「お金」を投資などで増やそうと思ったら、「時間」という感覚を身につけることは、とても大切なことです。
よく「お金」は育てるもの、と表現したりすることがありますが、
まさに「お金」は、時間をかけて成長させていくことができます。
もし、お金を育てようとするなら、「時間」を意識してみましょう。
なぜなら、この時間につく利益こそが、投資家の利益になるからです。
投資家にとって「時間」はリスクとリターンのバランスを取る上でとても大切です。
ここでは、身近な例を使って「時間」の価値を解説します。
お金を守るためにも、また、さらに増やしていくためにも「時間と金利」の知識を身につけて、生活にお役立てください!
日用品と金融商品、時間軸の違いを分かりやすく解説
「お金」を増やすには、時間が大切、という話を聞いても、「お金」や「時間」という言葉は、どちらも抽象的なので、なかなかイメージしずらいものです。
そこで、身近なものと比較して「時間」についてイメージしていきましょう。
例えば、普段買う日用品と金融商品買うということの違いはどこにあるのでしょうか?
それは「時間」です。
日用品の場合:今、すぐに使える
- 即時的な価値
日用品は、購入したその場からすぐに使用できるものです。
例えば、食料品は食事に、衣類は体を覆うために、その場で役立ちます。 - 消費される
日用品は、使用することで消費され、価値がなくなっていきます。
例えば、食品は食べるとなくなり、トイレットペーパーは使うと減っていきます。
日用品は使うために購入し、使えばそれは古くなります。
一部購入した金額より高くなるものもあるかもしれませんが、ほとんどは時間が経てば消耗したり、減っていくものです。
金融商品の場合:将来の価値に期待
日用品に比べて金融商品はどこかちがうのでしょうか?
- 将来の価値
金融商品は、将来、お金が増えることを期待して購入します。
例えば、株式は会社の成長によって株価が上がり、利益を得ることを期待します。 - 長期的な視点
金融商品の価値は、短期間では変動することが多く、長期的に見て初めてその価値が分かる場合があります。 - 複利効果
金融商品は、運用によって得られた利益を再投資することで、雪だるま式に増えていく「複利効果」が期待できます。
金融商品は時間とともに価値が低くなることがありますが、消耗したりなくなることはありません。時間をかけて金融商品を大きく成長させることを期待して買うものなのです。
時間軸の違いを比べる表
特徴 | 日用品 | 金融商品 |
---|---|---|
価値 | 即時的な価値 | 将来の価値への期待 |
消費 | 使用することで消費される | 消費されることはなく、増える可能性がある |
時間軸 | 短期的な視点 | 長期的な視点 |
目的 | 生活に必要なものを手に入れる | 資産を増やし、将来の生活を豊かにする |
お金の価値は時間とともに変化する3つの理由
金融商品は時間をかけて育てるために買うものですが、実はお金の価値は時間とともに変化するという特徴があります。
なぜでしょうか?
お金の価値が時間とともに変化する主な理由は、インフレーションや金利、そして機会費用の存在です。
- インフレーション
インフレーションは、一般的に物価が上昇していく現象のことです。
インフレーションが進むと、同じ金額でお買物できるものが減ってしまうため、お金の価値は相対的に低下します。 - 金利
金利は、お金を貸したり借りたりする際の利率のことです。
金利が高いほど、お金を貸した場合には、将来にはより多くのお金が返ってきます。
つまり、金利は将来のお金の価値を現時点に引き戻すための目安になります。 - 機会費用
機会費用とは、ある選択肢を選ぶことで、同時に諦めなければならなかった他の選択肢の価値のことです。お金に関しても、今お金を使うか、将来のために貯蓄するか、あるいは投資するかといった選択肢があります。
それぞれの選択肢には、将来得られる利益やリスクが異なるため、お金の価値は時間とともに変化すると考えることができます。
このように、お金の価値はインフレ、金利、機会費用の3つの理由で変化していきます。
時間と金利はつながっている
お金の価値が変化する大きな理由「金利」についてもう少し詳しく見ていきましょう。
まず「時間」と「金利」それぞれの言葉の意味を簡単に確認しましょう。
- 時間
物事が変化したり、経過したりする過程を測る尺度です。
過去、現在、未来という流れがあり、私たちの生活や社会活動に深く関わっています。 - 金利
お金を貸したり借りたりするときに発生する手数料のことです。
一般的に、年率で表され、元金に対して一定の割合で利息が計算されます。
時間と金利の関係
そして「時間」と「金利」には、密接な関係があります。
- 時間の経過とともに利息は増える
- お金を借りた場合、時間が経つにつれて返済すべき金額(元金+利息)は増えていきます。
- 一方、お金を預けた場合は、時間が経つにつれて受け取れる利息が増えていきます。
- 金利の高さによって、時間の経過による変化の度合いが変わる
- 金利が高いほど、同じ期間でも利息は多く発生します。
つまり、お金を貸していれば、お金が増えるスピードが速くなり、借りていれば減るスピードが速くなるということです。
- 金利が高いほど、同じ期間でも利息は多く発生します。
- 複利効果
利息にも利息がつくことを複利効果と言います。
時間が経つにつれて、複利効果によって時間が経てば経つほど、お金は雪だるま式に増えていく可能性があります。
金利とお金の価値
金利があるおかげで、現在のお金と将来のお金は同じ価値ではないということが理解できます。
将来のお金は、今の1円よりも価値が低い
- 例えば、1年後に100万円を受け取ると約束されたとします。
しかし、今すぐに100万円を手にすることができるのであれば、多くの人は今すぐに受け取りたいと考えるでしょう。これは、1年後の100万円は、現在の100万円よりも価値が低いと考えるからです。 - これはなぜでしょうか?
