ぽれぽれ経済学

労働と労働市場

労働と労働市場

今回は「労働」という視点から、経済を考えていきます。

皆さんは「労働」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?
自己実現の手段
お金のため仕方なく
人の喜ぶことをすること
など人によってさまざまな個人的な目的があると思います。

経済学の視点では「労働」は、生産の一つの要素としてとらえます。
そこに個人的な目的は存在しません。

労働を個人的な目線で考えることはとても意味のあることです。
けれど、それだけだと視野が狭くなり、人格や理想論に陥りやすくなります。

労働を個人的な問題として考えるのではなく、労働を社会の一つの枠組みととらえ、自分から離して考えるとまた違った見方ができて視野が広がるでしょう。

ここでは、そんな経済学から見た「労働」について解説し、社会のしくみを俯瞰します。

労働とは

分かり切っていることかもしれませんが、労働とはなんでしょうか?

それは、人間が身体や頭脳を使って、生活に必要なモノやサービスを生み出す活動です。労働でおこなわれた経済活動は経済の重要な要素の一つです。そして労働によって生み出されたモノやサービスは、お金と交換され、経済を潤します。
また、労働は私たちにとって、生きていくための手段であると同時に、自己実現の手段でもあります。自分の能力や知識を活かして、何かを作り上げたり、誰かの役に立ったりすることは、生きがいにもつながります。

このように、労働には経済的な側面と個人的な側面の両面があります。
しかし、経済学では、労働を主に「生産要素」として捉えます。
つまり、財やサービスを生み出すための重要な要素と考えるのです。

労働はモノを生み出すための要素

労働は生産の一つの要素、として考えると「労働」に対する見方が、古い考え方を持つ日本の企業で聞かれるような常識とはずいぶん違うことが分かります。

  • 労働の価値とは
    労働によって生み出される財やサービスの価値が、労働の価値となります。
    つまり、労働の生産性が高ければ高いほど、労働の価値も高くなります。
  • 人件費とは
    企業が労働者に支払う対価です。
    人件費は、企業にとって重要なコストであり、企業は人件費をいかに効率的に使うかを常に考えています。
  • 労働生産性
    1人の労働者が1時間あたり生み出す財やサービスの量です。
    労働生産性が向上すると、企業はより多くの財やサービスを生産できるようになり、経済成長につながります。
  • 労働市場
    労働需要と労働供給が交差する市場です。
    労働需要は、企業が生産活動に必要な労働力に対する需要であり、労働供給は、労働者が労働を提供することです。労働市場における需給関係によって、賃金が決まります。

これらの視点を持つことで、労働を単なる個人的な活動ではなく、経済全体に関わる重要な要素として理解することができます。

労働市場とは

労働が経済全体の要素ということになると、それを取引する場所「労働市場」というものが生まれます。

労働市場は、野菜や魚の取引をする市場とは異なり、具体的な場所や施設が存在するわけではありません。労働市場とは労働力という無形の商品が取引される、抽象的な市場として捉えると分かりやすいです。

具体的には、求職者求人者が、賃金を介して労働条件について調整を行う場すべての場所を指します。つまりハローワークなどの公共職業安定所、民間職業紹介所、インターネット求人情報サイトなど、様々な場所や手段が労働市場になるのです。

「労働市場」では、働きたい人がその能力を「供給」し、その能力が欲しい企業が「需要」となります。そこに「賃金」というお金が受け渡されお金が流れていく場が「労働市場」というわけです。

労働市場は財市場と一緒になって経済を動かす枠組みになっています。

財市場

財(モノやサービス)の需給が一致する場所、つまり、財の売買が行われる市場のこと

財市場と労働市場の違い

財市場と労働市場は、経済における重要な市場であり、それぞれ異なる特性と役割を持っています。
2つはどんな違いがあるのでしょうか?

財市場とは

  • 定義
    財市場は、製品(財)やサービスが取引される市場です。
  • 役割
    生産者(企業)と消費者(個人や他の企業)が製品やサービスの売買を通じて、需要と供給の均衡を図る場です。
    財の価格は、この市場での需要と供給のバランスによって決定されます。

労働市場とは

  • 定義
    労働市場は、労働力(労働)が取引される市場です。
  • 役割
    労働者が労働力を提供し、雇用主が労働力を需要する場です。賃金(給料)は、労働市場での労働の需要と供給のバランスによって決定されます。

取引される対象

財市場が対象とするもの

  • 対象
    商品やサービス。これには、消費財(食料品、衣料品など)から生産財(機械、原材料など)まで含まれます。
  • 価格
    商品やサービスの価格は、需要と供給の関係によって決まります。

労働市場が対象とするもの

  • 対象
    労働力。これは労働者が提供する労働時間やスキルのことです。
  • 価格
    労働力の価格は賃金として表現されます。賃金は労働の需要と供給のバランス、労働者のスキル、経験、教育、地域の労働市場の状況などによって決まります。

市場参加者

財市場の参加者

  • 参加者:主に企業(生産者)と消費者(個人や他の企業)。
  • 生産者:商品やサービスを提供する。
  • 消費者:商品やサービスを購入する。

労働市場の参加者

  • 参加者:主に労働者と雇用主(企業)。
  • 労働者:労働力を提供する。
  • 雇用主:労働力を需要する(雇用する)。

市場の調整メカニズム

財市場のメカニズム

  • 価格調整
    価格が市場の需要と供給に応じて調整され、均衡点で取引が成立します。例えば、需要が増えれば価格が上がり、供給が増えれば価格が下がる。
  • 在庫
    生産者は在庫を調整することで、需要の変動に対応することができます。

