前回は「資産運用」とはなにか、ということについて解説しました。
資産運用とは、使う予定のないお金を増やす目的で株や債券を買うことでした。
そのために金融商品を選ばなければいけませんが、選択肢がたくさんあるので選ぶことは簡単ではありません。自分にとってなにが必要で何が必要ないか見極めるには、知識を増やしていくことが有効です。
詐欺に騙されたり、高額すぎるものを選ばないために、自分を守るために知識を身につけてから行動しましょう。
つぎにここでは「資産運用」について良く聞くリスクについてゆっくり解説していきます。
資産運用のリスクとは
資産運用とは、しばらく使う予定のないお金を金融商品に投資することで、将来のお金を増やすことを目的とした活動です。
しかし、投資には必ずリスクが伴います。
リスクとはなんでしょうか?
それは「不確実性」また「変動性」のことを指します。
つまり、投資したお金が必ずしも増えるとは限らず、損失を出してしまう可能性もあるということです。
資産運用の不確実性と変動性は、投資におけるリスクの中でも特に重要な概念です。
詳しく見ていきましょう。
不確実性
不確実性とは、将来の結果が予測できないことです。
資産運用で使われる「不確実性」とは、投資の成果がどのようになるかを事前に正確に予測できないことを指します。
例えば、次のような影響が株価などに大きく影響を与えますが、これらのことを予想することはとても難しいということです。
- 経済の状況
経済の景気や政策変更などが影響し、株価や債券の価格が変動します。 - 企業の業績
企業の業績や経営状況の変化が株価に影響を与えます。 - 市場の動向
市場全体の動向や投資家の心理が影響し、価格が予測不可能な動きをすることがあります。
不確実性は、専門家たちがどれだけ慎重に分析や予測を行っても、完全に排除することはできません。
変動性
変動性とは、資産の価格がどれだけ変動するかを示す指標です。
一般的には、価格の変動幅が大きいほど変動性が高いとされます。変動性は「ボラティリティ」とも呼ばれます。
- 高変動性の資産
株式やコモディティ(原油、金など)は価格変動が大きいため、高変動性とされます。短期間で大きな利益を得る可能性がある一方、大きな損失を被るリスクも高くなります。 - 低変動性の資産
債券や定期預金は価格変動が少ないため、低変動性とされます。安定したリターンが期待できる一方、利益の上昇も限られています。
不確実性と変動性の関係
つまり、「投資によって得られる収益は不確実」ということになります。
投資の目的は、収益を増やすことにあります。
しかし、投資対象の価格は変動するため、それによって収益が変動してしまいます。昨日まで収益が見込まれていたのに、今日になったら収益が見込めない、ということが起きます。つまり、投資によって得られる収益は、大きくなったり小さくなったりするのです。
例えば、日本国債は非常にリスクの低い商品です。
ほぼ確実に期待通りの収益が得られます。
反対に、新技術を開発している企業に投資するのは、リスクがずっと大きくなります。技術開発が大成功して予想もしなかった収益になることもありますが、大失敗に終わる可能性も大きいのでリスクは大きいと言えます。
つまり、不確実性の低い商品は、通常、変動性が低く、リスクが低く、得られる利益が低いです。逆に、不確実性が高い市場や資産は、通常、変動性も高くなり、得られる利益が大きいです。
どちらが優れているとか、劣っているということではありません。リスクをどのように取るのかは自分の好みで決めてよいのです。一般的に他の条件が同じなら、変動の少ないリスクの低いほうを選ぶ方が良いとされています。
資産運用の5つのリスク
投資には必ずリスク(投資で損失を被る可能性)があります。
しかし、リスクは必ずしも悪いものではありません。
リスクとリターンは表裏一体であり、リスクが高いほど、期待できるリターンも高くなります。
資産運用のリスクをまとめると、大きく5つの種類があると言われています。
- 株価変動リスク
株式の価格変動によるリスクです。
株式の価格は、景気や企業業績、政治情勢などさまざまな要因によって変動します。株価が下落すると、投資した資金が減ることになります。 - 信用リスク
企業の信用力によるリスクです。
株式や債券などを発行している企業が倒産したり債務不履行に陥ったりすると、投資した資金が回収できなくなる可能性があります。 - 流動性リスク
流動性とは、投資対象を現金に換えやすいかどうかを表す言葉です。
銀行の預金はとても流動的です。いつでも好きな時に現金で引き出すことが出来ます。
逆に、不動産は流動的ではありません。不動産を売って現金にするためには、それなりの時間と労力をかけなければいけないからです。基本的に、リスクや収益が同じなら、流動性が高い資産を選んだ方が良いです。 - 金利変動リスク
金利の変動によるリスクです。
債券の価格は、金利水準に反比例して変動します。金利が上昇すると、債券の価格が下落し、投資した資金が減ることになります。 - 為替変動リスク
為替レートの変動によるリスクです。
外国株式や外国債券などの投資対象は、為替レートの変動によって価格が変動します。為替レートが円安になると、投資した資産の価値が下落することになります。
このように実際の金融商品には、これらのリスクが複雑に絡み合って値動きします。
リスクを減らすための4つの方法
では、リスクを少しでも小さくするためにはどうしたら良いのでしょうか?
