ぽれぽれ経済学

値段のつけ方と弾力性

需要と供給と弾力性

皆さんは煙草を吸いますか?
日本人の喫煙率は男性で約27%、女性は8%ほどです。

タバコには、国のたばこ税、地方のたばこ税、たばこ特別税、消費税の4種類もの税金がかかっていて税負担の重たい商品です。

たばこの税金が高いのは「喫煙者を減らし国民の健康のため」とか「取りやすいところからとる」など言われますが、本当のところはどうなんでしょうか? ちなみに日本のたばこ税は何度も増税され、その税収入は平均年間2兆円にもなり、高い税収をキープし続けている大きな財源になっています。

商品が売れ行きは、価格に大きく左右されます。価格が高いと売れ行きは少なくなり、価格が低くなると売れ行きが多くなります。
タバコはその価格の半分以上が税金です、繰り返しの増税で価格がどんどん上がっていますが、売れ行きに影響しないのでしょうか? 

ここではその価格が売り上げにあたえる影響力について分かりやすく解説します。
業者は価格をどのような戦略でつけているのかを知れば、買い物をするときにより厳しい目で商品を見れるようになります。かしこい消費者になるために、また一つ経済学の視点を生活に取り入れましょう。

価格の弾力性

モノの価格は高ければ売れ行きが鈍くなり、安いとよく売れます。
それを踏まえて、もう少し詳しく価格を見ていきます。

価格の変化は売り上げにどのくらい影響があるのでしょうか? 

経済学の用語に「弾力性」という言葉があります。
「弾力性」とは、価格を変化させると、売り上げはどのくらいの割合で変化するのかを表す経済用語です。
弾力性は英語で 「elasticity」、 elastic は英語で「柔軟」という形容詞で、それを名詞化したものが「elasticity」です。弾力性とは、売り上げ、つまり需要がまるでゴムのように伸びたり、縮んだりすることに例えてつけられています。

簡単いうと、「お客さんは価格をどのくらい上げても平気で買ってくれるのか?」を知るための一つの指標です。
スーパーのように価格をちょっと上げただけで、売り上げがごっそり減ってしまうような商品を「弾力性」が高いと言います。逆に糖尿病の薬、インシュリンのような医薬品は、価格を上げても売り上げに影響がほとんどないので「弾力性」が低いと言われます。

この「弾力性」を理解しておくと企業の価格のつけ方のからくりが分かるようになります。さらに税金にも関わるので、政府おこなう経済政策について理解できるようになります。

経済政策とは

政府がある社会問題を解決するために経済を通して発動するもの。物価の安定や雇用水準の維持、最適な資源配分、所得の再配分などの政策がある。

その1 弾力性が小さいとき 需要編

「弾力性」の具体的なケースについて需要と供給に分けて見ていきましょう。

例えば、先ほどのタバコについて見ていきます。

もし今、タバコを500円から550円と10%引き上げたとします。その時、売り上げである需要が5%しか下がらないとき、「需要の弾力性は低い」と言います。
タバコはタバコの値段が高くなっても他のもので代替することのできない商品です。タバコが好きな人にとっては値段が上がったくらいで「タバコをやめよう」とはならず、需要が低くなりにくいのです。

このように価格が高くなった割合ほど、売り上げが下がらない商品、つまり「弾力性が低い商品」は他にも、薬や医療費、ガソリン、武器などがあります。これらは買う時期を延長することができません、今すぐに欲しいモノなので価格が上がっても買わざるを得ません。また武器は、他に代替になるモノがない場合が多いので、弾力性は低く売り手の言い値になり高額になります。

その2 弾力性が高いとき 需要編

次に、スーパーに売られているオレンジジュースの弾力性はどうでしょうか?

今オレンジジュースが100円で売られていたとします。もしこの商品を110円と10%引き上げたとき、売り上げである需要が20%から30%も下がってしまうとき、このオレンジジュースは「弾力性が高い」や「弾力的」と言われます。

弾力性が高い商品は価格を変化させると売り上げが大きく変化します。もしもオレンジジュースの価格が上がったら、私たちはリンゴジュースを買ったり、ビタミン剤などで済ませます。オレンジジュースにはそれに代わる代替品がたくさんあるので、オレンジジュースが値上がりしたら、それにこだわらず他のモノを買えばいいので、需要がごっそり減ってしまうのです。つまりオレンジジュースは弾力性が高いと言われます。

また、タバコの場合でも、やめようと思っていた人や、喫煙歴が短い人など、たばこに依存していない人にはタバコの需要が弾力的になります。

その3 ちょうど等しいとき 需要編

価格の変化の割合と需要の変化の割合がちょうど等しい場合もあります。
例えば100円のモノが110円に上がった場合、需要がちょうど10%低くなるような場合があります。このような時を「単位弾力的」と呼んでいます。

その1 弾力性が小さいとき 供給編

次に販売する側、供給の弾力性について見ていきます。

例えば、ある人気作家のアクセサリーが10,000円で売っているとします。これを10%値上げして11,000円にしたとします。そのときその商品の数、つまり供給量が5%しか上がらないとき、その商品は、「供給の弾力性は低い」と言われます。人気作家のハンドメイド作品は作る量は限られているので価格が上がっても商品が増えるということはありません。このように希少品だったり、原材料が限られているものは供給の弾力性は低くなります。

その2 弾力性が大きいとき 供給編

価格が変化すると供給量に大きな変化をもたらす場合があるとき、供給に「弾力性がある」と言われます。
例えば、ある工場がフル稼働せずに余裕をもって操業しているとき、状況が変わって簡単に生産量を増やせるとき、「供給の弾力性は大きい」と言われます。

その3 弾力性が等しいとき 供給編

価格の変化が供給量の変化に一致しているとき、つまり価格を10%上げたら、供給も10%上昇するような商品は「弾力性が等しい」と言われます。

まとめ

価格の変化が需要や供給にどんな変化をもたらすのか見てきました。
価格が変化した割合に比べて、需要や供給の変化の割合が大きいと「弾力性が高い」、低いと「弾力性が低い」と言われました。変化の割合を量ではなく、比率で表しているので商品が違っても、また時代や国、通貨が違っても同じように比べられるのが大きなポイントです。

次回は、引き続き「弾力性」を使って、商品の適正な値段がどこにあるのか? 価格を変えたとき需要と供給がどのように変化するのか予測する方法についてさらに詳しく解説します。

参考文献

ティモシー・テイラー 経済学入門
たばこ税の仕組み | JTウェブサイト (jti.co.jp)
喫煙率:[国立がん研究センター がん統計] (ganjoho.jp)

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