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寡占ってなんだろう?

寡占ってなんだろう

前回は企業の独占的競争について見てきました。
「独占的競争」とは、同じような商品を作っていますが、デザインやサービスが少し違うことで他の企業と自社製品を差別化している競争のことでした。

何回かに分けて企業の競争の形について解説してきましたが、最後に「寡占」について解説します。「寡占」が私たちにどのような影響を与えるのか見ていきましょう。

寡占ってなんだろう?

企業は日々程度の差はありますが、競争にさらされています。


「寡占」という競争状態は、上のグラフのように「独占的競争」より「独占」に近いところにあります。

寡占とは、数社の企業が市場のシェアのほとんど、またはすべてを占めていることをいいます。
寡占市場で気を付けたいのは、寡占企業同士で価格を競争し合って引き下げ合っているのか? または無意識に結託して価格を引き上げているのか? 注目します。もし後者なら「独占」とほとんど変わりがないからです。

寡占はどこで見られるの?

寡占になっている業界は世界中で存在します。具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 携帯電話通信
    日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社のシェアは80%を占め寡占状態にあります。アメリカの通信業界もAT&T、Verizon、T-Mobileなどの大手企業が市場の90%を占め寡占状態です。
  • 航空
    日本ではANAとJALの2社でシェアの95%を占めています。アメリカには航空会社が10社以上ありますが寡占が見られ、アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空などの大手企業が寡占状態にあります。
  • 自動車
    日本ではトヨタ、ホンダ、日産の3社がシェアの80%を占めています。世界でもフォルクスワーゲン、トヨタ、GM、ステランティスなどの大手企業が40%を占めていて寡占状態になっています。
  • 製薬
    2023年の世界製薬会社の売上高ランキングによると、上位10社で世界の製薬市場の約45%を占めています。また、上位20社で世界の製薬市場の約60%を占めて寡占が進んでいます。上位の主な企業は有名なファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ロシュ、メルク、グラクソスミスクライン、ノバルティスなどです。
  • IT
    世界ではGoogle、Amazon、Apple、Microsoft、テンセント(中国)の大手企業5社が世界のIT市場の約60%を占めています。

なぜ寡占が進むのですか?

なぜ企業の寡占が進むのでしょうか? その理由として、以下のようなものが挙げられます。

  • 技術革新による参入障壁の高さ
    技術革新によって、新規参入企業が参入するために必要な資本や技術が高くなり、参入障壁が高まって新規参入が難しくなることがあります。
  • 政府による規制
    政府が特定の企業を保護したり、新規参入を規制したりすることで、寡占化が進むことがあります。日本では戦後の体制が今も残ったままの業種があり新規参入しにくくなっています。
  • M&Aによる業界再編
    大手企業によるM&Aによって、業界の競争が減少し、寡占化が進むことがあります。

寡占の3つのデメリット

寡占が進むと私たちにどのようなデメリットがあるのでしょうか?

  • 価格の引き上げ
    寡占企業は、競争相手がいないために、価格を自由に設定することができるので、消費者にとって不利な価格引き上げにつながる可能性があります。
  • サービスの低下
    寡占企業は、競争相手がいないために、サービスの向上に努める必要がなくなり、消費者にとって不利なサービスの低下や品質の低下につながるかもしれません。
  • イノベーションの停滞
    寡占企業は、競争相手がいないために、新製品や新サービスの開発に積極的ではなく、イノベーションの停滞を引き起こします。

寡占化は、消費者や社会にとってさまざまな問題を引き起こす可能性があるため、政府による規制や公正取引の推進などにより、寡占化を防止する対策が求められています。

寡占を防ぐために

寡占状態を防ぐためにはどのような対策が有効なのでしょうか?

  • 競争政策の導入

政府が、寡占状態を防ぐための政策を導入する。例えば、企業の合併を規制したり、新規参入を促進したりする。

  • 消費者の意識向上

消費者が、寡占状態の市場における問題を理解し、行動を起こす。例えば、価格が高い商品やサービスは買わないようにする。

寡占は、経済にとってさまざまな問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

まとめ

企業の経営者はできるだけ競争は避けたいと思っています。完全競争で少ない利益を奪い合うより、独占状態で大きな利益を受けながら、価格や生産数を自社の有利なように決められた方がずっとうれしいのです。

競争は企業にとってつらいものです。けれど消費者にとっては競争ほど好ましいものはありません。競争が高まれば低価格で良いものが手はいるからです。

いつも同じような会社の製品が目に入ると安心して、つい信用してしまいますが、よく考えるとその会社が業種全体を占めていて競争相手が少ない状態になっているだけかもしれません。企業は競争相手がいなければ価格を引き上げるので、もしかしたらその商品は不当に高い商品かもしれません。

商品を買う場合ちょっと「企業の競争」について考えてみてください、もっと良い選択肢が見つかるかもしれません。

参考文献

経済学入門 ティモシー・テイラー
業界の動向やランキング、シェアなどを分析-業界動向サーチ (gyokai-search.com)
スタティスタ – 世界の統計調査データを使い放題 | Statista

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