前回は、労働市場における「需要」、つまり求人と賃金の関係についてみてきました。
労働市場の「需要」は、企業が働いてほしい人を求めることで、賃金が高いと求人数は少なく、低いと求人数が増えます。企業は作っているモノが売れたときだけ、求人を増やします。モノが売れれば生産性が上がって、それに合わせて求人数が増え、給料が上がるのです。
モノが売れなければ人は増やせませんし、給料は上がりません。
次にここでは、労働市場の「供給」、つまり家庭からみた労働を見ていきましょう。

労働市場の供給 家庭から企業へ
労働市場とは、求人と働きたい人が出会う場のことです。
労働市場には「市場」という名がついてはいますが、なにか築地市場とか東京証券所、などの特定の場所があるわけではありません。働きたい人が働き口に出会い、企業から家庭に賃金という名のお金が流れる全体を指します。つまり出会いの場や出会い方は、どんな形でもよくて、職業安定所やネットも労働市場です。
労働市場の供給とは、労働者を供給する「家庭」です。個人と考えても良いでしょう。私たち一人ひとりが持っている、その能力を社会に提供すること、それが労働市場の供給にあたります。
労働市場の供給は働きたい人の数と賃金の関係で表されます。

働きたい人は、仕事を選ぶときなにを基準にして選ぶのでしょうか?
通勤時間、仕事内容、福利厚生、休みのとりやすさ・・・など人によっていろいろな理由がありますが、経済学では、求職者は「賃金」だけを参考にしている、と考えます。
賃金が上がれば働きたい人が増えます。たくさんお金がもらえるなら働きたいと思う人が増えるからです。賃金が安いと働きたい人は減ってしまいます。では賃金はどれくらい上げたら労働の供給、働きたい人が増えるのでしょうか?
この場合も前回お話しした「弾力性」を参考にすることができます。
働きたい人の弾力性とは、賃金が変化した場合、働きたい人がどの程度変化するのかを表します。
働きたい人の弾力性は、その人の働きたい時間、フルタイムなのかパートなのか、その長さによって違います。
フルタイムは(週に40時間程度)弾力性がありません。賃金が10%上がったとしても、労働時間が10%増えることはありませんし、10%働きたい人が増えることもありません。だれでも一日の時間は24時間しかないので、フルタイムで働いていればそれ以上働く時間を増やすのは法律の関係もあるので、ちょっと大変ですよね。
パートの場合、労働者の供給は弾力的になります。パートの賃金を10%上げると、労働時間が10%より大きく増える傾向がありますし10%以上働きたい人が増えます。パートタイムで働く場合時間が比較的自由にできるので、時間を延ばすことも簡単にできるからですね。
供給曲線がシフトするとき
次に働きたい人がどんな時に多くなるのか、少なくなるのかを考えてみましょう。そんなのは個人的な問題でお金が必要になったときに働くし、必要なければ働くのをやめるだけだ。と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、たくさんの人のデーターを取ると個人的な問題もフラットになってある方向性が見えてきます。
まず、働く人の数は人口の増減によって変化します。働きたい人の数が増えると、賃金に関係なく全体的に「供給曲線」右へシフトします。逆に高齢化などで働きたい人が減れば働く人が減って曲線は左へシフトします。
また2018年に日本政府の発表した「経済財政運営の指針」いわゆる『骨太の方針』で外国人労働者の受け入れを拡大していくことを打ち出しました。このような国外からの労働者の受け入れも、人口増加と同じように働く人の供給を増やします。

まとめ
労働市場の供給について解説しました。労働市場で供給とは働きたい人の数で、供給元は「家庭」でした。働きたい人は賃金が高いと増え、低いと減りました。フルタイムで働いている人は賃金が変化してもその数があまり変化しませんが、パートタイムで働く人は賃金を少し高く変化させると、働きたい人の数がそれ以上に増えます。
労働の供給を増やすには人口を増やすことが主な政策になりますが、日本でもヨーロッパなどの先進国では、人口は打ちどまって減っていく傾向がみられます。どこの政府税収確保のため、人口減少に歯止めをかけようと政策を練ってはいますが、決め手はありません。アメリカでは移民を受け入れているため人口は増えています。
日本では2022年に55万人人口が減りましたが、これはだいたい鳥取県と同じ人口数です。日本の人口減少数は、鳥取県の人たちが毎年すべていなくなってしまう、そんなレベルになっているのです。
参考文献
ティモシー・テイラー 経済学入門
厚生労働省 アメリカ (mhlw.go.jp)
統計局ホームページ/人口推計 (stat.go.jp)