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お金の集め方 税金編 

お金の集め方

日本の政府は借金ばかりしていて、この先が不安だと思う方も多いかと思います。

もしも100年前なら、どこか知らない遠くの国で起きた出来事が私たちの暮らしに影響を与えることはありませんでしたが、現在では違います。

私たちの生活必需品は世界中から集められたもので成り立っているため、私たちは世界の情勢と切っては切れない状況にあります。

つまり、どこかの国で発明された製品が暮らしを変えたり、どこかの国で起きている戦争が身近なモノの値段の値段に影響するようになっています。

そのような社会では「長期的な経済成長」と「低い失業率をキープすること」そして「急なインフレを抑えること」「持続可能な国際収支を目指す」ことが、私たちの生活水準を向上させ、より良い社会を実現するためには不可欠です。

ここでは、そんな社会を目指すために必要な軍資金つまり税金について解説します。

税金といえば「給料から勝手に天引きされるものなので、取られてしまったお金のことなんて知りたくもない」という方もいらっしゃるかと思いますが、なぜ取られて知るのか? 何に使っているのか知れば、支払ったお金の影響力を理解することができるし、自分の意見を持つこともできます。

自分の大切なお金がどのように取られるかを知って納税意識を高め、経済への理解を深めて未来への展望を広げるために役立てましょう。

日本の税金

ひとことに税金といっても日本ではあらゆる面から税を取り上げているのでたくさんの種類があります。
ここではその中でも割合が大きく、身近なものを取り上げます。

  • 税金
    税金は、政府の財源の最も重要な柱です。所得税、消費税、法人税、住民税、酒類税、タバコ税など、様々な種類の税金が徴収されています。
    • 所得税
      給与や事業所得などの所得に対して課税される税金です。所得税は、累進課税方式を採用しており、所得が多いほど税率が高くなります。
    • 法人税
      法人の利益に対して課税される税金です。法人税は、企業の活動資金を確保するための重要な財源です。
    • 消費税
      商品やサービスの購入に対して課税される税金です。消費税は、すべての国民が平等に負担する税金です。
    • 住民税
      地方自治体が提供する公共サービスの運営に必要な財源を確保するために課される地方税です。

政府は様々な方法でお金を集め、国の運営に必要な財源を確保しています。
もう少し詳しく見ていきましょう。

税金について

日本の税金は、大きく分けて 国税地方税 の2種類があります。

国税 は、国が徴収する税金で「所得税」「法人税」「消費税」「酒税」「たばこ税」「相続税」「贈与税」などが含まれます。
これらの税金は、国の財政収入の柱となり、外交、防衛、社会保障、教育、インフラ整備などに用いられます。

地方税 は、都道府県と市町村が徴収する税金で「住民税」「事業税」「固定資産税」「自動車税」などが含まれます。
これらの税金は、地方公共団体の財政収入の柱となり、地域住民の生活に関わる公共サービスの提供などに用いられます。

ここからは税金の中でも大きな割合を占める「所得税」「消費税」「法人税」「住民税」について見ていきましょう。

所得税とはなんですか?

所得税は、個人が1年間に得た所得に対して課税される税金です。
所得税の「累進課税」方式を採用されていて、所得が多くなるほど税率が高くなります。

累進課税とは、所得が多くなるほど、課税される税率が高くなる制度です。
イメージとしては、所得の山道を登るようなもので、所得が上がるにつれて税率という坂道もきつくなっていく、という感じです。

具体的には、所得税には7つの税率段階があり、課税所得額が上がるごとに、5%、10%、20%...と税率が上がっていきます。

例えば、

  • 年収500万円以下の場合:税率5%
  • 年収500万円~1000万円の場合:税率10%
  • 年収1000万円~2000万円の場合:税率20%

というように、所得が増えるほど、より多くの税金を納めることになります。
ここでは分かりやすいようにざっくり3段階に分けました。実際は7段階に分かれています。
より詳しく知りたい方はこちらが参考になります。
No.2260 所得税の税率|国税庁 (nta.go.jp)

