ぽれぽれ経済学

モノの値段はだれが決める? 

モノの値段は誰が決める?

前回は分業のメリットについて見てきました。

一人で完成品をつくって販売するよりも、手分けして作ればずっと早いし、作れる量も多くなります。そんな「分業」で生まれた多くの完成品を売っていくために「市場しじょう」がうまれ、モノとモノとのやり取りがスムーズになり、生産と消費のバランスを調整できるようになりました。

私たちが普段買い物するとき、市場を意識して買い物する方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、実は、値段がついているほとんどの商品は市場を通して、私たちの手元に届いた品物です。

そんな「市場」を経由して私たちの手元に届くシステムのことを「市場経済」と呼んでいます。

ふだん馴染みのない「市場経済」ですが、私たちの生活に直接大きな影響を与えています。ここではそんな「市場経済」のしくみを分かりやすく解説します。

市場経済のしくみ

市場経済っていう言葉、難しいニャー

「市場経済」という言葉はなじみがなく読み方も「いちばけいざい」ではなく「しじょうけいざい」と読んだり、なんだかわかりずらい言葉です。けれど、私たちの生活に大きな影響を与える大きな社会のしくみなのでしっかり理解しておくことは、世の中を理解するためにも大切です。がんばりましょう!

市場経済の「市場」とは、どこかに物理的な場所としての市場(いちば)があるというだけではなく、以下の2つの意味を持つ抽象的な概念として理解することが重要です。

  1. 財・サービスの売買が行われる場 具体的には、以下の場所などが該当します。
    • スーパーマーケットや商店街などの小売店舗
    • 農産物市場や魚市場などの卸売市場
    • 株式取引所や商品取引所などの金融市場
    • インターネット上のフリマサイトやオークションサイト
  2. 需要と供給が価格を通じて調整される仕組み
    特定の財・サービスについて、買い手と売り手が集まり、価格を競争的に決定することで、需要と供給が一致するような取引が行われるメカニズムを指します。このメカニズムは、物理的な場所が存在しない場合でも、インターネット上などで実現することができます。

例えば、野菜の市場を例に考えてみましょう。

  • 朝、農家の人々が収穫した野菜をトラックに積み、野菜市場へ向かいます。
  • 市場には、スーパーマーケットや八百屋などの買い手が集まってきます。
  • 農家と買い手は、野菜の品質や量などを考慮しながら、価格について交渉します。
  • その日の天候や野菜の収穫量などによって、野菜の価格は変動します。
  • 価格が高ければ、消費者は野菜をあまり買わず、農家は野菜を余らせてしまいます。
  • 一方、価格が低ければ、消費者は多くの野菜を購入しますが、農家は十分な利益を得ることができません。
  • このように、価格の調整を通じて、野菜の需要と供給が一致するように市場が働きます。

このように、市場経済における「市場」は、単なる物理的な場所ではなく、需要と供給が価格を通じて調整される経済メカニズム全体を指す概念なのです。

市場経済のメリットとデメリットについては、以下の点を理解しておくことが重要です。

市場経済のメリット

  • 効率的な資源配分:市場メカニズムを通じて、需要の高い財・サービスが効率的に生産される。
  • イノベーションの促進:企業間の競争が活発化し、新しい技術や製品の開発が促進される。
  • 消費者の選択の幅が広がる:消費者は、様々な財・サービスの中から自由に選択することができる。

市場経済のデメリット

  • 所得格差の拡大: 市場経済では、能力や努力に応じて所得が分配されるため、所得格差が拡大する傾向がある。
  • 環境問題: 利益追求を優先するあまり、環境問題が発生しやすくなる。
  • 情報格差: 情報にアクセスできる人とできない人の間で、格差が生じる可能性がある。

市場経済は、完全なシステムではありませんが、多くの国々で採用されている経済体制です。市場経済のメリットとデメリットを理解した上で、より良い社会の実現に向けて改善していくことが大切です。

