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企業への規制

企業への規制

企業への規制は、ニュースでもよく注目される話題です。
特に、社会に大きな影響を与えた事件がきっかけで、新しい規制が作られて注目が集まることもよくあります。

自由市場では、だれもが自由に事業を立ち上げ、他の企業と競争し利益を上げることができます。その競争があることで、消費者は自分に合った商品を選べますし、また企業の技術開発が進みやすいので、より便利なモノやサービスが生まれるなど、競争は消費者の利便性をあげるきっかけづくりになっています。

しかし、この競争は良いことばかりではありません。
競争の結果が、社会にとって不利益になることがありますし、逆に競争が行き過ぎて、関連企業が疲弊してつぶれてしまうこともあります。

企業が自社の利益を求めて振舞うと社会全体に悪影響が出る場合に備えて、多くの国では企業に「規制」をかけられています。

ここでは、そんな企業への「規制」について解説します。
企業への「規制」は私たちがモノを選ぶとき、また職場などで自分自身の利益を守るための大切な知識です。

ものごとが複雑になっている現代社会をのりきるために役立つ、企業の規制ついて解説します。

規制はなぜ行われるのか?

まず、そもそも企業への規制はなぜ行われるのでしょうか?
その、主な理由をいくつか挙げ、それぞれについて詳しく説明していきましょう。

規制の理由その1 市場は完璧ではないから

自由な取引を多くの売り手と買い手に任せておけば、ちょうど良い価格が決まり、モノは効率よくさばけていく、という完全競争が行われている場合なら、特に誰かが異議を申し立てることもありません。

けれど実際には、どんな市場でも売り手や買い手にとって、効率の良い取引が行われるとは限りません。

行われた取引が、周囲にとってマイナスの影響を与えたり、消費者にとって不利益になる場合があるので、企業には規制をかける必要があります。
例えば、次のような場合に取り締まりが必要になります。

  • 社会全体に与える経済効果
    企業の活動の影響が、その取引にかかわった企業だけでなく、社会全体にプラスまたはマイナスの影響(例:技術革新・環境汚染)を与えることがあります。

    例えば、環境汚染や騒音といった負の影響が生まれた場合、企業側がこれらのコストを十分に考慮せずに活動してしまう可能性があります。このような場合、規制によって企業にこれらのコストを負担させ、社会全体の福祉を向上させる必要があります。
  • 情報非対称
    企業と消費者、あるいは企業と従業員の間で情報が非対称な場合、市場メカニズムがうまく機能せず、消費者や従業員が不当な扱いを受ける可能性があります。

    例えば、食品の安全性に関する情報が不十分な場合、消費者は安全な食品を選ぶことができず、健康被害を受ける可能性があります。このような場合、規制によって企業に情報の開示を義務付けたり、安全基準を設けたりすることで、消費者や従業員を保護する必要があります。
  • 独占
    特定の企業が市場を独占した場合、その企業は価格を自由に設定したり、製品の品質を低下させたりする可能性があります。
    このような場合、規制によって競争を促進し、消費者の利益を守る必要があります。

規制の理由その2 社会全体の利益を守るため

また、市場の問題だけではありません。
企業の活動は労働者、消費者、そしてその活動の結果、環境にも大きな影響があるためそれらの利益も守る必要があります。

  • 公正な競争
    すべての企業が公正な競争の場において活動できるよう、不正競争行為やカルテルを禁止する必要があります。
  • 労働者の保護
    労働者の安全や健康を確保するため、労働基準法などの規制が必要です。
  • 消費者保護
    消費者が安全な製品やサービスを安心して購入できるように、製品安全法や消費者契約法などの規制が必要です。
  • 環境保護
    環境汚染を防ぎ、持続可能な社会を実現するため、環境規制が必要です。

規制の理由その3 社会全体の秩序を維持するため

そして最近、特に重要視されることとして、企業が社会的責任をもち、社会全体の問題を解決する必要がある、という考え方が主流になっています。なので企業は自社だけの利益だけではなく、周囲の環境にも目を配ることが求められています、

