前回は「企業」とはいったいなんなのか? ということを見てきました。
企業とは大きなビルを構えて大勢で活動している会社だけではなく、利益を出すことを目的として人が集まれば、それが「企業」と考えていいこと。集まっている人の数で大企業、中小企業、小規模企業と呼ばれたり、またその会社の所有形態によって株式会社、有限会社、合同会社、個人商店と呼ばれたりしました。そして企業の活動内容である産業は1000種以上に分類され、多くの企業が利益を上げるために他者と競争をしています。
今回は、その企業間の競争について見ていきます。企業同士が競争することは、その企業の体力を計るためにも大切な指標になります。競争に負ければ、その企業の売り上げは下がり、最悪倒産する可能性があります。
企業間の間にある力関係がどんな時に変化するのか知識をつけておけば、投資の対象を選ぶときの基準にもなります。
ぜひ、ご覧ください。
企業の競争
企業間の競争には、その競争のレベルが強いものから緩いものまであります。
企業は、その規模や業種にかかわらず競争は避けられません。
競争はその度合いによって次の4種類に分けられます。
一番競争が激しいのは「完全競争」です。
小規模の会社が同じようなものを作っていて差がありません。
逆に、競争が全くないのが「独占」です。
1つの大企業が市場の売り上げをほぼ独占していて独り占めしています。
そして、その真ん中に「独占的競争」があります。
これは多くの企業が少しづつ異なったものをつくって競争をしている状態です。
例えばどこのレストランでもカレーライスはあると思いますが、それぞれちょっとづつ違いがあって値段もさまざま、というような場合のことです。
それから、独占的競争よりも少し独占寄りに「寡占」があります。
一つの企業が独占しているわけではありませんが、少数の大企業がその産業のほとんどを独占し支配している状態のことを指します。
完全競争とは
もう少し詳しく見ていきましょう。
完全競争とは経済学用語の一つです。
完全競争にある企業は、自社で価格で決めることができません。その価格は市場価格に完全に従うような状況にあります。
完全競争には4つの特徴があります。
- 市場参加者が多数存在する
売りり手と買い手が多数存在し、個々の経済主体が市場価格に影響を与えることができません。 - 製品が同質である
製品が同質であるため、消費者は価格のみで製品を選択します。 - 情報は完全に共有されている
市場参加者は、市場に関する情報を完全に共有しています。 - 自由参入と自由退出がある
企業は自由に参入・退出することができます。 - 価格設定の自由
各売り手は市場価格で販売することが求められます。
価格が市場価格より高ければ、買い手は他の売り手から購入し、価格が低ければ売り手の利益が減少するため、均衡価格での取引が行われます。
完全競争の中にいる企業は市場の価格をそのまま受け入れるしかありません。利益を出そうとして価格を上げようとしても、うまくいかないのです。
なぜでしょうか?
完全競争と価格
それは消費者にとって、その企業の製品はたくさんある選択肢の一つに過ぎないからです。
完全競争になる商品とは、コピー用紙やネジといった開発が特に難しくない一般的な製品です。このような製品をつくるのは簡単ですし、また新しく参入する企業も多いです。
つくるのが簡単な製品は、だいたい誰がつくっても似たようなものができます。そして生産費用もどこも似たような価格です。すると消費者は、似たような商品について価格を比べるようになります。
その価格が他の商品と比べて1円でも高いと、買うのをやめて他の割安の商品を買おうとします。
そのような消費者が多くなると、企業はきりぎりまでコストを下げざるをえなくなります。
その結果市場に参加する企業はどこも同じような低い利益になってしまうのです。
完全競争のメリット
企業にとって利益が出にくい完全競争ですが、経済学では完全競争は、理想的な市場構造と考えられていて、次のようなメリットがあると言われています。
- 消費者利益の向上
競争によって、企業はより良い製品やサービスを提供するために努力するようになります。
そのため、消費者はより低価格で、より高品質な製品やサービスを享受することができます。 - 企業の効率化
競争によって、企業は生き残るために、より効率的に運営する必要が生じます。
そのため、企業はコストを削減し、生産性を向上させることができます。 - イノベーションの促進
競争によって、企業は新たな技術や製品を生み出すための努力をします。
そのため、イノベーションが促進され、経済の発展につながります。
ただし、残念ながら教科書に見られるような完全競争は現実には、まず見られす、あくまでも理論上の概念にすぎません。
実際には、完全に同一商品というものはめったに見られることはありません。
コピー用紙も製品によって手触りが違いますし、ネジもいろいろな素材で作られて品質もさまざまです。
また、完全競争ではすべての人に情報が完全に共有されていると仮定されていますが、実際の市場では、情報は不完全です。ネットによって情報は公平さを増しましたが、情報に偏りがあるのは変わりません。
しかし、同一商品による価格競争という完全競争の概念は、市場の様子を把握するうえでとても役に立ちます。ガソリンや農産物などは完全競争に近い形で動いている商品もあるからです。
次回は「独占」について見ていきましょう。中学の時に習った!という方も多いと思いますが「独占」にもいろいろな形があります。
お楽しみに!
まとめ
企業の競争の一つ「完全競争」について解説しました。
完全競争は理論的なモデルであり、現実世界で完全に成立する市場はほとんど存在しません。
しかし、完全競争モデルは他の市場構造(独占、寡占、独占的競争など)を理解するための基準として重要です。多くの農産物市場や一部の金融市場などは、完全競争に近い特徴を持つと言われていますが、完全な同質性や情報の完全性などの条件が厳密に満たされることはほとんどありません。
完全競争とは、市場の関係者が多数いること、そして、皆同じ情報をもって存在している状態をさします。
商品の価格は市場の需要と供給によってのみ左右され、企業は自分の好きなような価格をつけることができません。なぜなら多くのライバルが存在していて、製品に差が出にくく、どれもほぼ変わらないものしか作れないからです。
そのため消費者は少しでも安い製品を買おうとします。
企業は価格が高いと売れないので、企業は不当に高い値段をつけることが出来ず、コストを下げなければいけませんでした。
実際には、完全競争の状態にあることはまずありません。
製品は同じように見えてもよく見ればさまざまですし、市場関係者がすべて同じ情報を持っていることもあり得ません。現実の市場では、広告、ブランド、差別化された商品、規制、参入障壁などの要因が存在し、完全競争から逸脱することが一般的です。
完全競争という状態は、複雑な市場を単純化して理解を深める指標の一つとして捉えると分かりやすいでしょう。
参考文献
ティモシー・テイラー 経済学入門