最近よく聞く「資産運用」という言葉。
お金が増えるのはうれしいけれど、お金を失うという話も聞くし心配で始められない・・・
という方も多いかと思います。
最近では、金融省でも市民の投資活動を後押しする政策を発表したり、金融リテラシーを高める情報を充実させています。これからは、私たち一人ひとりが自分の資産についてじっくり考える必要があるのかもしれません。
ここでは、資産運用に興味を持ち始めたあなたに向けて、安心して資産運用をスタートできる3つの金融商品「貯金」「定期預金」「個人向け国債」を徹底解説します。
なぜ資産運用が必要なの?
まず、そもそもなぜ資産運用が必要なのでしょうか?
それは、日本の経済状況や社会環境の変化により、昔のようにお金を銀行に預けておくだけでは、将来の生活を豊かにすることは難しくなってきているからです。
資産運用は、単にお金を増やすということだけではなく、将来の生活設計をより安定させるために不可欠な手段なのです。
資産運用が必要な理由
これからの生活はどうして、昔と違って安定しないのでしょうか?
それは下のような理由があるからです。
- 低金利時代
日本の金利は非常に低く、銀行に預けてもほとんど利息はつきません。
物価は上昇するのに、お金が増えないということは、実質的にお金の価値が減っているということです。 - インフレ
物価が上昇するインフレは、お金の価値を下げてしまいます。
資産運用は、インフレに負けないように、お金の価値を維持・増やすための手段の一つです。 - 老後資金
年金だけでは生活が不安という方も多いでしょう。
資産運用は、老後資金を積み立てるための有効な手段です。 - 大きな支出への備え
住宅購入、子供の教育費など、人生には大きな支出が伴うことがあります。
資産運用は、これらの支出に備えるための資金を準備することができます。 - 不測の事態への備え
病気や失業など、突発的な支出に備えるためにも、資産運用は有効です。
このように、昔なら物価が上がったとしても給料が上がり、生活に困ることもほとんどありませんでした。銀行の利子もあり、老後の生活も長くなかったため、資産運用は一部の人が行っていただけでした。
しかし、これからは一般の人でも安定した生活のため、積極的に考える機会が増えてきています。
貯金のメリットとデメリット
では、資産運用の具体的な例を見ていきます。
まず初めに「銀行の貯金」を見ていきましょう。
銀行貯金は、伝統的な資産運用方法として長く親しまれてきました。
多くの人が貯金という資産運用をすでにしていらっしゃるかと思います。
貯金を資産運用として考えたときどのようなメリットとデメリットがあるのか見ていきましょう。
貯金のメリット
貯金は多くの人が慣れ親しんでいるお金の保存方法で、さまざまなメリットがあります。
- 安全性が高い
銀行は国から厳しく監督されており、預金保険制度により、一定額までは預金が保護されています。
そのため、元本が大幅に減ってしまうリスクが低いという点が大きな魅力です。 - 流動性が高い
いつでもお金を引き出すことができるため、急な出費にも対応できます。 - 手軽に始められる
口座開設手続きが比較的簡単で、少額から始めることができるため、資産運用初心者でも気軽に始められます。
貯金のデメリット
貯金は手軽で身近な方法ですが、資産運用として考えると次のようなデメリットがあります。
- 低金利
近年、金利が非常に低いため、預金だけで資産を大きく増やすことは難しい状況です。
物価上昇を考えると、実質的な価値は減少する可能性もあります。 - インフレリスク
物価が上昇するインフレの時期には、預金の実質的な価値が減少します。 - 機会損失
株式や投資信託などのリスク資産に比べて、預金の期待収益率は低いため、より高いリターンを求める場合は、他の資産運用方法も検討する必要があります。
銀行への貯金は、昔から慣れ親しんだ方法で安心感があります。
また、元本保証の安全性と高い流動性を重視する方にとっては、魅力的な資産運用方法です。
しかし、低金利やインフレリスクといったお金の価値が小さくなってしまうデメリットがあることを理解することが大切です。
定期預金のメリットとデメリット
次に、安全な資産運用の一つ「定期預金」を見ていきましょう。
定期預金は、伝統的な貯蓄方法の一つであり、利用されている方も多いかもしれません。
では、定期預金を資産運用として考えたとき、どのようなメリットとデメリットがあるのか、解説します。
定期預金とは、はじめに預け入れ期間を決めて行う預金のことです。
数か月から、1年、2年、3年後など、満期日まで基本的に引出しができませんが、一定限度まで元本が保証され、普通預金に比べて金利が高く、収益性の高い資産運用と言えます。
定期預金のメリット
定期預金にはどんなメリットがあるのでしょうか?
