日本が世界に誇れる農産物の一つ、桃!
その芳醇な香りやとろっとした食感、そしてその甘さ・・・・
きっとあなたもお好きですよね?
その、おいしい桃の価格も、時期や天候、害虫、肥料の価格、農薬の価格、人件費、そして需要、などの影響を受けて上下します。
そんな桃を例にして、需要と供給そしてその価格について考えてみましょう!
需要と供給の知識は経済学の基礎であり、私たちの生活に深く関わっています。この知識を理解すれば、物事の価格がなぜ決まるのか、賢い消費行動をするにはどうすればいいのか、さらに社会現象を理解することができる、といった様々なメリットがあります。
ぜひ、ご覧ください!
需要曲線とは?
まず簡単に需要曲線と供給曲線についておさらいしておきましょう。
需要曲線は、ある商品に対して、価格が下がれば買う量が増え、価格が上がれば買う量が減るという、私たちの一般的な購買行動を表したものです。
- 価格が安いと嬉しい
誰でも、同じ商品なら安い方がたくさん買いたいと思うはずです。 - 価格が高いと買うのをためらいがち
価格が高くなると、他の商品に目を向けたり、購入を諦める人が増えます。
この関係をグラフにすると、一般的に右下がりの線になります。
供給曲線とは?
供給曲線は、商品を売る側の視点で、価格が上がればたくさん作りたい、価格が下がれば作る量を減らしたいという、企業の一般的な行動を表したものです。
- 価格が高いと儲かる
価格が高ければ、企業はより多くの商品を作りたいと考えます。 - 価格が低いと赤字になる
価格が低すぎて、生産コストが掛かりすぎた場合、企業は生産を減らしたり、別の商品に力を入れたりします。
この関係をグラフにすると、一般的に右上がりの線になります。
需要曲線と供給曲線の交点
需要曲線と供給曲線が交わる点が均衡点と呼ばれ、このときの価格が均衡価格、取引される量が均衡数量となります。
- 均衡点では、買いたい人と売りたい人がちょうど一致します。
- 市場は、この均衡点に向かって自然に動きがちです。
桃の価格はどう決まる?
では、桃を例にして価格の決まり方を見ていきましょう。
桃の供給また需要に影響を与える要因は、大きく分けて自然要因と経済要因の二つに分けられます。
自然要因
- 気候
- 開花時期
開花が遅れると生育期間が短くなり、収穫量に影響が出ることがあります。 - 気温
開花後の気温が低いと結実率が低下し、高温すぎると日焼けや裂果の原因となり、品質が低下する可能性があります。 - 降水量
雨が少ないと果実が小さくなり、多すぎると裂果や病害が発生しやすくなります。
- 開花時期
- 病害虫
- カミキリムシ
木に穴を開け、樹勢を弱らせたり、果実を傷つけたりします。 - カメムシ
果実に汁を吸い、食害痕を残します。 - その他の病害
害虫だけでなく、カビやウイルスなどの病害も収穫量や品質に影響を与えます。
- カミキリムシ
- 品種
- 人気品種
人気品種は需要が高いため、価格が高くなる傾向があります。 - 栽培難易度
栽培が難しい品種は収穫量が少なく、価格が高くなる可能性があります。
- 人気品種
経済要因
- 生産量
- 天候不順
前述の気候要因によって収穫量が減ると、供給が減り価格が上昇します。 - 病害虫発生
病害虫の発生により収穫量が減ると、価格が上昇します。
- 天候不順
- 流通経路
- 産地直売
生産者が直接販売することで、中間マージンが削減され、比較的安価に購入できる場合があります。 - スーパーマーケット
大量に仕入れることで、価格を抑えることができますが、品種や品質が限定される場合があります。 - 百貨店
高級品種や限定品を取り扱うため、価格が高くなる傾向があります。
- 産地直売
- 需要
- 季節
旬の時期には需要が高まり、価格が上昇する傾向があります。 - 消費者の嗜好
特定の品種やブランドへの需要が高まると、価格が上昇する可能性があります。
- 季節
- 生産コスト
- 肥料
肥料価格の上昇は、生産コストの増加につながり、価格に転嫁される可能性があります。 - 農薬
農薬価格の上昇も、生産コストの増加につながります。 - 人件費
人件費の上昇は、生産コストの増加につながり、価格に転嫁される可能性があります。
- 肥料
これらの要因が複雑に絡み合い、桃の価格は変動します。
その他にも
- 経済状況
景気動向も、消費者の購買意欲に影響を与え、価格に影響を与える可能性があります。 - 国際情勢
国際的な食料価格の変動や、貿易政策の変化も、桃の価格に影響を与える可能性があります。
桃の価格は、自然条件、生産者の努力、市場の状況など、様々な要素が複雑に絡み合って決まります。
