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国とお金とGDP

国とお金とGDP

GDPの中には政府が使ったお金の一部も計上されています。

GDPとは、国内で生産された「付加価値の合計」のことですが、政府は何も生産していないのに「付加価値が付いた」といってGDPの計算に含めることに違和感を覚える方もいらっしゃるかと思います。

そこでここではGDPから見た政府の懐具合を整理して、GDPの理解を深めていきましょう。

GDPは一つの国の経済を理解するために、各国で発表されている大切な指数です。
経済の将来を見渡せないと自分の将来の姿を見通すことが出来ません。自分の生活を守り、将来の人生設計のためにもGDPの基本的な知識を持って、一緒に社会のしくみを理解していきましょう。

GDPと政府のお金

GDPは、Gross Domestic Productの略で、日本語では国内総生産と呼んでいます。
GDPは、ある一定期間内に国内で生産された財(モノ)サービス付加価値の合計額です。

国内で生産されたすべての合計なので、その数字はとても大きいです。
しかし反面、数が大きいために、年によって大きく変化することがありません。そのためGDPは細かいより動きをつかむより、その全体的な動きを大きくつかむために利用されています。

まずさっくりとその数字を見ていきましょう。
日本のGDP全体は550兆で、その内訳は60%が個人消費、20%が政府の使ったお金、18%が個人や企業の投資に使ったお金が計上されています。(2023年度)

ここでは政府の使った分のお金に注目していきます。

もともとは私たちの税金である政府の支出はどのように役割を持って使われているのでしょうか?

政府の支出

政府は税金としてお金を集めたり、国債を発行して借金でお金をまかなっています。

ちなみに私たちは健康保険料として大きな金額を毎月納めていますが、これは政府の収入ではなく地方自治体の収入になります。また年金として支払ったお金は厚生労働省の日本年金機構に預けられ、国から切り離されて運用されています。

政府の税金は消費税、所得税、法人税が3大税金で、足りない分は借金(国債)をして予算を確保しています。
[国の財政] 財政のしくみと役割 | 税の学習コーナー|国税庁 (nta.go.jp)

政府が使ったお金はもともとは税金と借金です。
この税金や借金を使うことがなぜGDPに計上されるのか疑問に思います。政府がそれらを使ってもGDPの原則「モノ・サービスの付加価値」が増えた、ということにはならないように思います。

なぜ政府がお金を使うとGDPに含まれるのでしょうか。
その理由は大きく3つあると言われています。

  1. 最終的な需要の構成要素であるため
    GDPは、国内で生産された全ての「財・サービス」の付加価値を合計したものです。
    「財・サービス」とは、消費者に直接販売されるものであり、「財・サービス」を購入した人は、その「財・サービス」をさらに加工したり、他の財・サービスに転用したりせず、そのまま消費したりします。
    国の支払いは(歳出)は、政府が国民に提供する「公共財・サービス」の購入に使われます。

    「公共財・サービス」とは、国防、教育、医療、インフラ整備など、国民の生活を支えるために必要なものですが、民間企業では提供することが困難、または非効率的であるため、政府が提供する必要があります(それが政府の役割でもあります)。

    このように、国の歳出は最終的な需要の構成要素であり、GDPに含まれる必要があると考えられています。
  2. 付加価値を生み出す
    国の支出は、間接的に付加価値を生み出すことがあります。

    例えば、政府が道路や橋などのインフラ整備に投資すれば、それは将来の経済成長につながる可能性があります。
    また、政府が教育や研究開発に投資すれば、それは労働者の生産性を向上させ、経済全体の活性化につながる可能性があります。(つながらない場合もあります)

    一般的には国の支出したものは、長期的に経済成長を促進し、国民の生活水準を向上させる可能性がある、つまり付加価値が付けられる、と考えられています。
  3. 経済活動の指標として有用であるため
    そもそもGDPは、経済活動の規模を測定する指標として広く用いられています。

    GDPは、国内で生産された全ての財・サービスの価値を合計するため、経済全体の活力を示す指標として有用です。
    もし、国の歳出をGDPから除外してしまうと、経済活動の規模が過小評価されてしまう可能性があります。
    なぜなら、国の歳出は、民間部門の活動と同様に、経済活動の重要な構成要素だからです。

    このように、国の歳出は付加価値ではないものの、最終的な需要の構成要素であり、付加価値を生み出す可能性があり、経済活動の指標として有用であるため、GDPに含まれているのです。

    ただし、国の歳出が全て付加価値を生み出すわけではないことに注意する必要があります。

    例えば、政府が非効率的な官僚機構を維持するために歳出を浪費している場合、それは付加価値を生み出すどころか、経済全体の成長を阻害する可能性があります。

    重要なのは、国の歳出がどのように使われているのかということです。
    政府が歳出を効率的に使用し、国民の生活水準を向上させるために投資している場合、それはGDPにプラスの効果をもたらすでしょう。しかし、政府が歳出を浪費している場合、それはGDPにマイナスの効果をもたらします。

