私たち生き物は海から生まれました。
長い長い時間、海で過ごしてきたので、海にはたくさんの生き物が今も暮らしています。
そんな海の生き物の生活や体つきを知ることは、私たちに勇気を与えてくれます。
今回は「ケヤリムシ」をご紹介します。
ケヤリムシは岩にくっついて生きている海の生き物です。名前には「虫」と付きますが「昆虫」ではありません。釣りの餌として有名なゴカイやイソメの仲間です。
ケヤリムシきれいなピンク色のポンポンをもっています。ポンポンはとてもきれいなので、ちょっと触ってみようと指を伸ばすと、あっという間にさやのような住みかに収納してしまいます。ケヤリムシは、しばらくして危険がないことを知るとまたゆっくりとポンポンを伸ばし始めます。
暗い岩の陰でケヤリムシを見つけると、そこだけちょっと南国みたいに華やかになります。
ケヤリムシ
動物界
環形動物門
多毛綱
ケヤリムシ目
ケヤリムシの特徴と生態
ケヤリムシは本州の中部より南側の海岸に生息しています。体長は10~15センチほどで、岩に「棲管」と呼ばれるホースのようなものの中に住んでいます。
静かで危険のないときには、棲管から長さ10センチくらいの白い軸が、60本くらい出て丸く広がっています。
水の中に細長いものが輪状おかれると、その間を通る海水はゆっくりになり、流れが乱れて軸のまわりを循環するようになります。ケヤリムシは、こうした自然な海水の流れを利用して食べ物や呼吸をしています。
また水流に乗ってキャッチした砂粒は、棲管の材料になります。ケヤリムシは砂粒をつかまえたら、口の下にある袋に蓄えて、粘液と一緒にこねて細いひもにして、棲管のふちに貼りつけ自分の住みかの増築をします。
ちなみに、名前についている「ケヤリ」とは「毛槍」のことです。
「毛槍」とは、大名行列の時に使われる長い棒の先に白や赤い毛をつけた槍のことです。
くるくる回すと上についた毛がぱあっと広がります。各地で行われる大名行列では「毛槍」を上下上下に振るだけでなく、投げてそれを受ける、受け渡しする演技が行われることもあり、大名行列の花形になっています。
参考文献
無脊椎動物学 朝倉書店
磯の行きも図鑑 トンボ社
日本動物大百科 平凡社