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ひじきのひみつ

ひじきのひみつ

皆さんはひじきはご存じですよね?
あの、よくある黒いお惣菜です。
実は、あの黒くて細長いひじきは海藻です。

一般的にスーパーなどで販売されているひじきは、収穫後、何度もゆでこまれて乾燥させたものです。そのため、生のひじきと乾燥したひじきはその姿、形が全く違います。
生のひじきを生みで初めて見た人は「これがひじき? 信じられない」と、たいていビックリします。

ここでは、ひじきのの驚きの姿と、その体に含まれる栄養についてとことん解説します!

ひじき

和食の定番「ひじきの煮物」はみなさんご存じかと思います。
ひじきは黒い小さな海藻として売られていますが、海で生きている状態は黒ではなくて薄い茶色をしています。

こちらが海の生きているひじきの姿です。
左側に移っている白っぽいのは、ゴム手袋をした手と指です。
指と比べていただくと、その緑の一本一本が乾燥ひじきと比べると、ずいぶん長いのが分かるかと思います。
そして、その先がなんとなく膨らんで、丸くなっています。

このひじきは芽吹いたばかりの小さなひじきです。
大きくなると、このひじきの葉をたくさんつけた、長いひも状になり岩を覆います。

まだ若いヒジキ これから大きくなる

ひじきの特徴

ヒジキは、主に潮間帯と呼ばれる、満潮線と干潮線の間に位置する岩礁地帯で育ちます。

この場所は、海水の満ち引きによって一日数回、海中に浸かったり、空気に晒されたりします。
ヒジキは、このような厳しい環境に適応し、岩の表面にしっかりと根を張り、潮の流れの強い場所でも生育することができます。

ヒジキの生育に適した環境

  • 岩礁
    ひじきは、岩の表面に付着して生育するため、岩が多い海岸で育ちます。
  • 潮間帯
    満潮線と干潮線の間に位置する場所であり、海水の満ち引きによって、日光に当たる時間と海中に浸かる時間が繰り返される厳しい環境で育ちます。
  • 水温
    冷水から温水まで、幅広い水温に適応できますが、一般的にはやや冷涼な海域でよく生育します。

ヒジキの分布

ヒジキは、日本をはじめ、韓国、中国、ロシアなど、北太平洋の沿岸地域に広く分布しています。日本国内では、北海道から九州までの各地の海岸で見ることができます。

なぜ岩礁で育つの?

  • 栄養源
    岩礁には、ヒジキの生育に必要な栄養塩が豊富に含まれています。
  • 安定した場所
    岩にしっかりと根を張ることで、波や潮の流れに耐えることができます。
  • 光合成
    潮が引いたときに、日光を浴びて光合成を行うことができます。

ヒジキは、潮間帯の岩礁という厳しい環境に適応し、その特徴的な姿で私たちを楽しませてくれる海藻です。スーパーで販売されている乾燥したヒジキとは異なる、海中で生き生きと生えているヒジキの姿を想像してみてください。

ひじきと褐藻

ひじきは「褐藻かっそう」という種類の海藻に属しています。
褐藻という名前は、その特徴的なオリーブ色というか薄い茶色、褐色の色合いから名付けられました。
ちなみに、ワカメや昆布も褐藻の仲間です。

褐藻の特徴

  • フコキサンチンという色素を含むため、褐色や黄褐色をしています。
  • 生息場所:ほとんどが海産で、世界中の海に広く分布しています。
  • 形態:単細胞のものから、昆布のように大きなものまで、その形態は多様です。
  • 成分:ヨウ素、アルギン酸、フコイダンなど、人間にとって有用な成分を多く含んでいます。
  • 利用:食用(ワカメ、昆布、ひじきなど)、医薬品、工業原料など、様々な分野で利用されています。

褐藻の役割

  • 生態系
    海中の一次生産者として、多くの海洋生物の餌となり、生態系を支えています。
  • 環境
    海水の浄化作用や、二酸化炭素の固定など、環境にも良い影響を与えています。