需要曲線のシフトによる価格変動
桃の価格が変動する原因は、需要と供給のバランスが変化するためです。
バランスが変化すると曲線が右へ、または左へ平行移動(シフト)することが分かっています。
具体的に、需要曲線と供給曲線がどのようにシフトし、価格にどのような影響を与えるのか見ていきましょう。
- 需要増加(右シフト)
- 例 夏の暑さで桃を求める人が増えた場合
- 価格 需要が増えると、同じ量の桃に対してより多くのお金を払おうとする人が増えるため、価格が上昇します。
- 例 桃を使った新しいスイーツが流行し、需要が高まった場合
- 価格 新しい需要が生まれることで、全体の需要が増え、価格が上昇します。
- 例 夏の暑さで桃を求める人が増えた場合
- 需要減少(左シフト)
- 例 桃の代わりに新しいフルーツが流行し、桃の需要が減少した場合
- 価格 消費者の関心が他のフルーツに移ると、桃の需要が減少し、価格が下落します。
- 例 桃の価格が高騰し、消費者が購入を控えるようになった場合
- 価格 価格の上昇によって、需要が減少し、価格がさらに下落する可能性があります。
- 例 桃の代わりに新しいフルーツが流行し、桃の需要が減少した場合
このように需要と供給の2つの交点が、シフトしたことによってずれていることが分かります。
このような現象によって価格は変化していきます。
供給曲線のシフトによる価格変動
- 供給増加(右シフト)
- 例 新しい品種の桃の栽培技術が開発され、生産量が増えた場合
- 価格 供給が増えると、同じ価格でより多くの桃が市場に出回るため、価格が下落します。
- 例 気候条件が良く、桃の収穫量が大幅に増加した場合
- 価格 供給過多になると、価格が下落し、生産者はより低い価格で販売せざるを得なくなります。
- 例 新しい品種の桃の栽培技術が開発され、生産量が増えた場合
- 供給減少(左シフト)
- 例 病害虫が発生し、桃の収穫量が減少した場合
- 価格 供給が減ると、同じ量の桃に対してより高い価格がつけられるようになり、価格が上昇します。
- 例 収穫時期の天候が悪く、桃の品質が低下した場合
- 価格 品質の低下により、市場に出回る桃の量が減り、価格が上昇する可能性があります。
- 例 病害虫が発生し、桃の収穫量が減少した場合
需要の場合と同じように、2つの交点がずれて価格が変化していることが分かります。
需要と供給の同時シフト
- 例 夏の暑さで需要が増加し、同時に異常気象で供給が減少した場合
- 価格 需要が増え、供給が減るため、価格が大幅に上昇する可能性があります。
このように桃の価格は、需要と供給のバランスによって変動します。
需要が増えれば価格が上昇し、供給が増えれば価格が下落する傾向があります。
実際の市場では、価格は、収穫量や消費者の好みだけではなく、消費者の所得、人口、生産コスト、技術革新、政府の政策などが、需要と供給に影響を与え、同じ商品であっても、その時々によって変化していくのです。
今回取り上げた例は農産物の桃でしたが、スマートフォンや半導体などの商品にも応用できます。
あなたも、身近な商品の値段はどうしてその値段になったのか考えてみませんか?
もしかしたら、自分も考えたこともない理由が隠されているかもしれません。
まとめ
桃の価格を例にして需要曲線と供給曲線について解説しました。
需要は価格が高いと買う人が減り、安いと買う人が増える、という一般的な消費者行動を表します。
供給は価格が高いと作りたい人が増え、安いと作りたい人が減る、という一般的な生産者の行動を表わしています。
需要曲線は人口が増えたり、全体的な所得が上がったり、ブームがくると需要が増え曲線は右にシフトして価格を押し上げます。
逆に、人口が減ったり、税金が増えて所得が減ったり、ブームが去ると需要は減って曲線が左にシフトして価格が下がります。
供給曲線は、栽培に適した天候が続いたり、新しい技術が生まれ生産効率が上がったり、エネルギー価格が安くなるなどの生産コストが安くなったり、新規参入者が増えたると、供給が増え曲線が右にシフトして価格を押し下げます。
逆に、他の国で新しい技術が生まれて顧客を奪われたり、天候が悪くなったり、エネルギー価格が高くなれば供給が減って曲線は左にシフトして価格が上がります。
需要と供給の関係は、国や時代が違っても、どんなものにでも価格の動きを理解することができます。
価格の変動理由を知って、日常の消費行動だけではなく、経済状況も予測できる知識をぜひ身につけて、将来の予測に役立ててください!
参考文献
ティモシー・テイラー 経済学入門