累進課税の目的は、

  • 富の再分配:所得の多い人からより多くの税金を徴収することで、所得格差の是正を目指す
  • 社会保障制度の財源確保:高額な税収を社会保障制度の運営に充てる

などが挙げられます。

累進課税のメリットとデメリット

所得が多い人がより大きな税金を納めることになる累進課税制度ですが、メリットとデメリットがあります。

メリット

  • 所得格差の是正に貢献する
  • 社会保障制度の財源を安定的に確保できる
  • 高所得者にとって、社会貢献の意識を高める効果がある

デメリット

  • 高所得者にとって、労働意欲を減退させる可能性がある
  • 税金の計算が複雑になる

所得税の累進課税は、所得の多い人からより多くの税金を徴収することで、所得格差の是正や社会保障制度の財源確保に役立つ制度です。
一方で、高所得者にとっては働いた金額の多くを税金として負担しなければならないので、労働意欲減退などのデメリットもあります。

累進課税制度は、公平性と経済成長の両立という難しい課題を抱えています。
今後これらの課題を解決しながら、より良い制度へと改革していくことが求められています。

消費税はなぜあるの?

消費税 は、消費者が購入した商品やサービスに対して課税される税金です。
消費税の税率は10%で食料品などは8%になっています(2024年現在)

消費税は、1989年4月1日に導入されました。その導入の背景には3つの理由がありました。

  • 税制全体のバランスをとるため
    当時、日本の税収は所得税に大きく偏っていました。
    所得税は景気変動の影響を受けやすく財政運営の安定性を損なう恐れがあったので、景気変動の影響を受けにくい消費税を導入することで、税収の安定化を図る目的があったのです。
  • 個別間接税の問題点を解決するため
    当時はさまざまなものに間接税が掛けられていました。
    例えばお酒の酒税、たばこ税、入湯税、パチンコや競馬には遊戯税など、様々な個別間接税がありました。
    これらの税は課税対象が限定的で税率も様々で公平性に欠けていました。
    そこですべての商品・サービスに一律の税率を課すことで税制を簡素化し、公平性を高めるために消費税が導入されたのです。
  • 高齢化社会の財源を確保するため
    一番大きな理由として日本の高齢化が挙げられます。
    日本は1980年代から急速な高齢化社会へと突入していました。高齢化に伴い、年金や医療などの社会保障費が増加することが懸念されていました。
    消費税は、社会保障制度の安定した財源にするために導入されました。

その他の理由として
上記に加えて、消費税導入には、国際的な潮流への対応という側面もありました。
欧米諸国では、すでに多くの国で消費税が導入されており、日本も国際社会の一員として消費税を導入する必要があるという考えもありました。

このように、消費税導入には様々な背景がありました。導入後、消費税は何度か税率が引き上げられています。

今後も、財政状況や社会情勢の変化に応じて、消費税のあり方が議論されていくことになるでしょう。

法人税とはなんですか?

法人税とは、日本で事業を行う法人が得た利益に対して課される税金です。

法人である企業などは、事業活動によって利益を得ると、その利益に対して一定の割合で法人税が課税されます。
課税対象となるのは、法人の所得金額です。所得金額は、収入から人件費や家賃、減価償却費や損失などの費用を差し引いたものです。

法人税率は、23.2%です。ただし、資本金が1億円以下の法人の場合、所得の金額のうち年800万円以下の金額については、15%の税率が適用されます。

ここでは分かりやすいようにざっくり説明しましたが、実際はより細かく分けられています。
もっと詳しく知りたい方は国税庁のページを確認してください。
国税庁 (nta.go.jp)

法人税は、納税者自身が計算し、申告・納付しなければいけません。
法人税の課税対象になるもは様々で、特例や制限があります。また内容によって税率が違うことがあり計算も煩雑です。
そのため企業は税理士などの専門家を置かなければならず、企業には負担になっています。

企業の負担になってしまっている法人税ですが、なぜ法人税が必要なのでしょうか?

なぜ法人税をとるの?