市場経済のしくみ

もう少しくわしく市場経済のしくみを見ていきましょう。

市場経済のメインキャラクターは「家計」と「企業」です。下の図をご覧ください。
「家計」とは、普段の生活でモノを買う私たちのことです。私たちは市場経済の中の主人公です。私たちの「何を買おうかなー」という、なにげない行動は経済に大きな影響を与えています。

「企業」は、モノやサービスを提供する人たちのことです。

市場経済が行われているとき、お金は「家計」と「企業」の間を行ったり来たりします。
お金の行き来をさらに細かくみると、それは3つにわけることができます。

市場経済のお金の流れ
  • 財市場
    商品やサービスが取引されること。スーパーや通信費などの購入できるすべてのモノが含まれます。ここでは商品やサービスが企業から家計に向かって流れ、お金は逆に家計から企業に流れます。経済学用語でいうと企業が財の供給者であり、家計は財の需要者です。
  • 労働市場
    家計は労働力を供給します。労働は家計から企業に流れ、賃金が企業から家計に流れます。ここでは家計が労働の供給者であり、企業が労働の需要者です。
  • 資本市場
    ここでは人々が企業にお金を投資します。株式の購入といった直接の投資だけではなく、銀行の預貯金も間接的な投資です。私たちが銀行に預けたお金は銀行が企業に投資されています。家計はその対価として配当や利子を受け取ります。ここでの供給者は家計で、企業が需要者です。

このように「家計」と「企業」は、お互いが「供給する人」と「それを受ける需要する人」その両方の役を果たしていて、財はその間を行ったり来たりしています。

計画経済のしくみ

市場経済」とは、自由に売り買いができる社会のことを指しました。市場経済を考えるには、別の経済のかたちをとっているところをみるとはっきりします。

市場経済の反対には、個人が自由にモノをつくって売ることができない社会「計画経済」があります。こちらは国が何をどのくらいつくるのかを決める社会です。
計画経済には次の3つの特徴があります。

  • 政府が経済計画を策定する
    政府は、国民のニーズや資源の制約などを考慮した上で、経済全体の生産量、価格、投資などを計画します。
  • 企業は政府の計画に従って活動する
    企業は、政府の計画に基づいて何をどのくらい生産するかを決定します。価格も政府によって決定されます。
  • 政府が資源を配分する
    政府は、企業に必要な資源を配分します。

計画経済のメリット

  • 経済成長の加速
    政府が経済全体を計画的に運営することで、無駄を省き、効率的に資源を配分することができるため、経済成長を加速することができます。
  • 所得格差の縮小
    政府が所得分配を計画的に行うことで、所得格差を縮小することができます。
  • 経済の安定化
    政府が経済全体をコントロールすることで、景気変動を抑え、経済を安定させることができます。

計画経済のデメリット

  • 柔軟性の欠如
    政府の計画は変化に対応しにくいため、経済の状況変化に対応するのが遅れる可能性があります。
  • イノベーションの抑制
    企業が政府の計画に従って活動する必要があるため、新しいアイデアや技術の開発が抑制される可能性があります。
  • 情報収集の困難
    政府が経済全体を計画的に運営するためには、膨大な情報が必要となりますが、全ての情報を収集することは困難です。

計画経済は、旧ソ連や東欧諸国などで採用されていましたが、1980年代以降、これらの国々では市場経済へと移行しました。近年では、中国などが市場経済と計画経済を組み合わせた独自の経済体制を構築しています。

計画経済は、完全な形では存在せず、多くの国々が市場経済と計画経済の要素を組み合わせています。どの程度の計画経済を取り入れるかは、それぞれの国の政治体制や経済状況によって異なります。