もし、今100万円を手にすることができれば、それを銀行に預けて金利を得ることができます。
つまり、1年後には100万円よりも多くの金額を手にすることができる可能性があるからです。
金利は、お金の時間的な価値を決定する上で重要な要素です。
金利があるからこそ、将来のお金は現在の価値よりも低く評価され、投資や貯蓄の判断に大きな影響を与えます。
割引現在価値
経済学では金利を計算する数式「割引現在価値」という計算式があります。
この計算を行うと、異なる時点でのお金の価値を比較することが出来ます。
現在割引価値とは、将来ある時点で受け取れるはずのお金を、現在の価値に換算したものです。よく企業価値評価や投資判断に使われています。
少し計算してみましょう。
例えば、1年後に100万円受け取れるお金は、今どのくらいの価値があるのでしょうか?
ここで分かりやすく金利を10%として考えてみます。ちなみに日本の2023年の金利は0.003%、1975年は8%近くでした。
金利が10%だと、今の時点の価値は90万9100円になります。
1年後の100万円は今の時点では90万9100円の価値があることになります。
言い換えると、もしも、今90万9100円を金利10%の銀行に置いておいたら1年後には100万円になっているわけです。
では、2年後の100万円はどうなるでしょうか? 金利が10%だとすると、82万6400円になります。
100万÷(1 +0.1)² = 82.64
割引現在価値の計算方法
将来の価値 ÷ (1+利率)年数乗
これらの計算によると、現在の82万円が未来の100万円と同じ価値があるということになります。
つまり、金利が高い状況ですと、今手元にあるお金には、かなりの価値があるということがわかります。
住宅ローンも納得できる?
お金の価値が将来低くなるという「現在割引価値」の考え方は長期的な事業を進めるとき、よく使われます。
例えば、企業が新しく工場などの設備をつくるとき、「現在割引価値」を計算します。
将来その工場が生産したものが、どれだけの価値にになるかということを考えてから新しい工場などへの投資を判断するのです。
もし、ある企業が2億円かけて新しい工場を建てるとしましょう。
5年後に3億円の収益が見込めると計算しました。
この場合5年後の3億円をそのまま現在の3億円として考えてはいけません。
5年後の3億円は現在の価値では少し低くなっているはずなので、慎重に検討しなければいけないでしょう。
また、住宅ローンでも使えます。
住宅ローンでは、金利をたくさん支払わなければいけません。
けれど、金利を支払ったおかげで、早く家を手に入れることができましたし、分割にしたことによってその分お金の余裕ができて他のことに使うこともできます。それも仕方がないな・・・と思えればローンを組むメリットは十分にあるはずです。
まとめ
お金の価値はインフレーションや金利といった経済的な要因に加え、機会費用と呼ばれる個人の価値観や将来の目標といった主観的な要素も大きく影響して変化していきます。
お金は時間が経つとその価値が下がっていきます。
お金を貸すときには、金利分を上乗せして戻ってきますし、
お金を借りる場合は、金利を上乗せして返却しなければいけません。
そのため、現在のお金は将来のお金よりも価値があります。
経済学には割引現在価値という考え方があります。
これは、将来のお金の価値を現在の価値にしたらどのくらいになるのかを計算できます。
金利やインフレなどによってたいていの場合は、将来の金額よりも現在の金額の方が安くなります。
つまり、将来収入が見込めるときは、その見積もりは少し割り引いて考えた方が良いでしょう。
未来のお金の価値は現在の価値よりも低いからです。
住宅ローンなどの場合は、金利の支払いが多くなりますが、その代わりに家を早くに手に入れられましたし、分割で支払うことによって余裕資金を他の支払いに回すことができます。
これに納得できるなら、住宅ローンは組んでも楽しく生活できるはずです。
お金は金利やインフレ、そして個人的な事情によってその時々によって価値が変化します。
特に金利が大きい時は現在のお金の価値が上昇するので、貯金や投資、自己投資などどのような使い方をすれば一番納得できるのか考えて、お金を使うようにすると、上手にお金と付き合うことができるでしょう。
参考文献
ティモシー・テイラー 経済学入門
利子 - Wikipedia
かんたんな経済学/資本市場とは?わかりやすく解説。 | 資本主義の奴隷 (capitalism-slaves.com)
投資の基本 : 金融庁 (fsa.go.jp)
1.金利の推移 | なぜ今、資産運用が必要なの? | お金を育てる研究所 (nomura-am.co.jp)
資源エネルギー庁WEBサイト|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)