前回は株式をつかった資産投資についてみてきました。
株式投資は普通預金に比べるとリスクが高いですが、資産形成を考えたら検討したい方法です。株式投資のリスクは価値が上がったり下がったりを繰り返し、その動きが読めないことでした。投資を1日中考えているような投資のプロでも、その動きを正確に当てることは難しく、継続して利益を出し続けるには非常に難しいです。
株が上昇するのは企業の業績がよくなるときだけです。企業は利益を上げなければ業務を続けていけませんので、市場全体としては業績は伸びていくものです。個別の企業の業績は急転直下する可能性ありますが、株式市場全体をもれなく押さえればリスクを抑えて資産形成できるのではないか?と考えた人たちがいました。
ここではそこで考えだされた「インデックスファンド」について解説していきます。
インデックスファンドとは
インデックスファンドとは、特定の指数(ベンチマーク)と同じ値動きを目指して運用する投資信託のことです。アクティブファンドの対義語であり、パッシブファンドとも呼ばれます。
アクティブファンドとは
アクティブファンドとは、特定の指数を上回るリターンを目指して運用する投資信託のことです。インデックスファンドの対義語。運用担当者の独自の分析で銘柄選定や売買判断を行います。そのため、ファンドの運用にかかるコストは、インデックスファンドに比べて高く設定されます。
インデックスファンドの運用方法は、対象とする指数の構成銘柄をほぼ同じ比率で組み入れ、指数と同じ値動きを目指して運用することです。そのため、ファンドの運用にかかるコストは、銘柄選定や売買判断などの手間がかからないため、アクティブファンドに比べて低く抑えられています。
インデックスファンドのメリットは、以下のとおりです。
- 低コストで運用できる
- 分散効果が高い
- 長期的な投資に向いている
インデックスファンドは、運用コストが低いため、長期的な運用において大きな差が出ます。また、複数の銘柄に分散投資することで、個別銘柄の値動きの影響を受けにくくなり、リスクを抑えることができます。さらに、インデックス投資は、長期的な資産形成に向いた投資方法です。
インデックスファンドにも当然デメリットがあります。
- 市場平均以上のリターンを期待できない
インデックスファンドは、市場平均と同じ値動きを目指しています。もっというと指数より値が高くなってしまったら、指数と同じ動きになるように値を下げなければいけません。つまり運用会社はコストをかけて常に市場平均をトレースするように調整しています。インデックスファンドは指数以上のリターンを期待することはできません。アクティブファンドのように、市場平均を上回る運用成績を目指す人には向いていないでしょう。
インデックスファンドの歴史
ここでインデックスファンドがどのように始まったのか見ていきましょう。
インデックスファンドの歴史はまだ新しく1970年代に始まりました。
当時、米国のウォール街では有名トレーダーの行うアクティブファンドが主流であり、運用者が独自の銘柄選定や売買判断によって市場平均以上のリターンを追求していました。
しかし、1970年代後半からアクティブファンドの運用成績が市場平均を下回る傾向が見られるようになります。その理由はさまざまいわれていますが、主な理由として挙げられるのは株価指数や債券指数などの指数の精度が上がり、市場全体の値動きを正確に反映するようになったからとも言われています。
そのような状況の中で、米国の投資家であるジョン・ボーグル氏は、市場平均と同じ値動きを目指すインデックス投資を提唱しました。ボーグル氏は、アクティブファンドの運用コストが高すぎること、そして、市場平均を下回ってしまう投資家が多いことを指摘し、インデックス投資こそが、長期的な資産形成に適した方法であると主張しました。
ボーグル氏の提唱は、多くの投資家に受け入れられインデックス投資の普及につながります。
1976年にボーグル氏はバンガード・グループを設立し、米国初の個人向けインデックスファンドを設定します。このファンドは、低コストで運用されるという特徴から多くの投資家に支持されインデックス投資の普及を後押ししたのでした。
その後、インデックス投資は米国から世界へと広がり、日本では、1985年に国際投信委託(2004年11月5日金融庁より行政処分を受け業務停止。2015年7月1日、三菱UFJ投信と合併した)が、国内初のインデックス・ファンドを設定しました。
インデックス投資の歴史のまとめ
- 1970年代:アクティブファンドの運用成績が市場平均を下回る傾向が見られるようになる。
- 1976年:ジョン・ボーグル氏がバンガード・グループを設立し、米国初の個人向けインデックスファンドを設定。
- 1985年:日本で最初のインデックスファンドが設定。
- 1990年代:インデックス投資の普及が加速。
- 2000年代以降:インターネットの普及により、インデックス投資がより身近なものに。
インデックス投資は、長期的な資産形成に向いた投資方法です。低コストで運用でき、分散効果が高いため、初心者でも始めやすい投資と言えます。

インデックスの指数はどんなものがあるの?