計画経済の例

  • 旧ソ連
    ソ連は、1920年代から1991年まで計画経済を採用していました。政府は、全ての企業を国有化し、経済全体を中央計画局によって管理していました。
  • 中国
    中国は、1949年から1978年まで計画経済を採用していました。その後、市場経済へと移行しましたが、政府は依然として経済に大きな影響力を持っています。
  • ノルウェー
    ノルウェーは、混合経済を採用しており、政府は石油などの重要な産業を国有化し、社会福祉制度を充実させています。

計画経済は効率的で平等な経済体制を実現できる一方で、自由やイノベーションを抑制する可能性があるという指摘もあります。

価格はどうやって決まるの

あの商品がもうちょっと安くなったら買いたいな・・と思わなかった人はいないと思いますが、モノについている値段はいったいどのように決まっているのでしょうか?

それをつくるときにかかった金額によって決まるニャー?

でも、同じ商品が店によって違ったり、欲しくても全く手に入らなかったマスクのように同じ商品なのに、価格が急に値上がりすることもありましたよね。
「お店がぼったくってた」わけですが違法ではありません。商品の価格に絶対的なものはありません。
では、価格はどのように決まるのでしょうか?

経済学者の父と呼ばれるアダム・スミスは、価値について考えた有名なたとえ話があります。それは「水とダイヤモンドのパラドックス」です。スミスはモノの価値には「交換価値」と「使用価値」の2つがあるということに気が付きました。

ダイヤモンドは欲しい人がたくさんいるのに、世の中に少ししか存在してないので高いです。水は生きていくうえでなくてはならないものですが、たくさんあるので安いですね。

このようにダイヤモンドは、使うという点においては何の価値もありませんが、欲しい人がたくさんいて少ししか存在しません。つまりダイアモンドの「使用価値」は低く、「交換価値」は高くなります。

反対に水は飲むだけではなく、発電ができるなどの高い価値を持っています。水は「使用価値」が高いですが、「交換価値」は低くなります。



このように、交換価値と使用価値というのはいつも一致するわけではありません。

なのでモノの価格の話をするときは、どちらの価格について話しているのか明らかにしておく必要があるのです。

経済学で「価値」といったら「交換価値」のことを指しています。

モノの「交換価値」とは、それを欲しがっている人の数に注目します。交換価値の高いモノは、人気があるから値段が高い、逆に必要なモノであっても簡単に手に入るものだと安い。モノの値段はそのように決まっていて、そのもの自身の価値は考えません。

経済学の視点で考えるということは、モノの実用的な価値や必要性ということは一切考えません。そのような価値判断はしないで、価格だけに注目します。

この考えはとてもドライに感じられますが、モノの価値が「正しい」のか「間違っている」のか、自分の価値感にあっているのか、そうでないのか一切考えないので、どんな文化を持つ人とでも、同じ認識が持てるというメリットがあります。

価格とは世の中の需要と供給のバランスで決まってくるものです。人々は何を欲しがっているのか? そしてそれはどれだけあるのか?

価格とはその関係を反映したものにすぎないのです。

まとめ

市場経済ではモノを自由に売り買いできます。逆に計画経済では政府の決められた量とモノを作って、決められた価格で売る社会のことを指します。

市場経済では、企業はモノを生産してその対価に家計から企業に財が流れます。
家計は労働力を提供して、企業は家計に賃金を支払います。
さらに家計は企業の資本を支え、企業はその対価を家計に支払います。
このように財は企業と家計の間を回っています。

経済学では、モノの価格はそのものがもつ価値を参考にしません。
モノの価格はどれだけほしい人がいるのか、それはどのくらいあるのか、それで決まるだけのものなのです。

私たちは高額な商品をなにかありがたがったり、安い商品に対して軽く見たりすることがありますが、モノの値段はほしい人が多くて数が少ないときに高くなり、欲しい人すべてに行き渡る場合価格が安くなる、ということに過ぎないのです。

価格にはだまされずに冷静な判断がしたいですね。

参考文献

経済学入門 ティモシー・テイラー

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