皆さんは老後の資金についてどんなイメージを持っていますか?
「まだ先のことで全くイメージがつかない」とか
「不安しかない」という方も多いと思います。
必要な資金はあまりにも多いので、用意できるかどうか分かりせんし、老後のライフプランは「失敗してしまったが、またやり直せばいい」といった試行錯誤ができるものでもありません。
老後のライフプランを考えるとき、検討の一つとして「投資」が挙げられます。
投資は、その利益を必ず約束しているものではありません。
けれど手持ちの資産を増やすために、投資は一つの選択になりえるでしょう。
投資は投資についての知識が欠かせません。
何の知識もないまま投資を行えば大切な資産を失ってしまいます。
あらゆるスポーツにルールがあるように、投資にもルールがあります。
ルールに違反して「ひどい目にあった」と訴えても、だれもかばってはくれません。
皆さんが投資のルールを正しく理解できるように、ここからどんなことに注意しなければけないのか、ゆっくり解説していきます。
日本人は投資が苦手であると意識しましょう
実は、日本人は「投資が苦手だし、向いていない」と言われています。
これは日本人が無能であるとか価値がないという意味ではありません。
人にはそれぞれ向き不向きがあるように、日本の文化の中に投資を美徳としない傾向があります。
例えば、投資でお金を儲けることは「楽してお金を儲けている」というイメージを持つ人が多いです。また「投資で稼ぐなんて汚いお金だ」とか「額に汗して稼ぐお金が尊い」といった考えがあります。
しかし、これは大きな間違いです。
投資の種類によっては、なんとなく上がりそうな株でもうけたり、たまたま為替で儲けられる、ということもありますが、それを継続して利益を出すことはとても難しいことです。
投資には「これから起こることを予想する能力」が必要です。
この先、世界中でどんなことが起こるのか、イメージしながら投資先を決めるのです。
けれど、10年または3年後であってもどんな出来事が起こるのか想像することができるでしょうか?
例えば、地震や火山の噴火などの自然災害、感染症の広がり、紛争や戦争から起こる経済の混乱、また企業の急なトップの交代や経営方針の変更、ライバル会社の技術革新など、経済に大きな影響を与えそうなことを予想することが投資で大きく勝つには必要です。
しかし、それらを予想するのはとても困難です。
一人の人が一生をかけて、経済や政治だけではなく、歴史、文化、思想などの、人々が積み上げてきた知識を理解し、刻一刻と変化する社会情勢を把握するために、日々努力を重ねたとしても難しいでしょう。
投資に必要な「未来を予想する力」を身につけるのはとても難しい。
ということを、まず理解したうえで勉強をしていきましょう。
「未来を予想するのは難しい」という謙虚な気持ちをもつことは、しなくてもいい損をできる限り少なくすることができる、ということでもあります。
日本人が投資に関心を持たない3つの理由
一般的に、欧米諸国、特にアメリカやイギリスでは、投資に対する意識が高く、投資家比率も高い傾向にあります。これは、歴史的に株式市場が発展しており、投資に関する教育や情報が充実しているからです。
一方、日本を含むアジア諸国では、貯蓄を重視する傾向が強く、投資家比率は欧米諸国に比べて低いとされています。
しかし、近年の日本ではNISAなどの制度が導入されたり、金融リテラシーの向上に伴い、日本でも投資への関心が高まっているのが現状です。
金融庁の調査によると、日本人の個人金融資産のうち、預貯金が占める割合は約54%で、株式や投資信託などの投資商品は約15%に過ぎません。この割合は、アメリカやイギリスなどの先進国と比べて圧倒的に低く、日本人の投資への関心の低さを示しています。
資金循環の日米欧比較 (boj.or.jp)
日本人が投資に苦手意識を持っている理由は、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
- リスクに対する不安
投資には、元本割れのリスクが伴います。
そのため、日本人は投資を「ギャンブル」や「危険なもの」と捉え、避ける傾向があります。 - 知識や経験の不足
投資には、ある程度の知識や経験が必要になります。
そのため、投資について詳しく知らない日本人は、投資に踏み出すことをためらいます。証券会社のセールスマンに言われるままに買って、大損する人も少なくありません。 - 文化的な背景
日本人は、勤勉で真面目な国民性を持っています。
そのため、投資のようなリスクを伴う活動よりも、預貯金のような安全な資産運用を選ぶ人が多いのです。
しかし、近年では、投資に関する情報や教育が充実し、投資への関心が高まりつつあります。
また、年金制度の改正や、少子高齢化の進行など、将来に向けた資産形成の必要性が高まっていることも、投資への関心の高まりを後押ししています。
金融商品と手数料
最近ではネット証券が使いやすくなっていてネットから投資を始める人も多いですが、たくさんある商品の中でどれを選べばよいのかわかりません。これはプロでも判断が難しいものです。
そんな時、銀行の窓口や証券会社のお勧め商品を選ぶのはよくあることです。
けれど、セールスマンに勧められて買ったのになぜか損をするということが発生します。
なぜこんなことが起こるのでしょうか?
