海には海藻がたくさん生えています。
小さい枝がたくさんついているもの、ヘラのようなもの、鶏のとさかのようなもの、ピンク色のもの、緑色のものなどたくさん生えています。その中でも美しいと思う海藻があります。それはカギイバラノリです。
カギイバラノリは七色に光ります。
よく見たいな、と思って七色の海藻を手に取って海から引き上げると、不思議なことに、その色が全くなくなってしまいます。
なんだか竜宮城のおとぎ話の中に迷い込んだような、そんな感じです。
今回は陸上の植物とはまたちょっと違う海藻のお話です。
カギイバラノリ
紅藻植物門
スギノリ目
イバラノリ科
カギイバラノリの特徴
日本の太平洋側、また四国、九州などの温暖な日本海側に生息しています。
潮間帯から浅海、特に、八丈島や伊豆諸島などの南方諸島では、特によく見られます。
カギイバラノリは、12月ごろから3月にかけて成長し、5月ごろ大きくなって、7月から8月に成熟し胞子をつくり、暑さに強い配偶体になって早春まで過ごします。
カギイバラノリの体は、細い円柱形で不規則に羽状分枝しています。枝の先端がかぎ状になっていて、ホンダワラなどの海藻にしがみつくことができます。枝の先がちょっとくびれているのが大きな特徴です。海の中ではゆるく丸まったひも状になって生活しています。
カギイバラノリの構造色
海の中にあるカギイバラノリは七色に光ってそれは美しいのですが、その理由はまだはっきりと分かってはいません。光る原因は構造色と言われていますが、完全には解明されていません。いくつかの説はありますが、どれも決定的なものではありません。
主な説
- 構造干渉
カギイバラノリの細胞壁は、光を反射する微細な構造を持っています。これらの構造が光を干渉させ、虹色に輝く効果を生み出すと考えられています。 - 色素
カギイバラノリには、クロロフィルやカロテノイドなどの色素が含まれています。これらの色素が光を吸収し、反射することで虹色に輝く効果を生み出すとも考えられています。 - 光の角度
カギイバラノリを見る角度によって、光の反射の仕方が異なり、虹色に見えるともいわれています。
近年、カギイバラノリの虹色現象に関する研究が進められています。電子顕微鏡などの技術を用いて、細胞壁の構造を詳細に分析したり、色素の種類や分布を調べたりしています。これらの研究により、カギイバラノリの虹色現象のメカニズムが徐々に解明されつつあります。
カギイバラノリの虹色現象は、光学や生物学の研究において興味深い題材となっています。今後の研究により、この現象のメカニズムがさらに詳しく解明されることが期待されています。
八丈島の郷土料理「ぶど」
カギイバラノリは、食用として利用されています。
特に八丈島ではカギイバラノリを煮溶かして固めた料理「ぶど」として有名です。季節になると「ぶど」は八丈島のスーパーにも売られるほど島民の味として親しまれています。
その気になるお味は磯臭く、初めて食べるには抵抗のある人が多いようです、でも食べているとなんとなく癖になり、また食べたくなる味とか。海風おねえさん🌏 (@umikaze8jo) / X (twitter.com)
「ぶど」には、食物繊維やミネラルが豊富に含まれています。特に、カルシウムや鉄分が豊富で、骨や歯の健康維持、貧血予防に効果があるとされています。
「ぶど」のその独特な風味とその食感が評価され、全国的に人気が高まっています。
しかし、天然のカギイバラノリは天候や海況に左右され、安定供給が難しいという課題がありました。そこで八丈島などでカギイバラノリの陸上養殖の研究が行われています。陸上での養殖技術が開発されれば天候や海況に左右されずに、安定的にカギイバラノリを生産することができます。
ぜひ、八丈島に行ったら「ぶど」を試してみてください。
参考文献
カギイバラノリ Hypnea japonica (tonysharks.com)
カギイバラノリ養殖における生産性向上技術開発(より効果的、安定的な生産技術の開発を目指して) - 東京都島しょ農林水産総合センター (tokyo.lg.jp)
ぶど - Wikipedia
八丈島沿岸におけるカギイバラノリ Hypnea japonica(スギノリ目,紅藻)の季節的消長と成熟 (jst.go.jp)
光る藻類 2/2/川井浩史 | 海苔百景 リレーエッセイ | 一般財団法人 海苔増殖振興会 (nori.or.jp)