前回は企業の投資について解説しました。
企業は売り上げを伸ばすために、また生産効率を上げるために、新しく設備投資を行います。必要な資金は、「内部留保」や「銀行からの融資」「株式や債券の発行」などの方法を使って集めます。
資本市場も需要と供給によって成り立っています。資本市場で「需要」は企業です。そして「供給」は私たちの貯蓄や投資です。
私たちが銀行にお金を預けると、そのお金は私たちが望んでいなくても企業へ貸し出されます。銀行はお金をただ持っているだけでは、かさばりますし、置き場所に困ります。その防犯にもお金がたくさんかかります。そのため銀行は、お金の必要な人に貸して「利子」という利益を得ています。
このように私たちの貯蓄は、間接的ですが企業への投資として使われています。
私たちが何気なく預けているお金は、資本市場で大いに活躍しています。けれど皆さんの中には資本主義という考えに何か不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。皆さんの不安は昔から多くの人も同じように感じていました。
ではその資本主義とは、何が良くてなにが悪いのかまとめてみましょう。

資本主義の抱える問題
まず資本主義とはなんでしょうか?
資本主義とは、経済活動という「モノの交換」をするとき、たくさんの個人や企業が自由に意思決定を行い、利益の追求を目指す経済システムです。生産するために必要な原材料、土地、建物などを個人や企業が所有します。出来上がった製品を市場を通じて取引すれば、社会全体の利益が最大化されると考えています。
資本主義の特徴としては、次のようなものが挙げられます。
- 私有財産を認めること
生産する手段を個人や企業が私有する。これがものすごく大事です。これがないと人は全くやる気が出ません。 - 自由競争しなければいけない
個人や企業は自由に意思決定して競争しなければいけません。権力者が圧力をかけてえこひいきしてはいけません。 - 利益を追求できます
利益の追求が目標です。
資本主義は、18世紀後半のイギリスで始まり、その後、世界中に広まっていきました。今日、世界経済のほとんどは、資本主義によって支えられています。
けれど、そもそも資本市場は本当に必要なのでしょうか?
資本主義は貧富の差を広げ、環境を破壊しました。そのしくみに反対する人は、マルクスを初めレーニンなどの社会主義者、最近ではノーム・チョムスキーといったたくさんの著名人がいます。
資本主義の拡大は必要なのでしょうか?
資本主義はこれまで多くの国の経済成長や貧困をなくしました。経済成長は、人々の生活水準の向上や新たな雇用の創出につながり、また貧困削減は、人々の健康や教育の向上、社会の安定に貢献しています。
しかし、皆さんの中には、これ以上新しい事業を立ち上げたり、生産性を上げることは、貧富の差がさらに大きくなり、環境が破壊され、世の中にごみを増やすだけで意味のないことだ、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
資本主義というしくみが、この先もずっと続けられるのかどうかは、今も議論が続いています。
環境破壊は、気候変動や生物多様性の喪失など、地球規模の課題ですし、格差拡大は、社会の分断や不安定化につながる可能性があります。
資本主義というあり方は、人にとって良い部分がありました、けれど課題もあります。資本主義の社会がこの先も持続可能なのかどうかは資本主義自身がどう変化していくかにかかっています。
資本主義の目指す3つの変化
今後資本主義は、以下の3つの方向に変化していかなければいけません。
- 持続可能性を大切にする
資本主義は、経済成長を追求するあまり、環境破壊や格差拡大などの問題を引き起こしてきました。今後は、持続可能性を重視し、環境や社会に配慮した経済活動に変えていかなければいけません。
例えば、環境保護や気候変動対策、格差是正などの取り組みに予算をつけなければいけません。また、企業の社会責任を重視し、企業が社会や環境に貢献するような仕組みを構築する必要があります。 - 多様性を尊重する
資本主義は、個人や企業の自由な経済活動を重視してきました。けれど、古い価値観や利益を優先する傾向があり、柔軟性に欠けています。また多様な文化や考え方を尊重する姿勢が不足しています。
今後は、多様性を尊重し、すべての人々が平等に経済活動に参加できるような仕組みを構築する必要があります。具体的には、女性や障害者、マイノリティなどの社会的弱者の社会参加への支援を進める必要があります。 - テクノロジーの活用
テクノロジーの進化は、経済活動のあり方を大きく変えます。新しいテクノロジーはできるだけ多く導入して、生産性の向上や効率化を図り、経済成長を実現していくことが重要です。
例えば、人工知能(AI)やロボット工学などのテクノロジーを活用して、新たな産業やビジネスモデルを創出します。また、テクノロジーを活用して、環境や社会に配慮した経済活動を行うこともできます。
これらの変化を実現するためには、政府や企業、個人がそれぞれの役割を果たす必要があります。
政府の役割は、持続可能性や多様性の尊重、テクノロジーの活用を促進させる政策や法改正ができます。
企業は、社会的責任を重視することで、社会や環境に貢献するような取り組みを強化できます。
個人は、そのような政府や企業の取り組みを支持します。そして多様性を尊重し、テクノロジーを活用すれば、社会の変化に積極的に貢献できるでしょう。
資本主義は、世界の発展に大きく貢献してきました。しかし、その一方で、環境や社会に負荷をかけてきたことも事実です。今後、資本主義を持続可能な形で発展させていくためには、上述した3つの方向に変化していくことが重要です。

まとめ
資本主義について解説しました。資本主義とはすべての人が自由に取引をすることが出来る経済活動のことでした。生産するために必要な道具や土地は自分のものです。作ったものをどのように売るのか、売らないのかも自分で決めることが出来ました。このようなしくみを取り入れた場所の人々は豊かに暮らせるようになりました。けれど貧富の差や環境破壊がうまれ、その経済活動のしくみに多くの人が疑問に思っています。
資本主義の考え方は絶対ではありません。しくみに課題があれば取り除いていかなければいけません。特に問題として挙げられているのは、富の偏り、環境破壊、多様性の欠如です。これらの課題を解決することが求められています。