ぽれぽれ経済学

仕事は「商品」? 労働経済学がひも解く働き方の真実

仕事は「商品」? 労働経済学がひも解く働き方の真実

あなたは「労働」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?
自己実現の手段!
お金のため仕方なく・・・
人の喜ぶことをすること!
など、「労働」する目的は人それぞれですよね?

けれど、経済学で「労働」を見るとちょっと違います。
経済学では「労働」は、ひとつの「商品」であって生産の一つの要素にすぎません。
経済学で「労働」を考えたとき、そこに個人的な目的は存在しません。

労働を個人的な目線で考えることはとても意味のあることです。
自分の人生の中で多くの時間を割いているのですから、当然ですよね。

けれど、「労働」を、個人的な問題と考えると視野が狭くなり、人格や理想論に陥りやすくなります。

労働を個人的な問題として考えるのではなく、労働を社会の一つの枠組みととらえ、自分から離して考えるとまた違った見方ができて視野が広がるでしょう。

ここでは、そんな経済学から見た「労働」について解説し、社会のしくみを俯瞰します。

労働とは

分かり切っていることかもしれませんが、ちょっと立ち止まって労働について見なおしてみましょう。

労働とは働いて生活するお金をもらうことです。
もう少し丁寧に表現すると、「労働」とは、身体や頭脳を使って、必要なモノやサービスを生み出す活動といえます。

労働でおこなわれた経済活動は、経済の重要な要素の一つになります。
なぜなら、労働によって生み出されたモノやサービスは、お金と交換され、社会の中を循環して経済を潤すからです。

また、労働は私たちにとって、生きていくための手段であると同時に、自己実現の手段でもあります。自分の能力や知識を活かして、何かを作り上げたり、誰かの役に立ったりすることは、生きがいにもつながります。

このように、労働には経済的な側面と個人的な側面の両面があります。
しかし、経済学では、労働を主に「生産要素」としてのみ捉えます。
つまり、「労働」を、財やサービスを生み出すための重要な要素と考えるのです。

労働は財やサービスを生み出す要素

「労働」を「生産の一つの要素」として考えると、会社と自分が一体化している考え方とは、また違った見方ができます。

  • 労働の価値とは
    労働によって生み出される財やサービスの価値が、労働の価値となります。
    つまり、労働の生産性が高ければ高いほど、労働の価値も高くなります。
  • 人件費とは
    企業が労働者に支払う対価が人件費になります。
    人件費は、企業にとって重要なコストであり、企業は人件費をいかに効率的に使うかを常に考えています。
  • 労働生産性に注目する
    1人の労働者が1時間あたり生み出す財やサービスの量です。
    労働生産性が向上すると、企業はより多くの財やサービスを生産できるようになり、経済成長につながります。
  • 労働市場で取引できる
    労働需要と労働供給が交差する市場です。
    労働需要は、企業が生産活動に必要な労働力に対する需要であり、労働供給は、労働者が労働を提供することです。労働市場における需給関係によって、賃金が決まります。

これらの視点を持つことで、労働を単なる個人的な活動ではなく、経済全体に関わる重要な要素として理解することができます。

日本に根強く残る労働観

けれど、日本には古くから、会社を家族のような「家」と捉え、そこに属する自分を「一家の主人」や「一家の働き手」のように位置付けるという側面があります。

具体的にどのような考え方だったのか、いくつか例を挙げてみましょう。

  • 終身雇用
    会社に一度入ったら、定年まで勤め上げることを前提としていました。これは、家族の一員として、一生を共にするという考え方に通じます。
  • 年功序列
    年齢や勤続年数によって給与や地位が決まることが多く、これは家族の長男が家業を継ぐようなイメージに重ねられます。
  • 会社優先
    会社の利益を優先し、個人の時間やプライベートよりも会社のことを第一に考えることが求められていました。これは、家族のために自己犠牲を払うという考え方に似ています。

現代はグローバル化やIT技術の発達、終身雇用制の崩壊などの影響で、これらの考え方は弱まっています。

労働を「家」のように考えるのではなく、一つの「生産の要素」と捉え、「労働」に関わっていくことが、何よりも大切なのです。

生産を行うための3要素

「労働は生産の要素」について、もう少し詳しく考えてみましょう。

3つの生産の要素
経済学では、生産を行うために必要な要素として、一般的に「土地」「労働」「資本」の三要素が挙げられます。

  • 労働
    人間の肉体と精神を用いた労働力です。
    製品の製造、サービスの提供など、あらゆる生産活動において不可欠です。
  • 資本
    生産活動に用いられる物的資産を指します。
    工場、機械、設備、原材料などがこれに当たります。
  • 土地
    生産活動の場となる土地や天然資源を指します。
    農地、鉱山、森林などが代表的な例です。

