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寡占ってなんだろう?

寡占ってなんだろう

前回は企業の独占的競争について見てきました。
「独占的競争」とは、同じような商品を作っていますが、デザインやサービスが少し違うことで他の企業と自社製品を差別化している競争のことでした。

何回かに分けて企業の競争の形について解説してきましたが、最後に「寡占」について解説します。「寡占」が私たちにどのような影響を与えるのか見ていきましょう。

私たちは「寡占」を理解することで、より賢い消費行動、そして効果的な事業戦略、また、より良い社会全体の利益につながる政策立案とは何かということを理解することができます。

寡占ってなんだろう?

「寡占」という競争状態とは、少数の企業が市場のシェアのほとんど、またはすべてを占めていることをいいます。寡占は下のグラフのように「独占」より少し競争がある状態です。

寡占を理解する3つのメリット

「寡占」という難しい言葉を理解することが、何の役に立つか分からないという方も多いかもしれません。
けれど、寡占を理解することは、経済社会において非常に重要な意味を持ちます。
なぜなら、私たちの日常生活に深く関わっている多くの産業が寡占状態にあるからです。

  • 消費者の視点
    • 価格設定
      寡占企業は、価格競争よりも互いのシェア維持を優先することが多く、結果として価格が上昇しやすい傾向があります。
      寡占の仕組みを理解することで、高価格の理由を理解し、賢い消費行動につなげることができます。
    • 製品・サービスの質
      寡占企業は、競争が激しくないため、製品・サービスの質の向上に消極的な場合があります。
      寡占状態にある市場では、どのような製品・サービスが提供されやすいかを理解することで、より良い選択肢を選ぶことができます。
  • 企業の視点
    • 戦略立案
      自社が属する市場が寡占状態にある場合、競合企業の動きを分析し、自社の戦略を立てる上で、寡占の理論は非常に役立ちます。
    • 規制への対応
      寡占は、独占禁止法などの規制の対象となることがあります。寡占の仕組みを理解することで、規制への対応策を検討することができます。
  • 政策立案の視点
    寡占状態が市場の活性化を阻害している場合、政府は独占禁止法などの規制を強化したり、新たな競争者を市場に参入させたりする政策を検討する必要があります。
    また、これらの政策がもたらす効果を評価して、よりよい社会への議論に参加するためにも、寡占を理解することは重要です

具体的に、寡占を理解することで、次のようなことができるようになります。

  • 新聞記事やニュース番組の経済ニュースを深く理解できる
    寡占状態にある業界の動向や、政府の規制に関するニュースをより深く理解できるようになります。
  • 企業の経営戦略を分析できる
    寡占企業の経営戦略を分析し、その背景にある経済学的な理論を理解できるようになります。
  • 投資判断の材料にできる
    寡占状態にある企業への投資を検討する際に、その企業の将来性をより正確に予測できるようになります。

寡占を理解することは、単なる経済学の知識にとどまらず、私たちの日常生活や社会全体をより深く理解するための重要な要素となります。寡占の仕組みを理解することで、消費者は賢い消費行動を選択し、企業はより効果的な戦略を立案し、より良い政策とは何かが理解できます。

寡占企業の具体例

寡占になっている業界は世界中で存在します。具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 携帯電話通信
    日本ではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社のシェアは80%を占め寡占状態にあります。アメリカの通信業界もAT&T、Verizon、T-Mobileなどの大手企業が市場の90%を占め寡占状態です。
  • 航空
    日本ではANAとJALの2社でシェアの95%を占めています。アメリカには航空会社が10社以上ありますが寡占が見られ、アメリカン航空、デルタ航空、ユナイテッド航空などの大手企業が寡占状態にあります。
  • 自動車
    日本ではトヨタ、ホンダ、日産の3社がシェアの80%を占めています。世界でもフォルクスワーゲン、トヨタ、GM、ステランティスなどの大手企業が40%を占めていて寡占状態になっています。
  • 製薬
    2023年の世界製薬会社の売上高ランキングによると、上位10社で世界の製薬市場の約45%を占めています。また、上位20社で世界の製薬市場の約60%を占めて寡占が進んでいます。上位の主な企業は有名なファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ロシュ、メルク、グラクソスミスクライン、ノバルティスなどです。
  • IT
    世界ではGoogle、Amazon、Apple、Microsoft、テンセント(中国)の大手企業5社が世界のIT市場の約60%を占めています。

なぜ寡占が進むのですか?

なぜ企業の寡占が進むのでしょうか? その理由として、以下のようなものが挙げられます。

  • 技術革新による参入障壁の高さ
    技術革新によって、新規参入企業が参入するために必要な資本や技術が高くなり、参入障壁が高まって新規参入が難しくなることがあります。
  • 政府による規制
    政府が特定の企業を保護したり、新規参入を規制したりすることで、寡占化が進むことがあります。日本では戦後の体制が今も残ったままの業種があり新規参入しにくくなっています。
  • M&Aによる業界再編
    大手企業によるM&Aによって、業界の競争が減少し、寡占化が進むことがあります。

寡占のメリット

寡占には、一般的にデメリットが大きく注目されがちですが、メリットも存在します。
ただし、これらのメリットは、必ずしも消費者の利益につながるとは限らない点に注意が必要です。