国の支出の内訳

もう少し政府の歳出を見ていきましょう。
日本の政府歳出は、大きく分けて以下の項目に分類されます。

  • 社会保障関係費
    日本の歳出の中で最も大きな項目で、全体の約33%を占め約40兆円
  • 防衛関係費
    日本の安全保障環境の変化を踏まえ、近年増加傾向にあります。約8兆円規模
  • 公共事業関係費
    インフラ整備や災害復旧などに用いられます。約7兆円
  • 文教及び科学振興費
    教育や科学技術の振興に用いられます。約5.5兆円
  • 国債費
    過去に発行した国債の利息や償還に充てる費用。約30兆円
    日本の財政赤字が続いているため、近年増加傾向にあります。
  • 地方交付税交付金等
    地方自治体に交付する財政支援として18兆円の経費が掛けられています。

この中のすべてがGDPに計上されているわけではありません。GDPの計算は世界基準として決まってはいますが、実はGDPの政府支出にはどの予算が計上されているのかは発表されていません。これはどの国も同じで秘密にされています。
そのため、GDPを比較するときは、そのままの数字に一喜一憂するのではなく、推移をざっくり眺め参考程度に努めるのが肝心です。
国民経済計算(GDP統計) : 経済社会総合研究所 - 内閣府 (cao.go.jp)

日本のGDPの変化とこれから

日本のこれからの支出はどのように変わっていくのでしょうか?

過去50年間、日本の政府支出はさまざまな要因によって変化してきました。
1960年代から1980年代にかけて、日本は高度成長期を経験し、政府支出は経済発展や社会インフラの整備などに向けられました。

その後、バブル経済の崩壊や少子高齢化の進行などの影響で、1990年代から2000年代初頭にかけて財政赤字が拡大し、政府支出は経済刺激や社会保障制度の充実などに使われます。

2000年代中盤から2010年代にかけては、日本はデフレーションや経済停滞の課題に直面し、政府は景気対策や公共投資などを通じて経済を支援、また、高齢化社会の課題に対処するため、医療・介護などの社会保障制度への投資を増加させます。

現在、日本は少子高齢化が進行し、社会保障費や医療費などの増加が財政を圧迫しています。
これに加えて、新型コロナウイルスのパンデミックが経済に大きな影響を与え、政府は景気対策や医療体制の強化などのために大規模な支出を行っています。

日本はこれから、高齢化社会の進行や新たな課題への対応が求められます。
特に、医療・介護などの社会保障制度の持続可能性や、経済の成長と財政健全化の両立が重要な課題となります。
さらに、環境問題やデジタル化の進展など、新たな社会の変化にも柔軟に対応する必要もあります。

これらの課題に対応するために、効果的な財政政策の実施や制度改革などに対策の重点を置くことが重要になっています。

まとめ

GDPに占める政府の支出について解説しました。
政府の支出とはもともとは税金、国債が原資になったものです。
これを政府が支出として使う場合、需要を満たした付加価値として、また間接的に付加価値を高めたとしてGDPに含めます。

政府支出をGDPに含める一番の理由は、政府自身が自国のGDPを大きく見せたいためです。
経済が豊かであることは政権の安定化に欠かせません。もちろん経済が活気があると認められていれば、他の国からの投資をうけやすく、自国にとって有利な発言も通用しやすくなります。

GDPは国の付加価値の合計のため、数値が大きいので年によっての変化もゆっくり起こります。
またGDPに何を計上するかが国際規格で決まってはいますが、具体的な細かい数値はどの国も公表していません。
そのためGDPを参考にする場合は細かい数値にとらわれず、大まかな流れに注目し経済の大きな流れをつかむことが大切です。

日本の政府支出は戦後インフラ整備などに向けられていましたが、今では医療費や介護費がその主な使い道になっています。これらの削減は人々の反対意見が大きいため難しく、財政の健全化が大きな課題になっています。

これらの対策のために例えば、教育や研究開発への投資は、経済成長を促進する効果があります。
また生産性を上げるためイノベーションを起こす支援も有効です。

重要なのは、政府支出が効率的に使われているかどうかです。
政府は、国民のニーズに合致した支出を行い、無駄を省くことが求められています。

参考文献

経済学入門 ティモシー・テイラー
令和5年財務関連資料202310_00.pdf (mof.go.jp)
税の学習コーナー|国税庁 (nta.go.jp)
初めての経済学 唐渡 広志Microsoft PowerPoint - economics-2020-04-0525 (u-toyama.ac.jp)
令和元年白書 n2200000.pdf (soumu.go.jp)
国内総生産 - Wikipedia
第8回(最終回) 経済規模ってどういうもの? (kokusen.go.jp)
国土交通政策研究所報2015年春季 56-8.pdf (mlit.go.jp)
財務省財政収支の国際比較006.pdf (mof.go.jp)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング コロナ禍で 2020 年度に大幅に増加した日本の財政支出: https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2022/04/report_220418_01.pdf


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