あなたは海で貝殻を拾ったことはありますか?
多くの人が海岸で貝殻を拾ったご経験があるのではないでしょうか?
つやつやとした指先サイズの貝殻は見つけたら拾わずにいるのは難しいものです。
ここでは、そんな貝殻をもつ動物の「ベッコウガサ」をご紹介します。
ちょっと聞きなれない貝ですが、関東地方の海岸に普通で見られます。
ぜひ、探してべっこう色を楽しんでくださいね!
ベッコウガサの生活

上の写真に2枚のベッコウガサがくっついているのが分かりますか?
下の貝は横向きから撮られていて、上の貝は上から撮られています。
岩のぼこぼこしたくぼみにくっついているためこのような映りになっています。
ベッコウガサは夜行性です。
昼間は岩の上に平たい体をくっつけて休み、夜になると岩のまわりに生えている海藻を食べに出かけます。
岩にくっついている部分が足で、その足を使って食べ物を探しにでかけます。
この貝の仲間の足は非常に強く岩にびっしり貼りついているので、大人でも岩から剥がすのは難しいです。
ベッコウガサの殻は、とても固いので波に当たっても壊れにく、よく海岸に打ち上げられています。
ベッコウガサの貝を拾えたら、ぜひ裏返してみてください。
その貝内側がべっこう色に透けてとてもきれいなのが分かります。
ベッコウガサの殻をには、白とこげ茶色の縞々模様がついています。
写真を見ると、殻の中心部分が丸く灰色っぽくなっているのが分かるかと思います。
これは、波に当たりやすい頂上部分が洗われて、丸く薄くなってしまったものです。
この殻の薄くなったところを裏から見るとべっこう色に輝いています。
ベッコウガサは、海岸に行くと見やすい位置にくっついているので探しやすいです。
ぜひ探してみてくださいね!
べっこうがさの特徴
ベッコウガサは、日本を含む東アジア地域の沿岸に生息するカサガイ科の巻貝の一種です。
外見
形は丸い楕円形で4センチ前後。
中央から少し後ろの偏ったところが一番高くなっています。
殻の表面には頂上から放射状に黒い筋があり、でこぼこした筋があります。
このでこぼこのせいで殻が固いので、よく波打ち際に転がっています。
生息地
- 分布:日本の沿岸、韓国、中国などの東アジアの浅海域に広く分布しています。
- 環境:潮間帯の岩礁や海藻の多い場所に生息し、波の影響を受けやすい環境に適応しています。
生態
- 食性:主に藻類を食べます。岩の表面に付着した微小な藻類を削り取るようにして摂食します。
- 繁殖:春から夏にかけて繁殖期を迎え、卵を海中に放出して外部受精を行います。

なぜベッコウガサの内側がべっこう色になっているの?
ベッコウガサの内側にはべっこう色になっている部分があります。
これは、鼈甲(タイマイというウミガメの甲羅)の色に似ていることに由来します。
では、なぜこのような色が貝の内側についているのでしょうか?
内側についていてはほとんど役に立たないように思います。
実ははっきりとした理由はよくわかっていないのですが、いくつかの可能性は考えることができます。
1. カモフラージュ(保護色)
べっこう色は、殻の内側にあるので、普段は岩に密着していて見えませんが、長年の生活で波に当たって表面がはがれてしまいます。その際に、内側のべっこう色が少し透けて、周囲の環境に溶け込むような色合いになります。
これが、捕食者からの視覚的な発見を遅らせる効果がある可能性があります。
2. 体温調節
潮間帯は、日中は強い日差しにさらされ、夜間は気温が大きく下がるという、温度変化の激しい環境です。一番日にさらされる殻の先に色を付けておくことで、太陽光の吸収や反射に影響を与え、体温調節に役立つ可能性があります。
3. 殻の強化
べっこう色を構成する色素や微細な構造が、殻の強度に寄与している可能性も考えられますが、これについてはさらなる研究が必要です。
4. 偶然の産物
- 生物の色や模様は、必ずしも特定の目的を持っているとは限りません。遺伝的な要因や、成長過程での環境要因などによって、偶然に生じたものが、結果的に環境に適応している場合もあります。
- べっこう色も、進化の過程で偶然生じたものが、上記のような何らかの利点をもたらし、結果的に維持されてきた可能性も考えられます。
ベッコウガサのべっこう色が何のためにあるのか、明確な答えはまだ分かっていません。上記で挙げたように、カモフラージュ、体温調節、殻の強化、偶然の産物など、様々な可能性が考えられます。
今後の研究によって、べっこう色の役割がより詳しく解明されることが期待されます。

ベッコウガサの観察のポイント
ベッコウガサは比較的見つけやすい貝なので、以下のポイントを押さえれば観察を楽しめます!
生息場所を探す
- 潮間帯の岩場
ベッコウガサは潮が満ち引きする潮間帯の岩場に生息しています。
特に、満潮時には水に浸かり、干潮時には露出するような場所を探しましょう。 - 岩の表面や岩陰
ベッコウガサは岩の表面に張り付いていることが多いですが、乾燥を避けるために岩陰や割れ目などに潜んでいることもあります。 - 他のカサガイ類と一緒にいることが多い
マツバガイなど、他のカサガイ類と混在していることが多いので、他のカサガイを見つけたら、その周辺も注意深く探してみましょう。
観察の際の注意点
- 足元に注意
磯場は岩がゴツゴツしていて滑りやすいので、足元に注意して安全に観察しましょう。
特に、濡れている岩は滑りやすいので注意が必要です。 - 波に注意
潮間帯は波の影響を受けやすい場所です。
急な高波にさらわれる危険性もあるので、波の状況をよく見て、安全な場所で観察しましょう。 - 生き物を傷つけない
ベッコウガサを観察する際は、無理に剥がしたり、傷つけたりしないように注意しましょう。 - 持ち帰らない
ベッコウガサは自然の生き物です。持ち帰らずに、その場で観察を楽しみましょう。
ベッコウガサの見分け方
- 笠型の殻
ベッコウガサは他のカサガイ類と同様に、笠型の殻を持っています。 - 殻の高さと模様
ヨメガカサなど他のカサガイと比べると、殻が高く、表面の放射肋が強いのが特徴です。また、殻には暗褐色の斑模様があります。 - 殻の内側の色
殻の内側は、名前の由来にもなっているように、鼈甲(べっこう)のような模様と色合いをしています。しかし、生きている状態では岩に張り付いているため、この模様を見るのは難しいです。 - 大きさ
成体の殻長は約4cm程度です。

観察をより楽しむために
- ルーペや虫眼鏡
ルーペや虫眼鏡を使うと、殻の模様や表面の様子をより詳しく観察することができます。 - 図鑑や資料
図鑑やインターネットの資料などを参考に、他のカサガイ類と見比べてみたり、生態について調べてみたりすると、より深く観察を楽しむことができます。 - 写真撮影
写真を撮っておくと、後でゆっくりと観察したり、記録として残したりすることができます。 - 干潮時がおすすめ
干潮時はベッコウガサが観察しやすくなります。潮見表などで干潮の時間を確認してから出かけると良いでしょう。
これらの情報を参考に、安全に注意してベッコウガサの観察を楽しんでください!
ぜひ、宝石のようなベッコウガサのきれいな貝殻を見つけてみてくださいね!
参考文献
日本動物大百科 平凡社
磯の生き物図鑑 トンボ出版
ベッコウガサ - Wikipedia
ベッコウガサ | 新潟大学佐渡自然共生科学センター臨海実験所