リスクを減らすための研究は良くされていて、次のような方法が有効なことが知られています。
1.分散投資
投資先をいくつかに分けることでリスクを軽減できます。
いろいろな種類の投資を少しづつ組み合わせて、全体としてのリスクを減らすのです。
もし、ある投資先の事業が悪くなった時、その業績の悪くなった1社にすべてにかけていると、資産のほとんどがなくなってしまいますが、複数の投資先に分散していれば損失を緩和することがあります。
この分散投資を簡単にできるのが、投資信託です。これは複数の株や債券を一つにまとめた金融商品なので、手軽にリスクを分散することが出来ます。
2.長期投資
資産運用する期間は長ければ長いほど良いです。
株式市場では短期的にはリスクが高くなりますが、長期的にみると比較的堅実です。また複利の効果も期待できます。
3.自分のとれるリスクを設定する
働いているうちは、投資した資金が減ってしまったとしても、また稼ぐことができるのでリスクの高いものでもいいかもしれませんが、退職後は収入が減るのでリスクの高いものは避けた方がいいでしょう。
また、高いリスクをとるのが好きな人、嫌いな人とリスクの許容度は人それぞれです。自分にあったリスクを設定しましょう。
4.定期的な見直し
投資環境や自身の状況に応じて、ポートフォリオを定期的に見直し、必要に応じて調整を行うことが重要です。
投資を行う際には、不確実性と変動性を理解し、適切に管理することで、資産運用のリスクを軽減し、長期的な成功につなげることができます。
資産運用と人生
自分がどのように資産運用していこうかと考えることは、自分の人生をこれからどうしようかと考えることと同じです。
今、自分は人生でどのあたりにいるのか、家族構成はどうなっているのか、これから必要になる出費はいくらになりそうなのか、今の資産はどのくらいあって、遺産相続の可能性はどのくらいか、今の収入はどのくらいあって、将来はどのくらいになりそうなのか?
これらのことを一つ一つ考えて自分が取れるリスクを考えてみます。
いくら入る予定でいくら必要なのかが分かれば、なにをどう投資するのか決まってきます。
資産運用とは自分がこれからどんな人生を送りたいか、を決めていくことなのです。
金融広報中央委員会のウェブサイトの「知るポルト」というサイトがあります。
暮らしに役立つお金に知恵や情報が載っています。
また、ライフプランシュミレーションといった自分の年収や生活費などを入力して自分の生活設計を計算してくれるページもありますので、何から手を付けていいか分からない方にぜひお勧めです。
暮らしに役立つ身近なお金の知恵・知識情報サイト ─ 知るぽると:金融広報中央委員会 (shiruporuto.jp)
まとめ
資産運用のリスクについて解説しました。
資産運用には不確実性と変動性のリスクがあります。
予想外に企業の業績が悪くなったり、社会情勢が悪くなった、ということは購入するときに予想することができません。
そして、経済や社会情勢などの影響を受けて、金融商品の価格は上下に常に変動しています。その上下する価格も予想することはできません。これらの「不確実性」と「変動性」があるために「資産運用」はリスクがあると言われています。
リスクを減らすためには、同じ収益率なら現金化しやすいものを選ぶことです。
例えば、不動産は売りたいとき、買い手がつくまでに時間と労力がかかります。現金化に時間がかかる資産は、流動性が低いと評価されてリスクが高いです。収益率が同じなら現金化しやすい「流動性の高い」ものを選ぶことでリスクを減らすことができます。
また金利や為替は変動が読めないのでリスクが高いです。
これらのリスクを抑えるために、自分がどのくらいリスクが取れるのかを見つめ、長期運用できて、リスクを分散できるものを選ぶことが重要です。
人生の早い時点でリスクをとれば、複利の力を借りて老後の資産をつくることができます。
もちろん50代や60代の人でもまだこれから20年や30年は生きるのです。これだけの時間があれば複利の力で増やすことは十分可能です。
投資のリスクを完全になくすことは不可能ですが、リスクを理解し、適切な対策を講じることで、損失を抑えることができます。
参考文献
経済学入門 ティモシー・テイラー
難しいことは分かりませんがお金の増やし方を教えてください 山崎努
お金以前 土屋剛俊
貧乏国ニッポン 加谷佳一
「金融リテラシー」って何? 最低限身に付けておきたいお金の知識と判断力 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)