投資の話になると、たいていの人が「短期で売り買いするのへはなく、一度買ったら長期保有するのが良い」と言います。
長い期間で投資を行うことがどうして良いのかには、いくつかの理由がありますが、その理由の一つに「複利の力」が効く、ということがあります。
「複利の力」は時間さえあれば、だれもが使える力です。
時間が長ければ長いほどその力が効いてきて20年また30年となってくるとかなり大きくなるという特徴があります。
坂道に雪だるまを転がすと、雪を集めて大きくなるように資産が増えていく複利の力を見ていきましょう。
複利の力
複利とは、投資で得た利益を元本に再投資することで、利益が利益を生み出すしくみのことです。
同じ利息の計算方法として「単利」がありますが、単利と複利を比べてみましょう。
- 単利
利息は常に元本に対してのみ発生します。
例えば、100万円を年利5%で運用した場合、毎年5万円の利息が得られますが、元本は100万円のままです。 - 複利
利息は元本だけでなく、過去の利息に対しても発生します。
つまり、1年目に得た5万円の利息も、2年目以降は元本の一部となり、利息を生み出すのです。
以下、具体的な例を見てみましょう。
例:100万円を年利5%で単利運用した場合
年数 | 元本 | 利息 | 合計 |
1年目 | 100万円 | 5万円 | 105万円 |
2年目 | 100万円 | 5万円 | 110万円 |
3年目 | 100万円 | 5万円 | 115万円 |
… | … | … | … |
30年目 | 100万円 | 5万円 | 250万円 |
例:100万円を年利5%で複利運用した場合
年数 | 元本 | 利息 | 合計 |
---|---|---|---|
1年目 | 100万円 | 5万円 | 105万円 |
2年目 | 105万円 | 5.25万円 | 110.25万円 |
3年目 | 110.25万円 | 5.5125万円 | 115.7625万円 |
... | ... | ... | ... |
30年目 | 432.19万円 | 21.61万円 | 453.8万円 |
単利も複利も、同じ条件の100万円で5%の年利で始めました。
初めの数年では両者の差はほとんどありませんが、30年後の合計は単利だと250万円、複利だと約450万円と大きく差が開いているのがわかります。
複利はついた利息を元本に組み入れるため元本が大きくなっていきます。
そして、その増えた元本に利息がつくため、時間をかけて驚異的な成長をもたらします。運用期間が長ければ長いほど、その効果は大きくなるのがお分かりいただけると思います。
「単利」も、元本に金利がつくのは変わりません、けれど単利では利息は元本に組みいられないため、毎年同じ利益にしかなりません。
例えば、国債や社債などは「単利」で計算されます。
そして注意したいのが、もしもあなたが毎年付く利息分を毎年引き出したとしたら「複利」で計算されている商品でも「単利」と同じことになります。
投資の話になると長期がお勧めされるのは、利息を再投資して元本を大きくして「複利の力」を味方にすれば、初期投資金額が低くても大きく増やすことが出来るためなのです。
複利効果を最大限に活かすために
投資で複利の力を最大限に生かすためには、以下の要素が重要です。
- 早期スタート
複利の効果は時間が経つほど大きくなります。
できるだけ早く投資を開始することで、資産の成長を最大化できます。 - 一貫した投資
定期的に投資を続けることで、複利効果を持続的に享受できます。
市場のタイミングを計ることよりも、一貫した投資が重要です。 - 高いリターン率
リターン率が高いほど、複利の効果も大きくなります。
リスクを適切に管理しつつ、高リターンを目指す投資戦略を構築することが必要です。 - 再投資
配当や利子を再投資することで、複利の効果をさらに高めることができます。
得られた収益をそのまま投資に回すことが重要です。 - 長期視点
短期の市場変動に惑わされず、長期的な視点を持つことが重要です。
長期にわたる投資が複利の効果を最大化します。 - コスト管理
投資にかかる手数料や税金を最小限に抑えることも重要です。
手数料が低いインデックスファンドやETFなどを活用することで、コストを削減できます。
これらの要素を組み合わせることで、複利の力を最大限に生かすことができます。
長期投資の注意点
長期投資は、一般的に短期投資よりも安定した利益を得られると言われています。けれど長期投資でもうまくいかないことがあり、注意したいことがあります。
- 経済の変化
長期投資では、経済の変化に応じて資産の価格が変動するリスクがあります。
例えば、1991年から始まったバブル崩壊や2009年のリーマンショックのような金融危機が発生した場合、株式や債券などの価格が大幅に下落する可能性があります。急な下落に耐えられず投資をやめてしまうと長期のメリットが受けられません。 - 業績悪化
個別株は長期持っていてもその価値がなくなる可能性があります。
個別株はその企業の業績が悪化して回復に時間がかかったり、最悪倒産したりする可能性があります。そうなるとその株はすでに価値がなく長期間もっていたとしても得るものがありません。
長期投資はリスクを抑えるために有効な方法ですが、大きな経済危機や業績の悪化による株価の下落があるため、長期投資とはいってもリスクを必ず避けられるわけではありません。金融商品にはリスクの低いものや高いものがあります、自分がいつどのくらい必要でリスクはどのくらいなら許せるのか考えて選ぶことが大切です。
まとめ
複利について解説しました。
一般的に長期に渡って投資を続けることで複利の効果が期待できるので、投資は短期ではなく長期にした方が良いと言われています。もちろんそうなのですが、絶対ではありません。
特に気を付けたいのが新しい事業に挑戦しようとしている新しい企業です。
はやりの技術を社名をつけていかにもこれから伸びていくように思われますが、その技術が成功するかしないかは、やってみなければ分かりません。新しい技術には投資家の多くが注目していて人気が高いこともよくあります。不当に評判の高い(買われすぎている)企業の株は要注意です。「長い目で応援していくんだ」という感覚でいると、売るタイミングがつかめずに、とんでもない目に合うかもしれません。
投資は普段の買い物よりもちょっと勉強が必要です。
「投資にはリスクがつきもの」だからといって必要以上にリスクをとって大失敗したり、長期投資が有効だからといってダメな株をいつまでも握ってはいけません。
投資の勉強をして、買おうとしているものの値段が妥当なのかどうか、自分の力で判断できるようになって「金融リテラシー」を高めましょう!
参考文献
お金以前 土屋剛俊
複利と単利の違い - 高精度計算サイト (casio.jp)
「金融リテラシー」って何? 最低限身に付けておきたいお金の知識と判断力 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)
経済学入門 ティモシー・テイラー