皆さんは老後の資金についてどんなイメージを持っていますか?
「まだ先のことで全くイメージがつかない」とか「不安しかない」という方も多いと思います。必要な資金はあまりにも多いので、用意できるかどうか分かりせんし、老後のライフプランは「失敗してしまったが、またやり直せばいい」といった試行錯誤ができるものでもありません。
老後のライフプランを考えるとき、検討の一つとして「投資」が挙げられます。
投資は、その利益を必ず約束しているものではありません。けれど手持ちの資産を増やすために、投資は一つの選択になりえるでしょう。
投資は投資についての知識が欠かせません。何の知識もないまま投資を行えば大切な資産を失ってしまいます。
あらゆるスポーツにルールがあるように、投資にもルールがあります。ルールに違反して「ひどい目にあった」と訴えても、だれもかばってはくれません。
皆さんが投資のルールを正しく理解できるように、ここからどんなことに注意しなければけないのか、ゆっくり解説していきます。

日本人は投資が苦手であると意識しよう
実は日本人は「投資が苦手だし、向いていない」と言われています。
これは日本人が無能であるとか価値がないという意味ではありません。人にはそれぞれ向き不向きがあるように、日本の文化の中に投資を美徳としない傾向があります。
例えば、投資でお金を儲けることは「楽してお金を儲けている」というイメージを持つ人が多いですが、実際は全く違います。日本では「投資で稼ぐなんて汚いお金だ」とか「額に汗して稼ぐお金が尊い」といった考えがあります。
しかしこれは大きな間違いです。なんとなく上がりそうな株でもうけたり、たまたま為替で儲けられる、ということもありますが、それを継続して利益を出すことはとても難しいことです。
投資で利益を出すために必要な力は「これから起こることを予想する能力」です。この先世界中でどんなことが起こるのか、それを予想するのはとても困難です。経済や政治だけではなく、歴史、文化、思想などの、人々が積み上げてきた知識を理解し、刻一刻と変化する社会情勢を把握するために、日々努力を重ねていかなければいけません。
私たちは投資が苦手な傾向がある、ということ理解したうえで勉強をしていきましょう。そうすれば損失をできるだけ抑えることができるはずです。
なぜ投資に苦手意識をもつ3つの理由
日本人は投資に苦手意識を持っている人が多いことは数字にも表れています。
金融庁の調査によると、日本人の個人金融資産のうち、預貯金が占める割合は約54%で、株式や投資信託などの投資商品は約15%に過ぎません。この割合は、アメリカやイギリスなどの先進国と比べて圧倒的に低く、日本人の投資への関心の低さを示しています。
資金循環の日米欧比較 (boj.or.jp)
日本人が投資に苦手意識を持っている理由は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
- リスクに対する不安
投資には、元本割れのリスクが伴います。そのため、日本人は投資を「ギャンブル」や「危険なもの」と捉え、避ける傾向があります。 - 知識や経験の不足
投資には、ある程度の知識や経験が必要になります。そのため、投資について詳しく知らない日本人は、投資に踏み出すことをためらいます。証券会社のセールスマンに言われるままに買って、大損する人も少なくありません。 - 文化的な背景
日本人は、勤勉で真面目な国民性を持っています。そのため、投資のようなリスクを伴う活動よりも、預貯金のような安全な資産運用を選ぶ人が多いのです。
しかし、近年では、投資に関する情報や教育が充実し、投資への関心が高まりつつあります。また、年金制度の改正や、少子高齢化の進行など、将来に向けた資産形成の必要性が高まっていることも、投資への関心の高まりを後押ししています。

勧められるままに・・・
最近ではネット証券が使いやすくなっていて投資を始める人も多いですが、たくさんある商品の中でどれを選ぶのか、プロでも判断が難しいものです。
そんな時、証券会社のお勧め商品を選ぶのはよくあることです。けれど、セールスマンに勧められて買ったのになぜか損をするということが発生します。なぜこんなことが起こるのでしょうか?
証券会社のセールスマンは詐欺師ではないので、お客さんが儲かれば、会社も儲かりますのでわざと損をさせているわけではありません。ここで逆の立場になって考えてみます。商品を販売する側にとって最も重要なのは「販売手数料をかせぐ」ことです。会社は手数料を取って儲けられれば、常に上下する株を買うよりも確実にリスクなく儲けることが出来ます。
手数料は株の価格にしてみればわずかなものなので、つい見落としがちですが証券会社にとっては稼ぎ頭です。手数料をしっかり確認して、その金額にあったメリットが受けられるのか、自分が納得できる証券会社を選ぶことはとても大切です。
以前は国からの保護を受けて業務をすることが出来ましたが、今では証券会社もグローバル化されていて競争が激化しています。ネット証券では手数料が無料は珍しくありません。証券会社も収益を上げるためにあの手この手を考えなければいけません。
良く分からないものを進められたら・・・
証券会社から良く分からない商品を勧められることもあります。ある会社の株価や為替の値段は調べればすぐに分かる商品ですが、デリバティブのようにその中身が分からないもの、値段がはっきりしないものも販売されています。
デリバティブとは、複雑な金融工学を使って価格を決めている商品ですが、複雑な計算式を使っていて、その計算の意味を理解できる人は少ないです。そんな計算式を見せられても「自分の知識が足りなくて分からないだけだ」と自虐的に考えず、分からなければやめてみるという判断も必要です。一番いけないのは、何も考えずにおすすめを買ってしまうのが一番危険です。
まとめ
日本人はなぜ投資が苦手なのかを見てきました。
日本人の投資のイメージは「ギャンブル」と考えたり、また働かずにお金を稼ぐことへの嫌悪感から、日本では金融の知識が理解されているとは言えません。またお金をどのように扱うべきなのかを知らぬままに大人になり散財してしまう人もいます。
投資とは他の人を出し抜かなければ利益が出ない商品です。つまり他の人より早く違った行動をすれば、たくさんの収益を得られます。他の人と違う行動への抵抗感が強いのも、投資に苦手意識を持つ原因の一つでしょう。
証券会社からやさしげに声をかけられ断れなくなり、良く分からない商品を買ってしまうこともあります。証券会社からの情報には良いものもたくさんあります。それらは積極的に利用させてもらいましょう。けれど証券会社も普通の企業です。話すと親身になって相談してくれてるので、つい全部言われるがままになってしまいがちですが、セールストークにはそれなりの戦略がある、ということを心にとめて話を冷静に聞くことが大切です。
参考文献
経済学入門 ティモシー・テイラー
お金以前 土屋剛俊
投資のきっかけ 【個人の資産形成に関する意識調査】QUICK Money (moneyworld.jp)