これら3つの生産要素を組み合わせの比率で、生産される商品の種類や数量、品質が大きく変わります。
例えば、労働集約型の生産方式では、労働力を多く投入し、少数の機械で生産を行います。一方、資本集約型の生産方式では、機械や設備を大量に導入し、少ない労働力で大量生産を行います。商品やサービスが生産されます。

労働は、生産を行うための要素の一つです。
そして、これらの要素はどれも取引ができるという特徴があります。

生産要素としての労働の取引

生産の要素はみんな取引可能なものです。
もちろん「労働」も可能です。
「労働」が取引される、ということについて詳しく見ていきましょう。

労働の取引とは、企業が労働力を必要とし、また労働者が収入を得るために、その労働力を企業に提供する契約のことを指します。

これは、企業が製品やサービスを生産するために不可欠な労働力という資源を購入する行為と捉えることができます。

労働の取引の特徴

労働が取引されることは、「資本」や「土地」の取引とは、また違った特徴を持ちます。

  • 非標準的な取引
    労働は「商品やサービス」とは違って、一度売却すると消滅し、貯めることはできません。
    また、労働力は労働者本人から切り離して考えることができません。
    労働者は、自分の身体や精神を用いて労働を提供します。

    労働者は、それぞれ異なる能力やスキルを持っているため、多様な種類の労働があります。そのため標準化された商品のように簡単に比較・評価することが難しいという特徴があります。
  • 継続的な関係
    労働契約は、短期的な取引だけでなく、長期的な雇用関係となることも多く、企業と労働者の間には継続的な関係が築かれます。
  • 多様な形態
    正社員、契約社員、パート、アルバイトなど、労働契約には様々な形態があり、それぞれの形態によって労働条件や雇用保障が異なります。

労働の取引が成立する仕組み

労働取引は、企業の労働に対する必要性(需要)と、労働者の労働したいという気持ち(供給)が一致するところで成立します。

  • 企業の労働需要
    企業は、生産量を増やしたり、新しい製品・サービスを開発したりするために、労働力を必要とします。
    労働需要は、製品の需要、生産技術、賃金水準などによって変化します。
  • 労働者の労働供給
    労働者は、収入を得るために労働力を提供します。
    労働供給は、賃金水準、労働時間、労働条件、個人のスキルや経験などによって変化します。

労働は、生産活動において不可欠な要素であり、労働市場において取引の対象となります。労働力は、労働者本人と一体であり、多様な種類が存在し、一度提供されると消滅するという特徴を持っています。

労働を取引する場所:労働市場

「労働」は「生産の一つの要素」で取引可能なものということが分かりました。

労働を求めている企業と労働を提供する労働者が出会いやすいような場所があると便利です。
なので、労働を専門に扱う「労働市場」というものが現れます。

「労働市場」とは、野菜や魚の取引をする市場とは異なり、具体的な場所や施設が存在するわけではありません。労働市場とは労働力という無形の商品が取引される、抽象的な市場として捉えると分かりやすいかもしれません。

具体的には、求職者求人者が、賃金を介して労働条件について調整を行う場すべての場所を指します。つまりハローワークなどの公共職業安定所、民間職業紹介所、インターネット求人情報サイトなど、様々な場所や手段が労働市場になるのです。

「労働市場」では、働きたい人がその能力を「供給」し、その能力が欲しい企業が「需要」となります。そこに「賃金」というお金が受け渡されお金が流れていく場が「労働市場」になります。

労働は「労働市場」で取引できるものとして、やり取りされるものになります。

まとめ

労働を一つの商品としてとらえて見てきました。
労働は個人的なものであると同時に社会的なものでもあります。

日本では古くから「家」と「仕事」を同じものとして捉えてきました。

経済学では労働は「生産の要素」の一つとして捉えます。
労働の生産性が高いほど価値があるとみなされ、その人件費は企業のコストになるのです。

労働も一つの商品として取引することができます。
労働には他の商品と違って、労働者本人から切り離すことができないこと、一度きりの貯蔵できないもの、長期に渡って取引が続くこと、多様な形態があることなどの特徴がありました。

労働市場とは労働を望む企業側と労働者側のマッチングの場で需要と供給のバランスによって賃金が決められます。

どうでしたでしょうか?
労働を「商品」として考えるのはドライすぎると感じた方もいらっしゃるかもしれません。

けれど、自らを「商品」と捉えてみることは、労働から起こるさまざまな問題を解決するとき、一つの筋道をつけてくれるはずです。次回も、もう少し労働について考えていきましょう。

参考文献

ティモシー・テイラー 経済学入門

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RP:株式会社イワミズ

PR:ネクステージ株式会社

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