あなたは「ウメボシ」のような生き物に出会ったことはありますか?
「ウメボシ」は梅の実を干したもので、生き物ではない・・・
と思った方もいらっしゃるかと思いますが、海には不思議な生き物がたくさんいるようです。
この不思議な「ウメボシイソギンチャク」は、神奈川県の天然記念物にもなっている貴重な生き物なんです。
もちろん、本州中部から九州にかけて見られますので、ぜひあなたも見つけてみませんか?
ここではウメボシイソギンチャクの生態や観察の仕方を最新の研究を交えてお伝えします。
ぜひご覧ください!!

ウメボシイソギンチャク
刺胞動物門
花虫綱
イソギンチャク目
ウメボシイソギンチャク科
ウメボシイソギンチャクの形態
海岸にある岩の隙間を覗くと真っ赤な梅干し色のイソギンチャクがみられることがあります。
これがウメボシイソギンチャクです。
普通のイソギンチャクは、いつも海水の下に住んでいますが、このウメボシ型の「ウメボシイソギンチャク」は、乾燥に強いイソギンチャクなので、海水に浸かっていなくてもしばらくは耐えることができます。
そのため、海の水が引いて海岸に近づきやすくなると、岩の間の見つかりやすい場所についているので、とても観察しやすいです。
ウメボシイソギンチャクの、体の大きさは3センチくらいです。
体全体が真っ赤な赤でよく目立ちます。
海水に浸かっていないときは、きゅ!っと体を縮めています。
その様子がウメボシにそっくりなので「ウメボシイソギンチャク」という名前がついています。

海水がまたさしてくると、体の上にある触手を広げて食事をします。
触手には「刺胞(しほう)」と呼ばれる毒を仕込んだ棘を噴射できる細胞が並んでいます。
この毒で、小さな甲殻類などを麻痺させ食べることができます。
触手によって捕らえた食べ物は中心にある口に運ばれ、口から入ってきた食べ物は下の胃に運ばれ消化されます。
解剖学的には、96本から192本の触手、体柱(胃血管腔、咽頭、生殖腺、牽引筋を収容)、基部(固体表面に結合する基部足を含む)の 3 つの部分に分けることができます。
ウメボシイソギンチャクの生息域
ウメボシイソギンチャクは、海の生き物の中でも生息域の広い生き物です。
ウメボシイソギンチャクは潮間帯の岩や石、その他の硬い基質に付着し、通常は海岸近くで見られますが、20 メートルまでの潮間帯でも生息できます。
ウメボシイソギンチャクは、完全に海水に浸かっていても、砂に埋もれても、また完全に海水から出ていても生きることができます。ウメボシイソギンチャクは海水から出ているときは、触手を内側に引っ込めて、小さなウメボシのような赤い塊になって乾燥をやり過ごします。
ウメボシイソギンチャクは潮間帯に生息するため、暑さ寒さにさらされますが、生育に最適な温度は 18.7 ~ 19.9 ℃ です。
また河口など、塩分濃度が変化する水域にも耐えることができます。

ウメボシイソギンチャクの生殖
ウメボシイソギンチャクは、幼生を育てる(胎生生殖)のイソギンチャクとして知られています。
ウメボシイソギンチャクの雄の精子生殖腺で発達し成熟すると消化管腔に入ります、そこで卵子と受精して発育します。
有性生殖も可能ですが、栄養成長の単為生殖(再生や基部の裂傷など)による無性生殖も可能です。
(Banister and Campbell、1985年;Rostron and Rostron、1978年;Shick、1991年)
受精が行われ発達し、プランクトン幼生になったウメボシイソギンチャクは、親から這い出て短期の間、海で自由に過ごします。
その後、別のイソギンチャクのオスまたはメスの空洞に入り、さらに成長します。
幼生イソギンチャクが「生まれる」準備が整うと、「親」イソギンチャクは新しい個体を水中に投げ飛ばし、着地させた後、固くて孤立した基質に身を固定します。( Banister and Campbell、1985 年、Rostron and Rostron、1978 年、Shick、1991 年)
このように、ウメボシイソギンチャクは無性生殖で増えることが知られています。
しかし、無性生殖だけだと、集団が同じ遺伝子を持つようになり、環境変化に弱くなります。
そのため有性生殖もしているのではないかと考えられていますが、ウメボシイソギンチャクが有性生殖を行っているという証拠が十分見つかっていません。また有性生殖に必要な遺伝子が一部欠損しているということが分かっています。
最近の研究では、ウメボシイソギンチャクのクローン集団が、環境の変化に強く、安定した個体群を維持する上で重要な役割を果たしていることが示唆されています。
ウメボシの殖えかた | 沼津港深海水族館・シーラカンスミュージアム公式ブログ (ameblo.jp)
観察のポイント
ウメボシイソギンチャクを観察する際には、次の点に注意すると良いでしょう。
- 潮間帯の岩場や磯を干潮時に探す
ウメボシイソギンチャクは、潮間帯の岩場や磯に生息しています。
干潮時に探すと見つけやすいでしょう。
干潮時間はしおみエールが参考になります。 - 触らない
ウメボシイソギンチャクは、触ると触手を縮めてしまいます。
観察する際には、触らないようにしましょう。 - 周辺環境に気を配る
ウメボシイソギンチャクは、潮間帯の生き物です。
周辺環境に気を配り、安全に観察しましょう。
ウメボシイソギンチャクは、潮間帯の代表的な生き物の一つです。
観察を通して、海の生き物について学ぶことができます。
ぜひ、観察してみてください!

参考文献
写真で分かる磯の生き物図鑑 トンボ出版
日本動物大百科 平凡社
ウメボシイソギンチャク - Wikipedia
Special Story お腹の中はクローンでいっぱい-ウメボシイソギンチャクの無性生殖 | JT生命誌研究館 (brh.co.jp)
イソギンチャクの繁殖 (chiba-muse.or.jp)
https://animaldiversity.org/accounts/Actinia_equina/