労働市場のメカニズム

  • 賃金調整
    賃金は労働市場の需要と供給に応じて調整されます。高需要時には賃金が上昇し、低需要時には賃金が下降する傾向があります。
  • 失業
    労働供給が労働需要を上回る場合、失業が発生します。労働市場は労働供給を即時に調整することが難しいため、失業や労働力不足が生じることがあります。

供給の柔軟性

財市場の場合

  • 生産調整の柔軟性
    企業は生産量を比較的迅速に調整できます。在庫を増減させたり、生産設備を変更したりすることが可能です。
  • 時間軸
    短期間で生産と供給を変化させることができるため、需要の変動に対応しやすい。

労働市場の場合

  • 供給調整の難しさ
    労働者のスキルや教育、地域間の移動の制約などがあり、労働供給を即座に変えることは難しいです。
  • 時間軸
    労働市場は、供給調整が長期的に行われる傾向があります。スキル習得や移住などには時間がかかります。

情報の透明性と非対称性

財市場の場合

  • 情報の透明性
    財市場では、価格や商品情報が比較的透明であり、消費者と生産者は情報を容易に入手できます。
  • 競争
    多くの競争が存在し、情報の非対称性は比較的小さい。

労働市場の場合

  • 情報の非対称性
    労働市場では、労働者のスキルや能力、企業の労働条件などの情報が完全には透明ではなく、情報の非対称性が存在します。
  • マッチングの難しさ
    労働者と雇用主の間での適切なマッチング(求職者と求人の適合)が困難であり、情報の不完全性が影響を及ぼします。

規制の違い

財市場の規制

  • 規制
    商品の安全性や品質、価格の透明性などに関する規制が存在します。
  • 競争政策
    公正な競争を促進するための独占禁止法などが適用されます。

労働市場の規制

  • 規制
    労働法、最低賃金法、労働時間規制、労働条件に関する規制が存在します。
  • 労働保護
    労働者の権利保護を目的とした規制や労働組合の活動があります。

財市場と労働市場は、それぞれ異なる対象を取引するために異なる特性とメカニズムを持っています。

財市場は主に商品やサービスの価格決定と供給調整に焦点を当て、労働市場は労働力の需要と供給のバランスを調整し、賃金の決定に影響を与えます。両者は経済全体の機能を維持するために不可欠な要素ですが、それぞれ異なる動的要因と調整プロセスを持っているのです。

しかし、両者は全く無関係に存在しているわけではありません、お金を通じて両者は結び合っています。

財市場と労働市場に循環するお金

財市場と労働市場は経済を動かす重要な要素です。これらの市場は互いに密接に関係していて、それぞれの動きがもう一方の市場に影響を与え、経済全体に波及していきます。

この2つの要素の間に循環するのは「お金」です。
「お金」は、家計と企業の間をぐるぐる回りながら、財市場と労働市場の潤滑油のように働きます。

それぞれの市場におけるお金の流れをくわしく見てみましょう。

1. 家計から企業へのお金の流れ(赤い線)

  • 労働市場
    家計は、企業に労働を提供することで、賃金という形で収入を得ます。
    このお金は、家計にとっての消費資金となります。
  • 財市場
    家計は、得た収入を使って、企業が生産・販売する財やサービスを購入します。

2. 企業から家計へのお金の流れ(緑の線)

  • 財市場
    企業は、家計から財やサービスの購入代金として売上を得ます。
    この売上は、企業の利益となります。
  • 労働市場
    企業は、家計に雇用を提供することで、人件費を支払います。
    人件費は、家計にとっての労働所得となります。

このように、お金は家計と企業の間を回り、財市場と労働市場を循環することで、経済活動を支えています。それぞれの市場で取引されるお金は、単に場所を変えているだけでなく、新たな取引を生み出し、経済全体に波及効果をもたらします。

例えば、家計が企業の製品を購入することで企業の売上が増えると、企業はさらに多くの労働者を雇用することができます。雇用された家計は、さらに多くの収入を得て、より多くの製品を購入する…という好循環が生まれます。
一方、景気後退時には、家計の消費が低迷したり、企業の投資が控えめになったりすることで、お金の流れが滞り、経済全体が停滞してしまうこともあります。

お金は、財市場と労働市場を繋ぐ重要な役割を担っており、お互いを繋ぐことによって経済活動の活性化に役に立っているのです。

まとめ

労働と労働市場について解説しました。
労働は個人的なものであると同時に社会的なものでもあります。
しかし、経済学では労働は生産の一つの要素として捉えます。
労働の生産性が高いほど価値があるとみなされ、人件費は企業のコストとして考えます。

労働市場とは労働を望む企業側と労働者側のマッチングの場で需要と供給のバランスによって賃金が決められます。労働市場は需要と供給が情勢によって変化したとしても急な変化に対応できないという特徴があります。

財市場と労働市場は、お互いの間をお金を循環させることによって経済を支えています。

参考文献

ティモシー・テイラー 経済学入門

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