みなさん!
突然ですが、大企業についてどんな印象をお持ちでしょうか?
「大企業はいろいろ守られてて利益を出しやすい体質になっている・・・」
と感じたことはありませんか?
小さな会社より大きな企業の方が、広告をたくさん流して注目を浴びやすいですし、給料も良さそうです。
同じ業種なら同じ「規制」を守って、経済活動をしているはずなのに、なぜ大企業の方が利益率が多くなってるのでしょうか?
ここでは、そんな企業が守らなければいけない「規制」について深掘りしていきます。
「企業の守るべき規制なんて関係ないよ・・・」と思われるかもしれませんが、企業が受けている「規制」は、私たちがモノを選ぶとき、また職場などで自分自身の利益を守るために大切な知識です。
現代はネットの影響もあり、ものごとが複雑で急に変化がおとずれる社会です。
そんな激流をのりきるためには「企業の規制」ついて知っておくことは、必ずあなたのメリットになります。
そして最後に「ユニクロ」と「マクドナルド」の規制への取り組みを解説します。
多くの人に愛される企業は、規制をどのように克服し乗り越えているのか見ていきましょう。
きっと得るものがあるはずです。
ぜひ、「規制」について知識を深めて賢い消費者になりましょう!

企業への規制はどのようなものがあるの?
まず、あなたは「規制」と聞くとどんなイメージを持つでしょうか?
なんとなく悪いイメージを持つ方が多いかと思います。
それはもしかしたら「規制」には、自由な経済活動を阻害するという側面が強調されるからかもしれません。
けれど、企業が守らなければいけない「規制」は、社会全体の利益や公正な競争を維持するという、とても大切な役割があります。
「規制」と一口に言っても多くの規制があります。
ここでは「規制」を「経済」「消費者保護」「環境」「労働」そして「個人情報」と大きく5つに分けて、その代表的な規制について見ていきましょう。
1. 経済活動に関する規制
まず、企業が行う活動にはさまざまな「規制」が掛けられています。
- 独占禁止法
市場における公正な競争を促進し、消費者の利益を保護するための法律です。
不当な取引制限や独占行為などを禁止しています。
例えば、企業間の「談合」による価格つり上げや、市場を「独占」するための不当な行為などが規制対象です。 - 金融商品取引法
投資家を保護し、金融市場の公正性を確保するための法律です。
有価証券の取引における不正行為や情報操作などを禁止しています。
例えば、「インサイダー取引」や「虚偽の情報開示」などが規制対象となります。 - 下請法
親事業者が下請事業者に対して優越的な地位を利用した不当な行為をすることを規制する法律です。
例えば、不当な減額や支払遅延、不当な返品などが規制対象となります。
2. 消費者保護に関する規制
次に、企業が消費者に向けて負わなければいけない責任に対する規制があります。
- 消費者契約法
消費者と事業者間の契約におけるトラブルを防止し、消費者を保護するための法律です。
不当な勧誘行為や不当な契約条項などを禁止しています。
例えば、事実と異なる説明をして契約させたり、消費者に一方的に不利な契約条項を設定したりすることなどが規制対象となります。 - 製造物責任法(PL法)
製品の欠陥によって消費者に損害が発生した場合に、製造業者等の損害賠償責任を定めた法律です。製品の安全性確保を促し、消費者を保護することを目的としています。 - 景品表示法
過大な景品提供や不当な表示を規制し、消費者が適切な情報に基づいて商品やサービスを選択できるようにするための法律です。
例えば、実際よりも著しく優良であるかのように表示したり、過大な景品で消費者を誘引したりすることなどが規制対象となります。
3. 環境に関する規制
そして、企業の活動が環境へ負荷を与えること、また健康に害のあるものは厳しく規制されます。
- 環境基本法
環境保全に関する基本的な理念や政策を定めた法律です。
大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、騒音、振動、地盤沈下、悪臭などを防止するためにつくられています。 - 廃棄物処理法
廃棄物の適切な処理を定めた法律です。
不法投棄や不適切な処理を禁止しています。
企業は事業活動に伴って発生する廃棄物を適切に処理する責任があります。 - 省エネ法
エネルギーの使用の合理化を促進するための法律です。
企業はエネルギー効率の高い設備導入や運用改善などが求められます。
4. 労働に関する規制
もちろん、「労働者の福祉」のために多くの規制が掛けられています。
- 労働基準法
労働時間、賃金、休日などの労働条件の最低基準を定めた法律です。
労働者の権利を保護し、適切な労働環境を確保することを目的としています。
例えば、違法な長時間労働や不当な解雇などが規制対象となります。 - 労働安全衛生法
職場における労働者の安全と健康を確保するための法律です。
労働災害の防止や健康診断の実施などを定めています。
5. 個人情報保護に関する規制
ネットの広がりから、個人の情報の使われ方にもより注意が必要になりました。
- 個人情報保護法
個人情報の適切な取り扱いを定めた法律です。
企業は個人情報を取得、利用、保管する際に、法令で定められた義務を遵守する必要があります。
これらの規制は、企業活動に一定の制約がかけられることで「社会全体の利益」「公正な競争の維持」「消費者の保護」「環境保全」「労働者の権利保護」が守られることになります。
企業はこれらの規制を遵守することで、持続可能な事業活動を行い、社会からの信頼を得ることができるのです。
大企業は規制に守られている?
