前回は「需要」について見てきました。
需要とは、モノの値段とそれが世の中にどのくらい存在しているか、との関係性のことでした。需要は価格が上がると量が下がります。
経済学で「価格」とは、それを欲しい人がどのくらいいて、どのくらいの量あるのか?ということだけを表したものです。たとえ、その人がどんなに大切にしているものであっても、欲しい人がほかにいなければ価値はないと判断するのが経済学の見方です。なんだかドライすぎる感じがしますが、お金のことを考えるときはちょっと感情をわきに置いて考えるとちょうど良いですね。
ではここから「供給」について見ていきましょう。
供給とは
「供給」とは、商品やサービスの量がどのくらい世の中に出回っているのか? その関係性を表す言葉です。供給は価格が上がると量が増え、逆に価格が下がると量が減る、という特徴があります。
これは感覚的にわかりやすいと思います。
例えば以前感染症が広まったときにマスクがなくなり、いつもよりずっと高額で販売されたことがありました。企業は高い値段で売れるとわかれば、それをもっと高い値段で売ろうとするものです。
価格が高くなるとたくさん売ろうとして、モノが多くなるので供給曲線は右上がりになります。マスクの場合は作りたくても材料がなくて供給できなくて、いつもの10倍以上の価格がつきました。

材料が十分あれば、価格が上がると企業がつくる商品の量、つまり供給量が増えます。いったいなぜでしょうか?
これには2つの理由があります。
- 企業が生産を増やす
つくっていたモノの価値が上がれば今まで以上の利益が見込めるので、企業はそれをどんどん作ろうとします。 - 新規参入する企業がでる
あるモノが高い値段で売れるとわかると、今まで違うモノをつくっていた企業もその分野に入ってきます。
儲かると分かればそこで儲けようとする人が出てくるのが市場経済の良いところですね。私たちは多くの商品の中から自分に合った製品を選ぶことができるようになるからです。もちろん私たちを騙そうとする企業も出られるので注意しなければいけませんが・・・。
供給を理解するためのポイント
供給を理解するために大切なポイントとして、「供給」と「供給量」は別に考えられるようにしましょう。「供給」は線、「供給量」は線上の一つの点です。「点と線」です。「供給」はある価格の時に生産量がどのくらいあるのか表す線そのものです。そして線上にある点が、ある特定の時の生産量と価格を表す「供給量」です。
あるモノの価格が上がると供給量が増えますが、供給自身は変化しません。
「供給が増えた」ということは、供給曲線全体の位置がずれることです。どこの価格を取ったとしても、供給量が一定量だけ変化します。それはどんな時に起こるのでしょうか?
- 技術が進歩したとき
新しい技術が生み出されると、企業は以前より早く多くの商品をつくれるようになります。そうするとあらゆる価格で供給量が増えます。 - 自然環境の変化
自然環境の変化はとくに農作物に大きな影響を与えます。天候が良ければ農作物は良く育ち、たくさん並び供給量が増えます。逆に天候が悪化すれば作物の生育が悪くなり価格にかかわらず供給量が下がります。 - 投入物の価格が変化したとき
投入物とは、ある製品をつくるために必要なすべてのモノのことです。例えば原材料や人などのことを指します。
特に原油価格の影響は多くの国が輸入に頼っているので、どの国にとっても影響が大きい商品です。
原油価格が上がると生産量は下がり、あらゆる価格において供給量が下がってしまいます。原油価格が下がれば生産量が上がり、供給量が上がります。
まとめ
今回は供給について解説しました。あるモノの価格が上がるとそれが世の中に増えてきます。なぜかといえば、企業がもっと売ろうとして増産したり、他の企業が新規参入するからでした。
供給そのものが変化することもありました。技術が進歩したり、天候が良くなって豊作になったり、不作になるとモノの量が変化します。また原油の価格が上がると生産量は下がってしまいます。
経済学で「価格」と言ったら、そのものの「価値」は全く考えません。「価格」は欲しい人がどれだけいて、そのくらいの量があるのかだけで決まります。
なんだか身も蓋もないように感じるかもしれませんが、あなたが欲しいあの商品、欲しくても手が届かないあの商品、それが自分の手に入らないのは、自分にお金がないから、そしてそれは自分に価値がないからだ・・・と日頃感じている方もいらっしゃるかもしれません。
でも経済学の考え方を身につければ、見方が変わるかもしれません。
欲しい商品に手が届かないのは、単にほしい人が多いからその値段がついているだけ、と割り切って考えたらどうでしょうか?
多くの人が欲しいからと言って自分にとって価値のあるモノとは限りませんし、それが手に入らないからといて自分が価値のない人間だと思うのは違いますよね。よくよく考えればそんなほしいモノでもないかもしれません。
多くの人が欲しいと思っているモノの値段は上がる、ということは心にとめておけば、いつか役に立つでしょう。
参考文献
経済学入門 ティモシー・テイラー