初夏になるとトウモロコシが店頭に並び始めて夏が来ることを教えてくれます。
みなさんトウモロコシはお好きでしょうか?
そのまま食べても良いですし、ポップコーンやコーンフレークなどもおいしいですよね。
トウモロコシといえば、私は札幌の大通公園に出ているトウモロコシのワゴンがとても好きです。北海道のトウモロコシは粒の大きさが大きくて、甘くて本当にびっくりします。
ぜひ、札幌に行ったら大通のワゴンを覗いてみてくださいね。ちなみにじゃがバターも最高です。
トウモロコシは栽培しやすく、保存もできて、でんぷんがたくさん含まれているので私たちが食べるだけではなく飼料としても、世界中で利用されているのは皆さんもよくご存じだと思います。
トウモロコシはイネやアワ、キビなどと同じ仲間のイネ科に属する植物です。人が栽培した歴史は早く紀元前5000年までには、メキシコ周辺始まっていました。
私たちが日常的にお米をさまざまに加工して食べているのと同じように、マヤ、アステカの人たちはトウモロコシを炒ったり、粉にしたり、お酒などに加工して今でも利用しています。
ここではトウモロコシがまだ原種に近い状態だったころ、人々はトウモロコシをどのように利用していたのか解説します。
マヤの人々は、大切な主食の作物についてどのような思いを持っていたのでしょうか?
人々とともに長い月日歩んできたトウモロコシの強さを知って、その元気をいただいてしまいましょう!
マヤの人々ととうもろこし
マヤの人々のトウモロコシの利用は紀元前5000~7000年ごろから始まりました。
アジアでは、すでに紀元前8000年頃には小麦や大麦などの栽培が始まっていましたが、南米大陸の穀物の栽培はトウモロコシが初めてです。
マヤの人々は腹持ちの良い、保存の利くトウモロコシを主食としていました。そのためトウモロコシを単なる植物に一つとして見ずに、彼らの文化、経済、宗教に深く結びつけ他の植物とは違う、大切で神聖な作物と考えていました。
マヤの人々はどのようにトウモロコシを利用していたか詳しく見ていきましょう。
1. 食糧としての利用
- トルティーヤ
トウモロコシの粉を練って作る薄いパン。現在のメキシコでのトルティーヤのように、主食として広く食べられていました。 - タマル
トウモロコシの生地を葉で包んで蒸した食品。中に肉や野菜、調味料を入れることもありました。 - アトール
トウモロコシの粉を水や牛乳で煮た飲み物。蜂蜜やカカオを加えて甘くすることもありました。 - ポソール
トウモロコシを発酵させて溶かした飲み物。
2. 宗教的・儀式的な利用
また、トウモロコシは食べるだけではなく宗教的な儀式にも欠かせないアイテムでした。
- 供物として
トウモロコシは神々に捧げる供物として重要視されました。豊作を祈願する儀式や感謝祭で使用されました。 - 神話の中心
ポポル・ヴフ(マヤの創世神話)には、トウモロコシから人類が作られたという物語があり、トウモロコシは人間の生命そのものを象徴する存在でした。 - 神々の象徴として
トウモロコシは、農耕と生命の象徴として、多くの神話や彫刻、壁画に描かれました。トウモロコシの神(ハナブ・クーなど)は崇拝の対象となりました。
3. 経済的な利用
トウモロコシは乾燥させれば長い時間保存することができました。日本でもお米がお金として使われたようにトウモロコシも同じように使われています。
貿易のために使う
- 交易品
トウモロコシは、地域間での交易品として使われました。
特に収穫量が多い地域から他の地域へ供給されることで、マヤ文明の経済を支えました。 - 貨幣的価値
一部の地域では、トウモロコシを交易の基準や租税の支払い手段として使用しました。
産業としての農業
- 農耕技術
マヤ人は高度な灌漑技術と焼畑農業を組み合わせて、トウモロコシの生産性を高めました。トウモロコシは同じ土地で続けて作ると土地が酸性になり栽培に適さなくなるので、栽培には土壌の回復を考慮した輪作をすでに行っていました。
マヤの人々はトウモロコシを主食としていたため、その年の作物の出来がとても重要でした。すでに農業の技術が進んでいたとはいえ、天候の不順はどうすることもできなかったので、神様に祈り、ささげることで来年の豊作を願ってトウモロコシの神様をイメージすることは自然なことです。
トウモロコシの栽培技術はその品種改良にもあらわれています。人にとって有用な形を持つ世代を掛け合わせて、よりよい作物を作り出すことはすでに行われていました。
トウモロコシの原種について
マヤの人々にとって大切な作物になったトウモロコシですが、その原種は、硬かったり、粒が少なかったり、苦かったりと、今のトウモロコシとは大きく異なっています。
トウモロコシの原種は、メキシコ南部からグアテマラにかけての中央アメリカであると考えられています。長い間トウモロコシの具体的な祖先種については議論が続いていました。
近年では、DNA解析などの研究が進みテオシントと呼ばれるイネ科の野生植物が、トウモロコシの原種であることが有力な説として支持されています。
テオシントは、現在のトウモロコシとは大きく異なり、小さな穂と硬い種子を持っています。食用には適していませんが、乾燥や病害虫に強く、様々な環境に適応できるという特徴を持っています。
研究者たちは、そのテオシントが人々の栽培によって長い年月をかけて、現在のトウモロコシに進化したと考えています。多くの研究者の意見はこのような段階を踏んだことで合意しています。
- テオシントの利用開始
約1万年前頃、人々はテオシントを食料や家畜の飼料として利用し始めました。 - 突然変異の固定
テオシントの栽培の中で、より大きな穂や柔らかい種子を持つ突然変異が発生しました。人々はこれらの突然変異体を選んで栽培し続けることで、より食用に適したトウモロコシを作り上げていきました。 - 交雑と品種改良
さらに、異なるテオシントや他のイネ科植物との交雑も行われ、様々な色や味のトウモロコシが生まれました。
このように、トウモロコシは長い年月をかけて人々の手によって改良され、現在の形になったと考えられています。
近年では、古代のトウモロコシの遺跡からDNAを分析することで、トウモロコシの進化に関する研究が進んでいます。また、現代のトウモロコシの多様性を解析することで、新たな品種改良のヒントを得ようとする研究も盛んに行われています。
これからも病気や乾燥に強いトウモロコシが作られ、持続可能な農作物が増えることが期待されています。
トウモロコシの始まりの歴史を紹介しました。
トウモロコシは人間の3大有用作物、米、小麦、トウモロコシの一つです。
長い月日を経た品種改良にもめげずに、付き合ってくれる作物と作ってくれる人に感謝して、今日もおいしくいただきましょう!
参考文献
トウモロコシ属 - Wikipedia
テオシント++トウモロコシの原種を見てみよう++筑波実験植物園 (kahaku.go.jp)
alic|独立行政法人 農畜産業振興機構
トウモロコシ - Wikipedia
タバスコ料理 - Wikipedia
Pozol - Wikipedia
マヤのトウモロコシの神 - Wikipedia
原色日本植物図鑑 保育者