- 元本保証
定期預金は、元本が保証されている点が大きなメリットです。
市場の変動に左右されることなく、預けた金額は満期時に必ず戻ってきます。 - 低リスク
投資信託や株式に比べて、価格変動のリスクが非常に低いため、リスクを避けたい人にとっては安心できる選択肢です。 - 手軽に始められる
特別な知識や経験は必要なく、誰でも簡単におなじみの銀行で始めることができます。 - 将来の資金確保
一定期間お金を引き出せないため、計画的に貯蓄を進めることができます。
定期預金のデメリット
逆に、デメリットもあります。
- 低金利
近年、金利が非常に低いため、預けてもほとんど利息が増えないという点が資産運用としてデメリットになります。 - 流動性が低い
満期前に解約すると、損失が発生する場合があります。
そのため、急な資金が必要になった時に対応できない可能性があります。 - インフレリスク
物価が上昇するインフレ状態になっているときは、お金の価値が下がるので、預けたお金の実質的な価値が減ってしまう可能性があります。 - 運用効率が低い
他の投資商品と比較すると、資産を増やすスピードが遅く、運用効率が低いと言えます。
定期預金は普通預金より高い金利で預けられますが、途中で解約してしまうと、普通預金と同じ金額の利息しかもらえなくなる可能性があります。
なので、定期預金をを選ぶときには将来の予定を、例えば1年後に車を買い替えるための資金とか5年後の子供の学費とかイメージして購入するようにすると良いでしょう。
定期預金は、親しんできた銀行や郵便局で行うことができ、元本が保証されるという安心感がありますが、金利が低く、インフレが進むとその価値が下がってしまう可能性があることを理解しておきましょう。
個人向け国債のメリットとデメリット
最後に、安全な資産運用の一つ「個人向け国債」をご紹介します。
日本の個人向け国債とは、日本国政府が発行する国債のうち、個人向けに販売されているものをいいます。個人向け国債は、1万円から購入することができ、満期まで元本割れすることはありません。利子は年2回支払われ、元本は満期になると戻ってきます。
個人向け国債は、国が発行する債券であり、安全性が高いことから人気があります。
しかし、他の金融商品と同様に、メリットとデメリットが存在します。
資産運用の一環として個人向け国債を検討する際には、これらの点をしっかりと理解しておきましょう。
個人向け国債のメリット
- 安全性が高い
国が発行するため、デフォルトのリスクが非常に低く、元本が保証されていると言えるでしょう。
元本割れのリスクがなく、低リスクで安定した収入が得られる金融商品です。
また、1万円から購入できるため、少額から始めることができます。 - 定期預金より高い利回り
一般的に、定期預金よりも高い利回りが期待できます。 - インフレ対策
物価が上昇する状況下では、金利が固定されている国債は、ある程度のインフレ対策になります。
個人向け国債のデメリット
- 流動性が低い
個人向け国債は、原則としていつでも解約できます。
原則として、発行から1年経過後であれば、口座を開設している取扱機関(郵便局、銀行など)で、いつでも一部または全部を中途換金することができますが、損失が出る場合があります。 - 利回りが低い
株式や投資信託などと比較すると、期待できる利回りは低めです。 - 機会損失
金利が上昇する局面では、固定金利の国債は、変動金利の金融商品に比べて機会損失が生じる可能性があります。
もし、個人向け国債の固定金利を買った場合、世の中の物価が上がっていて金利も上昇したとしても、もっている国債の金利が上がらないので相場より安い金利で我慢しなければいけません。
さらにその金利には、約20%の税金がかかることがデメリットになります。 - 物価変動リスク
高インフレが長期化する場合は、実質利回りが低下する可能性があります。
個人向け国債を検討するとき注意する点
- 投資目的
安定した収入を得たいのか、それとも高いリターンを求めているのか。 - 投資期間
短期的な資金であれば、より流動性の高い商品を選ぶ方が良いかもしれません。 - リスク許容度
元本保証を重視するのか、それともある程度のリスクを取って高いリターンを狙いたいのか。 - 税制上の優遇
自分が適用される税制上の優遇措置を確認しましょう。
個人向け国債は、安定性を重視する投資家にとって魅力的な選択肢の一つです。
しかし、他の金融商品と比較して、流動性が低いことや、期待できる利回りが低いといったデメリットも存在します。
個人向け国債の種類や購入方法を簡単に解説
個人向け国債についてもう少し詳しく触れておきます。
- 種類
一般的によく知られているのは、変動金利型と固定金利型です。
変動金利型は、市場金利の変動によって利息が変動します。
固定金利型は、契約期間中の金利が固定されています。 - 購入方法
