ぽれぽれ経済学

よりよい政府の介入へ

より良い政府介入へ

前回まで政府がモノの価格を設定して、私たちの暮らしを保護する「価格介入」について解説しました。
しかし政府の価格介入は本当に困っている人だけではなく、そうでもない人にも影響があるので、公平な政策に見えても、不公平感がぬぐえませんでした。また需要と供給のバランスを無視して線引きするため、モノ余りや失業者が増加を招きます。

では、政府は余計なことはせずに国防だけ行い、経済に口を出さない方が良いのでしょうか?

ここでは、よりよい政府の介入について詳しく解説します。

セイフティーネットはどこにある?

モノの値段を市場に任せておくと高すぎたり、安すぎたりしてしまうので、規制をかけてすべての値段を決めてしまったのは「社会主義」と呼ばれる国のことです。

1980年代のソ連は、その豊富な資源を財源にして、高い価格になるように規制して生産者を保護し、低い価格になるように規制して消費者を支援しました。手厚い国の補助金制度があったにもかかわらず、ソ連ではモノが不足して、国民はパンすらまともに手に入らない状態になります。また生産コストが高騰し、闇市、横領がはびこりました。

私たちは人は大変残念なことですが、働いても働かなくても同じ給料しかもらえないときや、ライバルも不在で仕事に工夫する必要がないときは、より良いものを生産しようとする気が起きず、その結果世の中にモノが出回らなくなります。
世の中にモノがたくさんありすぎるのもよくありませんが、なにもない方がもっと深刻です。たくさんある場合は供給側が減らせばいいのですが、なにもないと私たちは飢えてしまいます。

そのようなことが分かっているので、完全な社会主義国がしたように、すべての価格を政府が決めるのは人々のやる気をなくすのでやめた方が良いでしょう。市場経済を守りつつ、貧困をなくすには、一律に価格を強制するのではなく、困っている人に直接支援が届くような政策が理想的です。

たとえば、お米の価格が高騰したら、生活保護の金額を増やしたり、家賃補助を増やすことで困っている人を直接支援することができます。高いお米を買うことになっても収入が増えるので全体として同じ生活が送れます。

また生産者側への支援は、新しい機材を購入や事業拡大するときの補助金を出せば、収入アップが期待でき新規事業にも取り組みやすくなります。

日本にもたくさんの補助金制度は整っています、特に農業は土地や農機具が高額になるため支援の補助金がありますし、新規事業のためにも補助金が用意されています。
農地利用効率化等支援交付金(令和4年度):農林水産省 (maff.go.jp)
日本政策金融公庫 (jfc.go.jp)

価格統制はなぜ今も残っているの?

政府がモノの価格に口を出すのは、よくないことが分かっているのに、なぜ今も多くに国でそれが選ばれているのでしょうか?

政治家の怠慢だニャー

価格の規制は、簡単なのでよく使われます。
補助金を出したり、税金を優遇することは、一軒一軒精査しなければいけないので、時間も手間もかかります。それに比べて「この価格でやりなさい」と言ってしまうだけなら、ずっとコストがかかりません。
上限価格があるモノは、買う方は安く手に入って良いのですが、その影にはモノが不足して手に入らない人が存在します。
下限価格があるモノは、生産者側の収入は増えますが、そのコストはまわりまわって買う方に押し付けられています。

経済学の考え方はあらゆるコストを検討します。選んだことに対してかかったコスト、選ばなかったことで失われたコストという目に見えないコストも考えます。

福祉用具のレンタル代の上限を決めれば安く借りられて一部の人は助かるでしょう。しかしレンタル業者は売り上げが下がるのでメンテナンスに手を抜くかもしれません。
お米の価格の下限を決めれば農家は収入が増えますが、農家以外の人にコストを押し付けることになります。所得の多くない家庭では必要な食材を買うのに苦労するかもしれません。
余った農作物を発展途上国に送ることは、その国の農作物の売り上げを奪い、農家は深刻な打撃を受けるかもしれません。

生産物の不足や過剰といった無駄は、表に現れることがありませんが、大きなコストとして存在しています。政府の政策は対象が大きいので関係者がどの範囲にまたがるのか見えにくいですが、広い範囲を考慮する姿勢が大切です。

まとめ

政府の価格介入について見てきました。価格介入は、均衡点と違うところに価格を設定するので、歪みを生み出します。望ましい支援は、困っている人へ直接支援することですが、それには時間と手間がかかるため、簡単にできる価格介入が選ばれることがあります。

経済学の視点は、あらゆるコストに目を向けることです。選んだことによるコスト、選ばなかったことによるコストも考慮し判断します。

私たちの生活の中でも何かを買うとき「選んだ方のコスト」と「選ばなかった方のコスト」を考えれば、また違った視点でモノを考えることができます。その経済学の視点はきっと役に立つでしょう。ぜひ日常に取り込んでください。

参考文献

食糧管理法 - Wikipedia
経済学入門 ティモシー・テイラー

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