あなたは「大企業は規制によって守られているので利益が上げやすい」という話を、聞いたことがありますか?
それは本当でしょうか?
その答えは「半分が嘘で、半分が本当」です。
「規制」は大企業に有利な面があります。
それは「規制」が、新規参入の障壁となり、大企業にとって有利な状況を作り出す場合があるためです。「規制」は、どの企業に対しても同じようにかかっているのですが、それが結果として「規制によって競争が制限され」大企業が有利になる、ということが実際にあります。
例えば、事業を行うには政府の許可が必要な場合があります。
この許可を取るのが新規参入者に難しい場合が良く見られます。
環境規制や労働規制など、企業が遵守すべき法規制は年々複雑化しています。大企業は専門の部署や顧問弁護士などを抱え、これらの法規制に適切に対応する体制を整えることができます。
けれど、中小企業など規模の小さい企業は、複雑な法へ対応が大きな負担となります。
結果として、法規制への対応力が低い中小企業の参入が阻まれ、大企業が有利な状況となるのです。
このように、大企業は「規制」への対応力や資金力などの面で有利な立場にあります。
しかしそれは、今後ずっと安心というわけではありません。
例えば、規制が緩和されると、新規に事業に参入してくるライバル企業が現れます。
すると、大企業であっても競争にさらされます。
また、技術革新によって既存のビジネスモデルが陳腐化することがあります。このような場合、大企業は対応に遅れがちです、その結果、新しい技術を持つ中小企業やベンチャー企業が台頭する可能性があるのです。
そもそも「規制」とは、市場の健全性や消費者保護のために必要なものであり、大企業を守るためにあるわけではありません。けれど、「規制」が結果として大企業に有利に働く側面があることは理解しておく必要があるでしょう。

ユニクロの規制への工夫
ここからは、実際の企業がどのように規制を乗り越えて利益を出しているのか見ていきましょう。
ユニクロは、世界中で服を売るために、色々な国のルール(規制)を守らなければなりません。これらのルールは、働く人のこと、環境のこと、製品の安全性など、多岐に渡ります。ユニクロはこれらの規制にしっかりと対応することで、信頼を得て、ビジネスを成功させています。具体的にどのような規制があり、どのように対応しているのか見ていきましょう。
1. 働く人に関する取り組み
工場で働く人の労働時間、賃金、安全な労働環境などが法律で決められています。
特に、児童労働(子供を働かせること)は絶対に禁止されています。
そこで「生産パートナー コードオブコンダクト」というルールを作り、それぞれの工場がこれを守るように求めています。この中には、児童労働の禁止や適切な労働条件の確保などが含まれています。
2. 環境に配慮した取り組み
服を作る際に使う化学物質の安全性を独自の厳しい基準を設けて製品の安全性を確保しています。
また、廃棄物の処理方法を、環境に配慮した素材の使用を推進しています。
例えば、リサイクル素材や環境負荷の少ない素材を使用しています。
特にリサイクルでは、「RE.UNIQLO」という活動を通じて、不要になった服を回収し、リサイクルや寄付を行っています。
3. 人権への対応
ユニクロに関わる全てのサプライヤー(関係者)で人権が尊重されるように「人権デューデリジェンス(人権侵害のリスクを特定し、防止するための取り組み)」を実施しています。
第三者機関による監査を行い、工場の労働環境などをチェックしています。
もし人権侵害が発見された場合は、改善を求め、必要に応じて取引停止などの措置を取ります。
このように、ユニクロは様々な規制に真摯に対応することで、ビジネスを持続的に成長させています。単にルールを守るだけでなく、より良い社会の実現に貢献しようという姿勢が、ユニクロの成功を支えていると言えるでしょう。

さらに、ユニクロのウェブサイトでは、サステナビリティに関する情報や、各地域での取り組みなどが詳しく紹介されていますので、興味があればご覧ください。
ユニクロとSDGs | 服のチカラを、社会のチカラに。 UNIQLO Sustainability
マクドナルドの規制への対応と工夫
次にご紹介するのは「マクドナルド」です。
マクドナルドは、世界中でビジネスを展開しているため、各国の食品安全、労働、環境など、非常に多くの規制に対応する必要があります。それらの規制に対応しながら利益を上げているのは、とてもコストのかかる大変なことです。
マクドナルドが工夫していポイントを、3つに分けて見ていきましょう。
1. グローバルな基準とローカルな対応の組み合わせ
マクドナルドでは、「安全・品質・衛生」に関する世界共通の独自のグローバル基準を設けており、この厳格な基準をクリアしない商品・サービス・店舗・オペレーションは世に出ることを一切許されません。
独自の基準と言っても、各国の法を守るだけではなく、最新の専門家の知見を反映させた、最高水準の基準を独自に構成しています。
