皆さん海藻は食べますか?
海藻にはワカメや昆布、ヒジキ、メカブ、ノリの佃煮などおいしいものがたくさんあります。
これらは味が良いので養殖され、加工され、スーパーに並ぶ、海藻のスターたちです。
実は海に生える海藻はここに挙げた有名なもの以外にもたくさんあります。
今回ご紹介したいのは「アミジグサ」です。
名前に「クサ」とついていて陸上の草っぽさが出ていますが、海に生きる海藻です。
アミジグサは体の中に「酸」を蓄えていて、ウニや魚などから食べられないように防御しています。最近では、海藻の持つ化学物質が研究され、今後このアミジグサから何か新しい発見があるかもしれません。
そんな、まだまだ謎の多い海藻「アミジグサ」の世界を一足先にちょっと覗いてみましょう。
アミジグサ
褐藻綱
アミジグサ目
アミジグサ科
アミジグサ属
アミジグサの生態と特徴
アミジグサは柔らかで、平らな紐のような葉を持っています。紐のような葉は所々で又状に分かれ、扇状に広がり効率的に日光を浴びて光合成できるようになっています。
葉は先端は丸く、わずかに凹みます。高さは15cm前後、幅は1cm前後です。
若いアミジグサは体に「フィコビリン」を多く含んでいます。
フィコビリンは、海藻や一部の細菌が光合成に利用するタンパク質です。
フィコビリンは、青色光とオレンジ色光の吸収に特化していて、光合成効率を高める役割を担っています。このフィコビリンが、若いアミジグサを青白い蛍光色に輝かせます。
若いアミジグサにはこのフィコビリンを多く持っていて、3月などの新芽の季節は青白く光るアミジグサを見ることが出来ます。
葉の色は成長するごとに青白さは消え、黄褐色から明褐色になります。死後は黄緑色に変色して酸を分泌します。
アミジグサは、日本全国の潮間帯から潮下帯にかけて広く分布しています。波の静かなタイドプールでよく見られます。
アミジグサの生殖器官は海藻の表面にあります。
この生殖器官の模様が光に透けて網目模様に見えることから「アミジグサ」という名前が付いたと言われています。でも実際見るとはっきりとした網目模様になっていなくて、まだらな模様がついている感じです。
無性生殖と有性生殖の両方の方法で繁殖します。
無性生殖では、体の先端から遊離胞子を形成し、これが海水中を漂って発芽し、新しい個体を形成します。
有性生殖では、雄性配偶体と雌性配偶体がそれぞれ卵子と精子を形成し、受精して接合子を形成します。接合子は海底に付着して発芽し、新しい個体を形成します。
アミジグサのもつ化学物質
アミジグサは体の中に酸性の物質をもっています。その主なものを2つご紹介します。
- フコイダン
フコイダンは、褐藻に含まれる硫酸多糖類の一種です。
アミジグサのフコイダンは、抗菌、抗炎症、抗腫瘍、抗ウイルスなどの生物活性を持つことが知られ研究が進んでいます。
フコイダンは強酸性であり、摂取すると胃腸障害を引き起こす可能性があるので注意が必要です。 - アルギン酸
アルギン酸は、海藻に含まれる多糖類の一種です。食品添加物や医薬品として広く利用されています。しかし、アルギン酸も強酸性であり、摂取すると胃腸障害を引き起こす可能性があります。
これらの強酸性物質は、アミジグサを乾燥させると濃縮されます。そのため、乾燥させたアミジグサをそのまま摂取すると、強酸性物質の過剰摂取による健康被害が起こる可能性があるので海から取ってきたアミジグサを口に入れるのは十分注意してください。
アミジグサの強酸性物質に関する研究
アミジグサの強酸性物質に関する研究は、近年活発に行われています。これらの研究によって、アミジグサの強酸性物質が健康に与える影響について、より多くのことが明らかになりつつあります。
- フコイダンは、抗がん作用を持つことが知られています。
- アルギン酸は、胃腸の調子を整える効果があることが知られています。
- アミジグサの強酸性物質は、抗菌作用を持つことが知られています。
まだ実験の段階なので私たちが利用できる段階ではありませんが、アミジグサの強酸性物質は、健康に有益な効果を持つ可能性があるので研究は今後も続いていくでしょう。
今後の研究結果が楽しみです。
参考文献
ネイチャーウォッチングガイドブック 海藻 誠文堂新光社
フコイダン - Wikipedia
アルギン酸 - Wikipedia
JP4347950B2 - 高純度フコイダンおよびその製造方法 - Google Patents
17K07473 研究成果報告書 (nii.ac.jp)