あなたは、海に浮かぶ「白い羽」はご存じですか?
海の中なのに、白い羽がゆらりゆらりとしているのです。
実はこの羽「シロガヤ」という生き物なんです。
「シロガヤ」が群れになって、ゆらめく姿は、まるで小さな森のようです。
その優雅な姿は多くの人の目を惹きつけますが、実はこの魅力的な生き物には、ちょっとした秘密が隠されているのです。
一体どんな秘密を持っているのか覗いてみましょう!

白い羽を持ったシロガヤ
海岸の岩と岩の間にある潮だまりを覗くと、ときどき羽が岩から突き出ているのが見えることがあります。
これが「シロガヤ」です。
シロガヤは、一見すると海藻のように見えるかもしれません。
けれど、その正体はクラゲやイソギンチャクと同じ、刺胞動物というグループに属する動物です。
シロガヤの特徴
シロガヤは、高さが3cmから20cmほどになる小さな木のような形をしています。
茶色っぽい軸から小枝がまばらに互生し、小枝の両脇からは、5ミリくらいの白い羽が伸びています。
この白い枝ぶりが、まるで白い茅(かや)の穂のように見えることから、「シロガヤ(白茅)」という名前が付けられたと言われています。
海の中なのに、なんだか陸上の生き物に似ているところが、とても面白いですね!

シロガヤは、浅い海の岩場などに生息しています。
潮が引いた後の潮だまりでも見つけることができるほど、私たちの身近な場所に生息しているのです。
日本では本州北部から小笠原諸島にかけての各地で見られ、海外ではオーストラリアにも分布していることが確認されています。京都府の丹後の海では、どこにでも見られると言われています。
このように比較的広範囲に生息しているため、海水浴や磯遊び、ダイビングなどを楽しむ際に、出会うことができます。
美しいものには棘がある
けれど、この美しい姿には隠された一面があります。
図鑑によっては危険な生物として紹介されているほどで「シロガヤ」は毒を持っているのです。
実は「シロガヤ」の小枝には、ヒドロ莢 と呼ばれた0.5ミリくらいの小さな入れ物がたくさん並んでいます。その入れ物の中には、「刺胞(しほう)」という武器が仕込まれています。
「刺胞」という武器は、何か刺激を受けると毒針を発射できる細胞です。
なので、「シロガヤ」の白い羽に触れると、シロガヤは「襲われた!」と感じ、刺胞という毒針から毒液が発射されます。
その攻撃を受けると、私たち人間でも皮膚がかぶれたように腫れて、ひどい痒みを引き起こします。
実際に、潜水調査中にシロガヤに刺されてしまい、一週間ほど痒みに悩まされたという経験を持つ研究者もいます。
また、写真を撮ろうと近づいた際に、知らず知らずのうちに触れて刺されてしまったという人もいます。痛みはあまり感じなくても、数日間痒みが続くことがあるようです。
宮古島の海に生息する危険生物としてもリストアップされており、美しいものには毒があるという教訓を思い起こさせます。
宮古島に生息する海の危険生物15選!子連れシュノーケリングの前に知っておきたい!
シロガヤの生態
シロガヤの成長は、岩の上を這うように伸びるヒドロ根から始まります。
このヒドロ根から、間隔を置いて多数の直立する群体が生じます。
羽状に見える小枝には、透明なコップのような形のヒドロ莢が一列に並んでいて、この中に刺胞を持つポリプが収まっています。ヒドロ莢の口の縁には、一つ大きな歯のような突起と、その両側に一対の小さな歯があり、背面には棘状の突起(中央刺莢)が伸びています。
生殖を行うための構造は、枝の中ほどに作られ、楕円形をしています。この生殖体が付いている枝は変形して籠のような形になり、生殖体を保護しています。
シロガヤを観察するときの注意点
このように美しいシロガヤですが、観察には注意が必要です。
観察のヒントをまとめたので参考にしてください。
- 直接触らないようにしましょう
シロガヤは、美しい見た目とは裏腹に、触ると強い痛みを感じ、水疱ができることがあります。
絶対に触らないようにしましょう。 - 距離を保つ
観察する際は、十分な距離を保ち、むやみに近づかないようにしましょう。 - 子供への注意喚起
子供と一緒に観察する際は、シロガヤに触ると危険であることを、分かりやすく説明してあげましょう。 - 素手で触れた後の処理
万が一、誤って触れてしまった場合は、石鹸でよく洗い、冷水で冷やしましょう。症状がひどい場合は、すぐに医療機関を受診してください。
シロガヤだけでなく、海には様々な危険な生物が生息しています。
海の生き物の観察は手袋や長靴などをはいて、肌を露出させないようにしましょう。
シロガヤは岩についた5センチくらいの小さな美しい羽のような生き物ですが、その枝にはとっても危険な武器を備えた生き物です。その美しさからつい触れてしまいたくなるかもしれませんが、毒を持つことを理解し、適切に接してください。
そうすれば、海の自然を安全に楽しむことができます。
海を訪れる際には、この白い羽根のような生き物のことを思い出して、少し注意してみてくださいね!
参考文献
海の生き物図鑑 トンボ社
日本動物大百科 平凡社
無脊椎動物学 朝倉書店
刺胞 - Wikipedia