インデックスファンドの指数(ベンチマーク)の具体例をご紹介します。
- 株式インデックスファンド
- 日本
- 日経平均株価(日経225)
- TOPIX(東証株価指数)
- MSCI 日経225
- 日経225 インデックスファンド
- 米国
- S&P 500
- Nasdaq 100
- ダウ・ジョーンズ工業株30種平均
- ラッセル2000
- 日本
- 債券インデックスファンド
- 日本
- JGB総合指数
- JGB銘柄別指数
- 国内債券インデックスファンド
- 米国
- 米ドル建て米国政府債券指数
- 米ドル建て米国社債指数
- 日本
- バランスファンド
- 日本
- MSCI 日経225 インデックスファンド(60%)+JGB総合指数(40%)
- 日経225 インデックスファンド(40%)+MSCI 日経225 インデックスファンド(30%)+JGB総合指数(30%)
- 米国
- S&P 500(60%)+米ドル建て米国政府債券指数(40%)
- S&P 500(40%)+米ドル建て米国社債指数(30%)+米ドル建て米国政府債券指数(30%)
- 日本
上記は、代表的な例であり、他にもさまざまな指数が存在します。インデックスファンドを選ぶ際には、投資の目的やリスク許容度に合わせて、適切な指数を選ぶことが重要です。
以下に、各指数の特徴を簡単に説明します。
- 日経平均株価(日経225)
- 東証一部に上場する225銘柄で構成される株価指数です。日本を代表する指数として、広く用いられています。
- TOPIX(東証株価指数)
- 東証1部に上場する全銘柄で構成される株価指数です。日経平均株価よりも幅広い銘柄を対象としているため、より市場全体の動向を反映した指数と言えます。
- MSCI 日経225
- MSCI社が算出する、日経225に連動する指数です。日経平均株価とほぼ同じ構成銘柄で構成されていますが、信託報酬が低く設定されている点が特徴です。
- 日経225 インデックスファンド
- 日経225に連動するインデックスファンドです。日経平均株価の値動きとほぼ同じ値動きを実現します。
- S&P 500
- 米国を代表する株価指数です。米国を代表する500銘柄で構成されています。
- Nasdaq 100
- 米国のナスダック市場に上場する100銘柄で構成される株価指数です。ハイテク銘柄の比率が高いのが特徴です。
- ダウ・ジョーンズ工業株30種平均
- 米国の工業株30銘柄で構成される株価指数です。最も歴史のある株価指数の一つです。
- ラッセル2000
- 米国を代表する小型株指数です。時価総額が小さい2,000銘柄で構成されています。
- JGB総合指数
- 日本の国債の総合的な値動きを示す指数です。
- JGB銘柄別指数
- 日本の国債を銘柄別に分類した指数です。
- 国内債券インデックスファンド
- 日本の国債で構成されるインデックスファンドです。
- 米ドル建て米国政府債券指数
- 米国の政府が発行する債券の総合的な値動きを示す指数です。
- 米ドル建て米国社債指数
- 米国の民間企業が発行する債券の総合的な値動きを示す指数です。
インデックスファンドを選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
- 対象とする指数
- 信託報酬
- 保有資産額
対象とする指数は、投資の目的やリスク許容度に合わせて選びましょう。
信託報酬は、運用にかかる費用を表す指標であり、低ければ低いほど運用コストが抑えられます。
保有資産額は、ファンドの流動性や手数料に影響するため、確認しておきましょう。
まとめ
インデックスファンドについて解説しました。インデックスファンドとはたくさんある株の中からいくつかとりだしてその指標、例えば日経平均株価やダウなどの指標を元に、株を集めて商品にしたものです。その値動きは指標と同じように動きます。個別の株に投資するのと違って値動きの上下が少なく、リスクが低いのが特徴です。
その歴史は浅く1970年アメリカで始まり、自分一人では指数全体の株をすべて購入することは、コストがかかるのでできませんでしたがインデックスファンドならコストも低くまたリスクも抑えられるということもあり、多くの人に支持され世界中に広がりました。
今、インデックスファンドは大変人気があり、競争が激しくなっているので手数料もとても安くなっていますが、この先ずっとそれが続いていくというわけでありません。AIの発達によりAIによるアクティブファンドなどが生まれたり、何らかの方法で非常に良い成績になる方法がみつかればまた違ってくるでしょう。
けれど今ではまだそのような方法は見つかっていません。いつか新しい方法が生まれたらその時すぐに気が付けるように、新しい知識を常に身につけておきたいですね。
参考文献
お金以前 土屋剛俊
国際投信投資顧問 - Wikipedia
発足から40年を迎えるインデックスファンド—その軌跡と今後の展開— (toushin.or.jp)