銀行は投資信託や国債などの金融商品を売ると、販売してくれた手数料、また維持手数料など商品にもよりますが、約3%程度の手数料が利益として入ってくることになっています。
銀行員や証券会社の窓口にいる方は、金融商品を販売する人たちです。銀行員側にとって重要なのは稼ぐことです。銀行員のお給料は決して安くはありません。そのお給料の原資はどこからくるのかといえば、日頃相手にしているお客からなのです。
こ投資先の金融商品を買うときの、手数料にはさまざまな種類がありますが、投資信託なら購入時の手数料、また信託報酬とよばれるものがあります。
信託報酬と呼ばれる手数料は、投資信託の運用に必要な費用(運用会社の人件費、市場調査費用など)や、販売会社や信託銀行に対する報酬として使われます。
つまり、金融商品を販売した銀行や郵便局も利益を受け取れるため、一度販売してしまえば確実にリスクなく儲ける「信託報酬という手数料」が重要な儲けになっているのです。
証券会社の窓口は詐欺師ではないので、お客さんが儲かれば、会社も儲かります。
なので、金融商品をわざと買わせているわけではありません。
けれど、銀行や郵便局などは、なんとなく信頼できるんじゃないかと眼が得て、安易に信用して言われるままに金融商品を買ってしまうと、手数料の高い、銀行または郵便局側にとって有利な商品を勧められてしますので、注意しなければいけません。
また、手数料は株の価格にしてみればわずかなものなので、つい見落としがちです。
実は、証券会社にとって手数料は稼ぎ頭です。
手数料をしっかり確認して、その金額にあったメリットが受けられるのか、自分が納得できる証券会社や錦秋商品を選ぶことはとても大切です。
日本の銀行は以前なら、国からの保護を受けて業務をすることが出来ましたが、今では証券会社もグローバル化されていて競争が激化しています。
今では、ネット証券では販売手数料が無料は珍しくありません。
お客を取られないためにも、各銀行や郵便局でも収益を上げるためにあの手この手を考えなければならなくなっています。
銀行員のインセンティブ
銀行で働く人たちの収入は、手数料以外にも「インセンティブ」と呼ばれる利益を得られる場合があります。
インセンティブとは、簡単に言うと販売ノルマ達成などの成果に応じて支払われるボーナスのようなものです。
具体的には以下のようなものがあります。
- 販売件数や金額に応じたインセンティブ
特定の金融商品を一定数または一定金額以上販売すると、ボーナスが支払われる仕組みです。 - 利益貢献度に応じたインセンティブ
販売した金融商品によって銀行にどれだけの利益をもたらしたかによって、ボーナスが支払われる仕組みです。
これらのインセンティブは、銀行や商品によって制度が異なります。
また、具体的な金額も公開されていないことが多く、一概には言えませんが、インセンティブは、銀行員のモチベーションを高め、販売を促進する効果があります。
しかし、このインセンティブは、私たちお客にとって必ずしも最適な商品を勧められるとは限らないという問題があります。
例えば、販売件数や販売金額に応じたインセンティブの場合、手数料が高い商品や、私たちにとって必要のない商品を勧められてしまう可能性があります。
したがって、銀行員から金融商品を勧められた際には、必ずしもその商品が自分に合っているとは限らないことを念頭に置き、手数料やリスクなどを十分に理解した上で検討することが大切です。
相談相手の選び方
金融商品について相談する場合、信頼できる専門家に相談することが重要です。最後に金融商品について相談する際に考慮すべきポイントと、相談相手の選び方について見ていきましょう。
信頼性と専門知識の確認
- 資格と経験
相談する相手が適切な資格(例:CFP(Certified Financial Planner)、AFP(Accredited Financial Planner)など)を持っているか確認しましょう。また、どのくらいの経験があるかも重要です。 - 評判
過去の顧客からの評判やレビューを確認することも有効です。
利益相反のないアドバイス
- 独立系のアドバイザー
