呼ばれる
規制緩和が行われ経済の自由化が始まります。

国民が豊かになることが
中国共産党の一党独裁を認めさせる
唯一の方法でした。

中国は安い人件費を武器にして
安い商品をアメリカを中心に
輸出していきました。
アメリカの有名スーパーウォールには
中国製の安い日用品が今でも
たくさんそろっています。

2001年にはWHO(世界貿易機関)に
加盟して貿易の強化を行います。
経済が豊かになったので人件費も上がり
国民一人一人が世界の物が買えるように
なったのです。

中国にドルが流れ込む

アメリカの人たちが安い中国製品を買うと、
その売上金を中国企業はドルで受け取ります。
中国企業はそのドルを受け取ると
従業員の賃金支払いのためなどに
ドルを中国の銀行で人民元に換えます。
すると、中国の銀行にドルが流れ込みます。

各銀行に集まったドルは中国の中央銀行である
「中国人民銀行」に蓄えられます。
この中央銀行に蓄えられたドルなどの外貨を
「外貨準備金」と呼んでいます。

中国の人たちはアメリカのモノを
それほど欲しがらないので
中国に渡ったドルは中国から出ていかず
中国は「外貨準備金」が世界でも
とびぬけて多い国になりました。
各国の外貨準備高一覧 - Wikipedia

人民元を貯めてほしい

「外貨準備金」を貯めているのは
中国だけではなく日本やもちろん
他の国にもあります。

「外貨準備金」という名の通り
その内訳はもちろんドルだけではなく
ユーロやポンドなどさまざまな資産が
混じっています。

「外貨準備金」の使い方は
為替が急に変動した時や
また緊急時のモノの購入に使います。
「外貨準備金」は国の資産で国民の貯蓄です。
本来は国民のために使うものなので
多く貯めているから良いわけでもありません。
外貨準備金の正しい指標はありませんが、
貿易相手国とのバランスをとって
準備するのが大切とされています。

中国は世界中の国で人民元を
「外貨準備金」として
貯めてほしいと考えています。

今世界の「外貨準備金」の内訳は
どうなっているのでしょうか?

2022年の世界の外貨準備金の内訳は
アメリカドル 60%
ユーロ 20%
日本円 5.2%
イギリスポンド 4.9%
人民元 2.9%
になっています。
6月末時点の世界外貨準備における米ドルの比率は2020年第3四半期以来の水準まで上昇 – 豊トラスティ証券マーケット情報 (yutaka-trusty.co.jp)
人民元は5位に食い込んでいますが
中国の経済規模を考えると少ないです。

1999年にはアメリカドルは
世界の準備金の70%を占めていたのですが
今では60%までに減りました。

逆に人民元は1999年1.7%だったのですが
2022年には世界の外貨準備金の
2.9%まで伸びました。
中国は規制が強く世界に人民元が
広まっていなこともあり低い値ですが
2022年のロシアのウクライナ侵攻があり
ロシアがSWIFT(スイフト)と呼ばれる
国家間の送金グループから外されたため
ドルやユーロ以外の通貨を使う国が
増えています。

ロシアでは個人レベルでもルーブルを売り
人民元を買う動きも広がっていて
中国の国際化の後押しする動きがみられます。

世界で人民元を使う動きが広がっていけば
中国にとってうれしいことです。
もし今以上に使いやすい通貨になれば
もっと使ってもらえる可能性があります。
規模が大きくなれば「外貨準備金」に
組み込む量も増えていくでしょう。

デジタル人民元を必ず成功させて
さらに使いやすい通貨になることは
国際的な地位向上を目指す中国にとって
必要不可欠なものなのです。

まとめ

中国の「外貨準備金」について見てきました。
中国は自国では世界で一番「外貨準備金」を
貯めることができましたが
さらに狙うのはほかの国が人民元を
貯めてくれることでした。

人民元が世界に貯まっていけば
それだけ経済規模が大きくなっていること
ですし、通貨発行益も大きいです。
そして国際的な発言力も高まります。

世界に占める人民元の
「外貨準備金」の割合は低いものの、
この20年間で欧米各国はその割合を減らし
中国は伸びています。
日本も若干減らしています。

中国は規制が強いため今すぐに
人民元の国際化が高まるわけでは
ありませんが、なにかのきっかけで
状況が急に変化する可能性もあるので
今後も注意してみていく必要があります。

参考文献

今、なぜ中国のデジタル人民元が重要か (dir.co.jp)
為替介入で注目を集めた「外貨準備高」とは ? 何のために必要 ? | マネー | おすすめコラム | 大和ネクスト銀行 (bank-daiwa.co.jp)
準備通貨 - Wikipedia
ウクライナ侵攻後に中国人民元への依存が一気に進んだロシア経済 | 2023年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)
6月末時点の世界外貨準備における米ドルの比率は2020年第3四半期以来の水準まで上昇 – 豊トラスティ証券マーケット情報 (yutaka-trusty.co.jp)
外貨準備 - Wikipedia

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