  • 倫理的なビジネス
    企業は、社会の一員として、倫理的なビジネスを行うことが求められます。
    例えば、児童労働や強制労働を禁止するような規制が必要です。
  • 社会責任
    企業は、社会に対して様々な責任を負っています。
    例えば、地域社会への貢献や災害時の支援など、企業に社会貢献を義務付ける規制も考えられます。

規制の理由その4 競争で企業がつぶれないように

また過度な競争は企業にとってコストになるだけではなく、利益が出ずに疲弊してしまう場合があります。
その理由は次のようなものが考えられます。

  • 参入障壁が低い
    新規参入が容易な市場では、多くの企業が参入し、激しい競争が展開されることがあります。
  • 差別化が難しい
    商品やサービスの差別化が難しく、価格競争が激化する場合、企業は利益を出しにくくなります。
  • 需要が伸び悩んでいる
    市場全体での需要が伸び悩んでいる場合、企業はシェア争いに終始し、疲弊してしまう可能性があります。
  • 固定費が大きい
    設備投資など、固定費が大きい産業では、一度市場に参入してしまうと、たとえ赤字であっても容易に撤退することができず、過当競争に陥りやすいことがあります。

このような理由で競争が激しくなると、企業はコストカットのため従業員への負担を増やしたり、商品やサービスの低下、そして企業自身の倒産などの問題が発生します。

このため、適度な競争を維持するために、政府による規制が大切になってくるのです。

企業の適切な競争を管理する規制は、市場の失敗を補い、社会全体の利益を守り、社会全体の秩序を維持するために必要不可欠なものなのです。

企業への規制の代表的な例

では、実際にどのような規制があるのか簡単に見ていきましょう。

企業への規制は、その種類や目的、対象となる企業の規模や業種などによってさまざまです。
ここでは、代表的な企業規制の例をいくつか挙げ、具体的な事例とともにご説明します。

経済活動に関する規制

  • 独占禁止法
    市場における競争を促進し、消費者の利益を守るための法律です。
    企業間の不当な取引制限や、特定の企業による市場支配の禁止などが主な内容です。
    • 事例:ある特定の業界で、数社の企業が価格を共同で決定し、競争を制限していたことが発覚し、独占禁止法違反として罰則が科せられた。
  • 消費者保護法
    消費者の利益を保護し、公正な取引秩序を維持するための法律です。
    虚偽・誇大広告の禁止、不良品への対応などが主な内容です。
    • 事例:ある化粧品会社が、商品の効果について根拠のない表示をしていたことが発覚し、消費者庁から是正勧告を受けた。
  • 労働基準法
    労働者の労働条件を改善し、労働者の権利を保護するための法律です。
    労働時間、賃金、休暇などに関する規定が定められています。
    • 事例:あるIT企業が、従業員に対して長時間労働を強いていたことが発覚し、労働基準監督署から是正指導を受けた。

環境に関する規制

  • 大気汚染防止法
    大気汚染を防止し、良好な大気環境を保全するための法律です。
    工場や自動車などから排出される有害物質の規制などが主な内容。
    • 事例:ある自動車メーカーが製造する自動車から排出される排ガスに基準値を超える物質が含まれていたことが発覚し、リコールが行われた。
  • 水質汚染防止法
    水質汚染を防止し、良好な水環境を保全するための法律です。
    工場からの排水や生活排水などによる水質汚染の規制などが主な内容。
    • 事例:ある化学工場から有害物質が河川に流出し、水質汚染が発生したため、工場が行政処分を受けた。

安全に関する規制

  • 食品衛生法
    食品の衛生基準を定め、食中毒などを防止するための法律です。
    食品の製造、加工、販売に関する規制などが主な内容。
    • 事例: ある食品メーカーが製造する食品から異物が混入していたことが発覚し、製品の回収が行われた。
  • 労働安全衛生法
    労働者の安全と健康を確保するための法律です。危険な機械の取り扱い、有害物質への曝露などに関する規制などが主な内容。
    • 事例:ある建設現場で、安全対策が不十分なために労働者が負傷する事故が発生し、事業者が行政処分を受けた。