銀行や証券会社は、自社の商品を販売することに利益があるため、必ずしも中立的なアドバイスを提供するとは限りません。独立系のファイナンシャルプランナー(IFP)や独立系のアドバイザー(IFA)を選ぶと良いでしょう。 - 報酬体系の確認
アドバイザーがどのように報酬を受け取るか(手数料、コミッション、フィーなど)を確認し、利益相反がないかを確認しましょう。特定の金融機関や代理店になっていたり、証券会社の仲介をしていると、金融機関からの手数料を受け取っているので、こちら側ではなく金融機関側を向いて仕事をする可能性が高くなります。
透明性
- 明確な説明
金融商品のリスクやコスト、仕組みについて、わかりやすく説明してくれるかどうかを確認しましょう。 - 情報提供
複数の選択肢を提示し、比較検討できるようにしてくれるかも重要です。
具体的な相談先の選択肢
- 独立系ファイナンシャルプランナー(IFP)
- 独立しているため、特定の金融機関に縛られず、中立的なアドバイスを提供してくれる可能性が高いです。
- フィーオンリーのファイナンシャルアドバイザー
- 特定の団体から報酬を受けているアドバイザーではなく、固定料金でサービスを提供するアドバイザーは、特定の商品を販売するインセンティブがないため、より中立的です。
- 公認会計士(CPA)や税理士
- 資産管理や税務についてのアドバイスを求める場合に有用です。特に長期的な資産形成や相続計画に関して専門知識を持っています。
- 消費者保護団体や公的な金融相談機関
- 各自治体の消費生活センターや金融庁が提供する金融相談サービスなど、利益相反がない公的機関のサービスを利用することも考えられます。
金融商品について相談する際は、信頼性、専門知識、透明性を持つアドバイザーを選ぶことが重要です。独立系のファイナンシャルプランナーやフィーオンリーのアドバイザー、公認会計士、税理士、公的な金融相談機関など、利益相反のないアドバイスを提供してくれる専門家に相談することがお勧めです。
まとめ
日本人の投資のイメージは「ギャンブル」と考えたり、また働かずにお金を稼ぐことへの嫌悪感から、日本では金融の知識が理解されているとは言えません。
また、お金をどのように扱うべきなのかを知らぬままに大人になり散財してしまう人もいます。
投資とは他の人を出し抜かなければ利益が出ない商品です。
つまり、他の人より早く違った行動をすれば、たくさんの収益を得られます。
他の人と違う行動への抵抗感が強いのも、日本人が投資に苦手意識を持つ原因の一つでしょう。
証券会社からやさしげに声をかけられ断れなくなり、良く分からない商品を買ってしまうこともあります。証券会社からの情報には良いものもたくさんあります。それらは積極的に利用させてもらいましょう。
けれど、証券会社も普通の企業です。
話すと親身になって相談してくれてるので、つい情が移ってしまって契約してしまうことも多いでしょう。
しかし、行員のセールストークにはそれなりの戦略がある、ということを心にとめて話を冷静に聞くことが大切です。
また、ありがちなのが窓口で金融商品の説明を受けたとき「自分の知識が足りなくて分からないだけだ」と自虐的に考え、言われるがままになってしまうことです。
分からなければやめてみるという判断も必要です。
一番いけないのは、何も考えずにおすすめを買ってしまうのが一番危険です。
知識を十分付けてから、購入する、と考えるのもいいかもしれません。
しかしそれは、もしかしたらいつまでたっても購入できないということになるかもしれません。
金融商品を買うためには、ある程度の知識が必要ですが、完璧な知識を身につけてから投資を始める必要はありません。
まずは、最低限必要な知識を身につ け、投資目的とリスク許容度を明確にした上で、自分に合った金融商品を選びましょう。
わからないことがあれば、相談しながら少しずつ知識を深めていくことが重要です。
参考文献
経済学入門 ティモシー・テイラー
お金以前 土屋剛俊
投資のきっかけ 【個人の資産形成に関する意識調査】QUICK Money (moneyworld.jp)
元銀行員が語る、金融機関の本音 “プロにお任せ”の資産運用はココが危険 - ログミーファイナンス (logmi.jp)
日本FP協会 (jafp.or.jp)