  • 大規模投資が可能
    少数の大企業が市場を支配しているため、研究開発や設備投資など大規模な投資を行うことが容易です。
    これにより、新たな技術開発や製品の品質向上に繋がり、長期的に見れば消費者にも利益をもたらす可能性があります。
  • スケールメリット
    大規模な生産を行うことで、生産コストを低減させることができます。
    このコスト削減分は、製品価格の低下や、より高い品質の製品の提供に充てられる可能性があります。
  • 安定的な供給
    少数の企業が市場を支配しているため、製品の供給が安定しやすく、消費者は製品を容易に入手できる可能性があります。
  • ブランド力の強化
    少数の企業が激しい競争を繰り広げることで、ブランドイメージの向上や、独自のブランド力の構築が促進されます。
  • グローバル競争力
    大規模な投資やスケールメリットを活かして、グローバルな競争に打ち勝つことが可能になります。

寡占は、企業にとってはメリットが大きい一方で、消費者にとっては必ずしもメリットになるとは限りません。

寡占のデメリット

寡占が進むと私たちにどのようなデメリットがあるのでしょうか?

  • 価格の引き上げ
    寡占企業は、競争相手がいないために、価格を自由に設定することができるので、消費者にとって不利な価格引き上げにつながる可能性があります。
  • サービスの低下
    寡占企業は、競争相手がいないために、サービスの向上に努める必要がなくなり、消費者にとって不利なサービスの低下や品質の低下につながるかもしれません。
  • イノベーションの停滞
    寡占企業は、競争相手がいないために、新製品や新サービスの開発に積極的ではなく、イノベーションの停滞を引き起こします。
  • 製品の多様性の低下
    競争が激しくないため、製品の品質や機能が向上しにくいことがあります。
  • カルテルの形成
    企業同士が密かに価格や生産量を決め、消費者を欺くような行為(カルテル)が行われる可能性があります。

寡占化は、消費者や社会にとってさまざまな問題を引き起こす可能性があるため、多くの国の政府によって規制や公正取引の推進などによって、寡占化を防止する対策が取られています。

寡占を防ぐために

寡占を防止するためには、様々な対策があります。

寡占防止のための主な対策

  • 独占禁止法の強化
    • 不当な取引制限の禁止
      企業間の談合や、新規参入の妨害など、競争を制限する行為を禁止します。
    • 市場支配的地位の濫用禁止
      市場を支配している企業が、その地位を悪用して不当に高い価格を設定したり、競争相手を排除したりすることを禁止します。
    • 企業結合規制
      大企業同士の合併や買収によって、市場支配力が過度に集中することを防ぎます。
  • 規制緩和
    • 新規参入の障壁の撤廃
      新しい企業が市場に参入しやすい環境を整えることで、競争を促進します。
    • 行政手続きの簡素化
      企業が事業を開始する際に必要な手続きを簡素化し、負担を軽減します。
  • 公正取引委員会の強化
    • 調査権限の強化
      公正取引委員会に、企業の不正行為を調査する権限を強化します。
    • 制裁の強化
      独占禁止法違反に対して、より厳格な罰則を科します。
  • 消費者教育
    消費者に対して、寡占による弊害や、消費者としての権利について教育を行い、消費者意識を高めます。
  • 国際的な連携
    各国が協力して、国際的なカルテルや独占的な企業活動を防止します。

寡占防止の難しさ

寡占を完全に防止することは非常に難しい課題です。
なぜなら、技術革新や市場の動向によって、新たな寡占が生まれる可能性があるからです。
また、規制が過度に厳しくなると、企業の投資意欲が低下し経済全体の成長を阻害する可能性も考えられます。

バランスの取れた規制

そのため、寡占防止のための政策は、競争を促進しつつ経済全体の活性化も図るというバランスが求められます。

具体的な事例

  • 通信業界
    携帯電話市場では、数社の事業者が寡占状態にあります。新規参入を促進するために、周波数の割り当てや、ローミング料金の規制などが行われています。
  • 自動車業界
    自動車メーカー間の合併や買収に対しては、厳格な審査が行われています。
  • 製薬業界
    新薬の特許制度は、製薬企業の研究開発を促進する一方で、新薬の価格が高騰する原因ともなっています。特許制度の見直しも議論されています。

このように、寡占は経済活動に様々な影響を与える重要な問題です。
寡占を防止するためには、独占禁止法の強化、規制緩和、消費者教育など、多角的に対策していく必要があります。

まとめ

企業の経営者はできるだけ競争は避けたいと思っています。
完全競争で少ない利益を奪い合うより、独占状態で大きな利益を受けながら、価格や生産数を自社の有利なように決められた方がずっとうれしいのです。

競争は企業にとってつらいものです。
けれど、消費者にとっては競争ほど好ましいものはありません。
競争が高まれば低価格で良いものが手はいるからです。

いつも同じような会社の製品が目に入ると安心して、つい信用してしまいますが、よく考えるとその会社が業種全体を占めていて競争相手が少ない状態になっているだけかもしれません。企業は競争相手がいなければ価格を引き上げるので、もしかしたらその商品は不当に高い商品かもしれません。

商品を買う場合ちょっと「企業の競争」について考えてみてください、もっと良い選択肢が見つかるかもしれません。

参考文献

経済学入門 ティモシー・テイラー
業界の動向やランキング、シェアなどを分析-業界動向サーチ (gyokai-search.com)
スタティスタ – 世界の統計調査データを使い放題 | Statista

PR:株式会社レオナビューティー

RP:株式会社イワミズ

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