その他の規制

  • 金融商品取引法
    不公正な取引行為を防止し、投資家の保護を図るための法律です。
  • 個人情報保護法
    個人情報の適切な取り扱いを定め、プライバシーを保護するための法律です。
  • 会社法
    会社の設立、組織、経営に関する法律です。

これらの規制は、企業が社会の一員として責任を果たし、持続可能な成長を実現するために不可欠なものです。

規制違反への罰

もし規則違反が見つかれば、下のような罰則をうけます。

  • 行政処分:警告、改善命令、業務停止命令など
  • 罰金::法律違反に対して、罰金が科せられる
  • 賠償責任::被害者に対して、損害賠償責任が発生する

企業は、これらの規制を遵守し、社会の一員としての責任を果たすことが求められます。

市場競争が上手くいかない理由

このような規制があっても市場がうまく機能しない場合があります

中世の時代なら、売り手と買い手がその取引にお互いが満足しているだけで良かったかもしれませんが、今は取引にかかわった人だけの満足だけでは良い取引とは評価されません。

その取引の結果が周囲にとって、また消費者にとって不利益になる場合「市場競争が上手くいっていない」と判断されます。
上手くいかない取引はどのような時起こるのでしょうか?
その代表的な例をいくつか挙げてみましょう。

  • 完全な情報がない
    消費者や企業が、商品やサービスに関する完全な情報を持っていない場合、不当な価格設定や品質の低い製品が横行する可能性があります。
    例えば、中古車市場では、車の状態について売り手が買い手よりも詳しく知っているため、品質の低い車が高値で売られてしまう可能性があります。
  • 不完全な競争
    特定の企業が市場を独占したり、少数の企業が市場を支配して価格を自由に決められる場合、消費者は高品質な商品を適正な価格で購入できなくなります。また、技術革新が阻害される可能性もあります。
  • 外部経済効果
    ある企業の活動が、他の企業や社会全体にプラスまたはマイナスの影響を与える場合、市場メカニズムだけでは効率的な資源配分ができないことがあります。
    例えば、環境汚染や騒音といった負の外部経済は、企業のコストに含まれないため、企業に任せておくと社会全体にマイナスの影響があったとしても過剰な生産が続けられる可能性があります。
  • 市場の外部性
    市場が外部の要因によって大きく影響を受ける場合です。
    例えば、経済危機や自然災害は、市場全体の活動を停滞させ、失業率の上昇やインフレを引き起こす可能性があります。
  • 政府の介入
    政府の規制や補助金が、市場の効率性を損なう場合もあります。
    例えば、特定の産業を保護するための関税や補助金は、競争を阻害し、消費者の選択肢を狭める可能性があります。
  • 公共財
    一度提供されると、誰もが享受できる財やサービス(例えば、国防、きれいな空気など)は、市場メカニズムだけでは十分に供給されない可能性があります。

このように市場が上手く機能しない原因は「情報の偏り」「独占」「市場が社会全体の悪い影響を受ける」「政府の介入」など、さまざまな要因が絡み合って起こります。

まとめ

自由市場の取引は、大勢の取引相手がいれば自然に価格が決まり、効率の良い量が決まる場合ばかりではありませんでした。

取引相手同士が満足していても、周囲にとって不利益が発生する場合、両者の情報に偏りがある場合、また市場のシェアを少ない企業が独占している場合などは、その取引に問題があるかもしれません。

市場競争は、一般的には経済の発展に貢献しますが、必ずしもすべてのケースで効率的な結果をもたらすわけではありません。市場の状況や業界の特徴によって、競争が過度に激化し、企業が疲弊してしまうこともあります。

そのため健全な競争を促すために、独占禁止法、労働基準法、消費者保護法、大気汚染法、食品衛生法など各国には、産業や時代によって多くの法が作られています。

しかし、規制は企業の活動を制限し、経済成長を阻害する可能性も指摘されています。

次回は「規制緩和」について見ていきましょう。
お楽しみに!

参考文献

経済学入門 ティモシー・テイラー

PR:株式会社レオナビューティー

RP:株式会社イワミズ

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