となりの生き物

小さな漏斗が愛らしい ヒメジョウゴゴケ

ヒメジョウゴゴケ

歩道沿いに並ぶ植木の根元に何かが生えています。
コケのような・・・でもコケよりちょっと固そうに見える生き物です。

近寄って良く見ると盃のような、ジョウゴのような形をしている小さなものが見えます。
こちらが今回の主役ヒメジョウゴゴケです。

名前に「コケ」と入っていますが、コケではなくて「地衣類」という生き物の仲間です。

ヒメジョウゴゴケ

菌界
子嚢菌門しのうきんもん
チャシブゴケ綱
チャシブゴケ目
ハナゴケ科
ハナゴケ属

地衣類とは?

地衣類は、菌類と藻類そうるいが共生してできる特殊な生物です。
菌類は藻類が光合成をしてつくる栄養を利用しています。藻類は菌類に食事を提供する代わりに住む場所を提供してもらっています。

ほとんどの藻類は、乾燥に弱いので水の中に住んでいます。藻類は菌と一緒に住むことで地上にも生息域を広げることができました。
菌と藻が共生し合うことでお互いにメリットがある生き方、地衣類とはそんな生き方をする生き物のひとつです。

ちなみに藻類とは、ワカメや昆布などの海藻やミドリムシ、クロレラ、スピルリナ、ノストックなどのことです。

地衣類は世界に約3万種存在すると推定されています。
日本ではその中の約1800種が観察できます。

地衣類は極地から熱帯、海岸から高山まで分布していて、石や土、木の皮、コンクリートなどの人工物に付着して生活することが出来ます。暮らす場所を選ばない強さが地衣類の生息域の拡大させ、地球の陸地を約6%覆っていると見積もられています。

菌類は藻類と共生することで乾燥した場所でも生きられるようになりました。

地衣類の特徴

  • 菌類と藻類の共生している
  • 光合成で栄養を生産できる
  • 岩や樹皮など様々な場所に生息
  • 大気汚染の影響を受けやすい
  • 環境指標生物として利用できる

ヒメジョウゴゴケの特徴

  • 地上や樹皮、朽木などに生える
  • 高さ0.5~2cm、直径2~6mmの漏斗状
  • 子柄の先端に粉芽をつける
  • 鱗片状の基本葉体を持つ
  • 日本全国に分布

ヒメジョウゴケの生態

ヒメジョウゴゴケは、体の中に住む藻類の光合成によってつくられた栄養を食べて生きています。ラッパのようなところは「盃」と呼ばれ、長い柄は「子柄」と呼ばれています。盃の先に胞子をつくる場所がつくられます。

日当たりの良い場所を好み、乾燥にも強い地衣類です。

ヒメジョウゴケの観察

ヒメジョウゴゴケは、公園や林道など、比較的容易に見つけることができます。観察する際は、以下の点に注意しましょう。

  • ルーペや顕微鏡を用いて、子柄や鱗片状の基本葉を観察してみましょう。小さくても複雑なつくりにきっと驚きます。
  • 生育環境を観察してみましょう。どんなところに生えていましたか?
  • 他種の地衣類と比較する。近くには他の地衣類があるかもしれません、探してみましょう。

まとめ

ヒメジョウゴケは、形態がユニークで観察しやすい地衣類です。ヒメジョウゴケを通して、地衣類の多様性や生態系における役割について学ぶことができます。

参考文献

街中の地衣類 ハンドブック 大村嘉人 文一出版
植物の不思議 ガイ・バーター 北綾子訳 河出書房新社
ハナゴケ - Wikipedia 

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