政府が法人税をとる理由は、主に以下の3つあります。

  • 財源確保
    政府の活動には、道路や橋などのインフラ整備、教育、医療、社会福祉、国防など、様々な費用がかかります。これらの費用を賄うための財源として、法人税は重要な役割を果たしています。
    2022年度の日本の税収は約65兆円で、そのうち法人税は約13兆円でした。
  • 経済政策
    政府は、法人税率を調整することで経済を活性化したり、景気後退を防いだりすることができます。
    例えば、景気後退時には法人税率を下げることで、企業の利益を増やし投資を促進することができます。
    逆に、景気過熱時には、法人税率を上げることで、企業の活動を抑制し、物価上昇を抑えることができます。
    近年では、多くの国々で法人税率の引き下げ競争が起きています。これは、企業を誘致し、経済成長を促進するためです。
  • 社会的な責任
    近年では、企業の社会的責任がますます重要視されています。
    政府は法人税を通じて、企業が環境保護や地域社会への貢献などの社会的責任を果たすことを促すことができます。
    例えば、近年では、環境に優しい企業に対して税制優遇措置を設けている国が増えています。

このように、政府が法人税をとる理由は、財源確保、経済政策、社会的責任の3つが主なものです。

ちなみに、法人税率は国によって違います。2023年における主要国の法人税率は以下のようになっています。

  • アメリカ合衆国: 21%
  • イギリス: 19%
  • フランス: 26.5%
  • ドイツ: 15%
  • 日本: 23.2%

日本は、主要国の中では比較的高い法人税率となっています。

住民税

住民税 は、都道府県民税と市町村民税の総称です。
住民税は、住民の所得に対して課税される税金ですが、所得税とは異なり、均一課税方式を採用しており、所得にかかわらず一定の税率が適用されます。住民税の税率は、都道府県と市町村によって異なりますが、合計すると10%程度となります。

住民税は、地方税の一種で、都道府県が課税する道府県民税と、市区町村が課税する市町村民税の総称です。教育、福祉、救急、ゴミ処理など、地方自治体が提供する公共サービスをまかなうために使われます。

税額の計算方法

住民税の税額は、所得割均等割の合計で算出されます。

  • 所得割:前年の所得に対して課税される税額です。所得の種類や控除額によって税率が異なりますが、一般的には所得の10%です。
  • 均等割:一人当たり一定額課税される税額です。市区町村によって税額が異なりますが、一般的には年間1,500円~3,000円程度です。

住民税の歴史は古く明治維新後の明治6年(1873年)の地租改正まで遡ることが出来ます。

諸外国でも名称は違ってもその国に住んでいる、ということで税金がとられます。
例えばフランスでは市民税、イギリスでは地方税のように税金が掛けられています。

中国にも住民税と同じように地方税があります。
中国は近年急速に経済発展を遂げ、地方自治体が公共サービスの提供に必要な財源を確保するため、日本の住民税より税率が高めです。

反対に、シンガポールのように資金の潤沢な国は、法人税などで市民生活が十分賄えるため住民税を取りません。

まとめ

日本の3大税金「所得税」「消費税」「法人税」と身近な「住民税」について見てきました。

所得税は収入に応じて支払う金額が違う税金でした。
高額所得者が税負担が大きく不公平感が強いですが、格差の是正がされています。

消費税は全ての商品に一律にかけられています。
消費税の使い道は8割は年金、医療、介護、子育て支援のために使われていますが、残りの2割の使い方については、今後の財政状況から考えても議論の余地があります。

法人税はインフラの整備や国防など経済の発展に必要な整備に使われます。
また政府は景気対策のために法人税率を変化させ、景気を刺激することができます。
世界中で商いをする企業にとってその国の法人税率は気になるところです。

けれど最近では企業イメージを高めるためにも、企業が社会的責任を果たすことは重要です。
企業が法人税を支払うことは私たちにとっても注目していく必要があります。

住民税は公共サービスを維持していくための税金です。

参考文献

経済学入門 ティモシー・テイラー
税の学習コーナー|国税庁 (nta.go.jp)
日本の財政問題 - Wikipedia
Ⅰ 国税庁について|国税庁レポート2022(HTML)|国税庁レポート|活動報告・発表・統計|国税庁 (nta.go.jp)
身近な税 : 財務省 (mof.go.jp)

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