また、宗教上の理由で牛肉を食べない人が多い国では、チキンやベジタリアン向けのメニューを充実させたり、地域によっては朝食メニューを充実させたり、ある地域にしかないドリンクメニューなどがあります。
ちなみに、日本独自のメニューとして、照り焼きマックバーガー、グラコロ、えびフィレオがありお客様の満足度を高めています。
このように、グローバル基準で品質を保ちながら、ローカルなニーズに合わせてメニューに変化をつけて、各国の人々に受け入れられやすくなり、ビジネスチャンスを広げています。

2. サプライヤーとの強固なパートナーシップ
さらにマクドナルドは、食材の供給元であるサプライヤーと長期的なパートナーシップを築いています。サプライヤーに対して、マクドナルドの基準を満たすように協力を求め、品質管理や安全性の確保に努めています。
サプライヤーと良い信頼関係を結ぶことで、高品質な食材を安定的に確保し、コストを抑えることができます。
また、サプライヤーの技術やノウハウを活用することで、より良い商品開発にもつながっています。
3. 持続可能性への取り組み
そして最近では、環境問題や社会問題への関心が高まっていて、消費者は企業にこのような問題を積極的に解決してほしいと思っています。そのためマクドナルドでも、環境保護や社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。
これらの持続可能性への取り組みは、企業のイメージアップにつながり、消費者からの支持を得やすくなります。
また、長期的な視点で見れば、資源の有効活用やコスト削減にもつながります。
これらの工夫によって、マクドナルドは多くの規制に対応しながら、世界中でビジネスを展開し、利益を上げているのです。
マクドナルドの成功は、単にハンバーガーを売るだけでなく、グローバルな視点とローカルな対応、サプライヤーとの連携、持続可能性への取り組みなど、様々な要素が組み合わさって成り立っていると言えるでしょう。
参考資料として、マクドナルドの公式ウェブサイトやサステナビリティレポートへのリンクをあげておきます。
より詳しい情報にご興味があれば、ぜひご覧ください。
マクドナルド公式サイト | マクドナルド公式
サステナビリティ | マクドナルド公式
まとめ
企業が活動をするときに守るべき「規制」について解説しました。
規制には企業活動そのものにかけられているもの、私たち消費者を守るためのもの、環境を守るための法、働いている人の福祉のためのもの、そして個人情報保護のためのものがありました。
企業の経済活動には、多くの複雑なルールが掛けられているので、ちいさな企業は法を理解する専門的な知識を持つ人を雇ったり、環境を整備したりすることが大きな負担になります。
そのため「規制」は、新たに事業に参入する業者にとって不利になり、利益率の高い大企業が有利になることがあります。
しかし、法は時によって見直され、緩和されます。
また、新しい技術が現れることによって、古い価値観のまま事業を続けるのが不利になることもあります。
ユニクロは、世界中に店舗を持っていますが、ルールの厳しい国では環境に配慮したり、リサイクル活動に力をいれています。また宗教上の配慮もして、その地域に受け入れやすくして利益を上げています。
また、多くの法律を守るための社内ルールを設け、従業員への教育も行っています。法令遵守を徹底することで、罰則や訴訟などのリスクを回避し、安定した企業活動を維持しています。
マクドナルドは、既存のルールにさらに専門家の最新知見を加えた独自の世界基準をつくっています。特定の地域に合わせてベジタリアンメニューやチキンメニューを提供してお客様の満足度を上げ利益に結びつけています。
また、サプライヤーにも厳しい基準を設けています。
これらの活動には短期的にはコストが掛かりますが、企業のイメージアップにつながり、消費者からの支持を得やすくなりますし、長期的な視点で見れば、資源の有効活用やコスト削減にもつながります。
ユニクロもマクドナルドも「規制」に対して、企業として、従業員にも、サプライヤーにも積極的に向かいあっていることが分かります。
またどちらも、独自の厳しいルールを決めて、さらに各地域のルールを取り入れることで、それぞれの地域の人に受け入れやすい環境を整えています。
さらに、社会的な問題になっている環境問題や人権問題にも取り組み、企業イメージを高め、お客様の満足度を高めているのです。
「規制」を守ることはコストが掛かり、誰もが面倒に感じるものです。
けれど「規制」に、積極的に向き合って、それを乗り越えていくことこそ、多くの人に受け入れられ事業を大きくし利益を上げられるチャンスがあります。
あなたもルールにぶつかったときには、ちょっとユニクロやマクドナルドのことを考えてみてください。
きっと道が開けるでしょう!
参考文献
経済学入門 ティモシー・テイラー