海藻は海の草として、光合成をおこなってグルコースを体に蓄え、多くの生き物を養っています。

ひじきの栄養

海藻は多くの生き物を養うことができますが、そのなかでもひじきは、褐藻類の中でも特に栄養価が高く、私たちも古くからその栄養分をひじきから得ています。

ひじきにはどのような栄養素が豊富なのか見ていきましょう。

  • カルシウム
    牛乳の約12倍ものカルシウムが含まれており、骨や歯を丈夫にするために欠かせない栄養素です。
  • 食物繊維
    ごぼうの約7倍もの食物繊維が豊富で、腸内環境を整え、便秘解消や生活習慣病予防に役立ちます。
  • 鉄分
    鉄分も豊富で、貧血予防に効果的です。
  • マグネシウム
    骨の健康維持や血圧低下に役立ちます。
  • ヨウ素
    100gあたり1.6mg(厚生労働省の推奨量の1.2倍以上)含まれています。
    甲状腺ホルモンの材料となり、代謝を活発にする働きがあります。
  • ビタミン類
    ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2などが含まれており、皮膚や粘膜の健康維持、エネルギー産生をサポートします。

ひじきには、このようにたくさんの栄養がぎゅっと詰まっています。

これらの栄養素に加え、ひじきは低カロリーでありながら、必須アミノ酸もバランス良く含んでいるため、健康的な食事にぴったりです。

ひじきの栄養が体に良い理由

ひじきに含まれる栄養素たちは、どんな働きをしてくれるのでしょうか?

  • 骨を強くする
    カルシウムとマグネシウムが豊富なので、骨粗鬆症予防に効果が期待できます。
  • 腸内環境を整える
    食物繊維が腸内善玉菌のエサとなり、腸内環境を整えます。
  • 貧血予防
    鉄分が豊富なので、貧血予防に効果的です。
  • 美肌効果
    ビタミンAが皮膚の健康維持をサポートし、美肌効果が期待できます。
  • 生活習慣病予防
    食物繊維が血糖値やコレステロール値の上昇を抑え、生活習慣病予防に役立ちます。

ひじきの栄養を効率よく摂るには

  • 水戻し
    ひじきは乾燥しているため、調理前に水に戻す必要があります。水戻しすることで、栄養素が溶け出しやすくなるので、煮汁も一緒にいただくのがおすすめです。
  • 茹でこぼし
    ひじきには、無機ヒ素という成分が含まれている場合がありますが、水戻しや茹でこぼしをすることで、この成分を減らすことができます。
  • 色々な料理に活用
    ひじきは、煮物、炒め物、和え物など、様々な料理に活用できます。飽きずに美味しく食べ続けられるように、色々なレシピを試してみましょう。

このようにひじきには体に良い栄養がたくさん含まれています。
皆さんもひじきを毎日の食卓にもっと取り入れてみませんか?

注意点

  • 過剰摂取
    どんな栄養素も過剰摂取は体に良くありません。ひじきも適量を心がけましょう。
  • 無機ヒ素
    無機ヒ素は、大量に摂取すると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。水戻しや茹でこぼしをすることで、この成分を減らすことができます。

ひじきはまだ寒い2月ごろから海から生え始めます。
ひじきが好むのは波が当たる岩場です。

波に含まれる養分を効率的に体に取り入れることができ、他の海藻との競争も少ない場所で、ひじきは大きく育ちます。
また、荒い波から身を守るため、その体をこん棒のように丸みを帯びた棒上にしています。これなら体が鋭い岩にこすれたとしても体が傷つきにくいはずです。

このような厳しい環境に育つ、身近な食材のヒジキの海の姿を知ることは、単に知識を広げるだけでなく、海への理解を深め、食に対する感謝の気持ちを育むことにつながります。

栄養満点で、美容と健康に良い食材のひじきを、ぜひ毎日の食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。

ひじきの小枝

参考文献

ネイチャーウォッチングガイドブック 海藻
ヒジキ - Wikipedia

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