郵便局や銀行などで購入できます。
近年では、インターネットバンキングなどでも購入できるケースが増えています。
2023年9月現在、個人向け国債には以下の3つのタイプがあります。
- 変動10年:半年ごとに適用利率が改定されます。満期は10年です。
- 固定5年:発行時に設定された利率が満期まで変わりません。満期は5年です。
- 固定3年:発行時に設定された利率が満期まで変わりません。満期は3年です。
個人向け国債は、国が保証しているので元本割れすることはありません。
購入してから1年経過した後は、いつでも中途換金ができます。
直近1年分の利子は差し引かれますが、満期前でも元本割れすることなく換金可能です。
個人向け国債の購入を検討する場合は、定期預金と同じようにいつどのくらいのお金が必要になるのか、はっきり決まっている場合利用するといいでしょう。
貯金、定期預金、個人向け国債の選びかた
貯金、定期預金、個人向け国債はどのように選ぶべきか見ていきましょう。
貯金、定期預金、個人向け国債の3つの資産運用を選ぶ際の基準は、ご自身の資金の使途、リスク許容度、金利への期待によって大きく変わってきます。それぞれの特徴を踏まえ、ご自身の状況に合わせて最適なものを選びましょう。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
貯金 | いつでも引き出せる流動性が高い | 即時性、安全性が高い | 金利が低い |
定期預金 | 一定期間預けることで金利が上がる | 貯金より金利が高い、安全性が高い | 満期前に解約すると損する場合がある |
個人向け国債 | 国が発行する債券で元本保証 | 安全性が高い、金利が貯金より高い、税制優遇がある場合も | 金利が変動する場合がある、流動性が低い |
選ぶ際の基準
- 資金の使途
- すぐに使うお金:貯金が最適です。
- 1~2年以内に使うお金:定期預金や短期の個人向け国債がおすすめです。
- 老後など長期で使うお金:個人向け国債など、長期的な運用が可能な商品が適しています。
- リスク許容度
- リスクを避けたい:貯金や個人向け国債がおすすめです。
- ある程度のリスクを取れる:より高い金利が期待できる商品も検討できます。
- 金利への期待
- 少しでも高い金利を求める:定期預金や個人向け国債がおすすめです。ただし、金利は変動する可能性があるため注意が必要です。
それぞれの商品が向いている人
- 貯金
- 日常の生活費や急な出費に備えたい人
- 安全性を重視したい人
- 定期預金
- ある程度の期間、お金を使わない人
- 貯金よりも高い金利で運用したい人
- 個人向け国債
- 長期的な視点で資産形成をしたい人
- 税制優遇を活用したい人
- 国が発行する債券なので、安全性も重視したい人
貯金、定期預金、個人向け国債はそれぞれ特徴が違います。
ご自身の状況に合わせて最適な商品を選んでいきましょう。
まとめ
初めての資産形成でも安全な「銀行の貯金」「定期預金」「個人向け国債」の3つを解説しました。
「銀行の貯金」は、昔から慣れ親しんでいて安心で信頼できる資産運用です。
けれど、利子がほんのわずかしかつかないので、長い期間を考えた資産形成には向いていません。
「定期預金」は、貯金と同じく身近な銀行や郵便局で行うことができる資産運用です。
貯金よりも利子が高くリスクもほとんどなく安全です。
けれど、決まった満期以外で解約すると、貯金と同じ利子しかつかないことや、インフレが進みお金の価値が下がると定期預金の価値も下がってしまうことに注意が必要です。
「個人向け国債」は、国の借金を買う資産運用で、年2回利子が受け取れます。
日本が債務不履行にならない限り満期になれば元本は返却されるので、比較的利回りもよく安全な資産運用の一つです。
しかし、途中で解約すると損失が出ることがあります。
また、固定金利を選ぶと金利が上昇した場合、低い金利で我慢しなければいけなくなる可能性があります。
貯金は毎日の生活費を置いておく場所として考えると良いでしょう。
定期預金は、しばらく使い道のないお金を置く場所として、
個人向け国債は、将来まとまったお金が必要になるときに備えとして利用すれば、使い込みを防止するためにも良いでしょう。
ただし、金利は変動するため、利回りが低下する可能性があるので注意が必要です。
また、利子は非課税ではないため、利息収入に対しては税金がかかることも覚えておきましょう。
「資産運用」にはさまざまな方法があります。
自分はいつ、どのくらいお金が必要で、リスクはどれくらいとれるのかをイメージして、貯金、定期預金、個人向け国債、またその他の投資方法を検討してみましょう。
参考文献
経済学入門 ティモシー・テイラー
個人向け国債 - Wikipedia
定期預金 | 一般社団法人 全国銀行協会 (zenginkyo.or.jp)