ぽれぽれ経済学

分業が市場経済を発展させた

分業と経済発展

前回は「分業」とはなにか?
「分業」にはどんなメリットがあるのかを見てきました。
ここでは「分業」をもう少し掘り下げて「分業」が社会全体にもたらす影響について解説します。

「分業」の影響って大げさすぎじゃね?

いいえ、「分業」は私たちの生活スタイルを大きく変えてしまいました。「分業」が完全に生活になじんだので「分業」のない生活はイメージできないほどです。
私たちの生活にすっかり浸透した経済のしくみをを、ちょっと意識することから経済学を始めましょう。

分業と市場経済

「分業」を、よりはっきりとイメージするために、まず「分業」が進んだ経済活動を1つの大きな倉庫として考えてみます。

例えば、
ある国の経済活動で生み出されたモノが、すべてこの倉庫に集められるとします。作られたモノは倉庫の表からどんどんと入れていきます。そして、なにかが欲しい人は、倉庫の裏口から必要なモノを持っていくことができます。

この倉庫は初めは順調でしたが、しばらくすると困ったことが起きます。

みんなが欲しくないモノ、必要のないものが倉庫の中に余って山積みになり始めます。逆にみんなが欲しいものが足りなくて裏口に人々が長蛇の列をつくるようになりました。

なにか調節するものが必要だニャー

倉庫に入ってくるものと、出ていくものをうまく調節するにはどうしたらいいのでしょうか? 

倉庫番は考えました。入ってくるモノに価値という「ものさし」をつけてみました。倉庫にたくさん余っているモノは、その価値はゼロ。みんなが欲しがっていて倉庫にないものには、価値が100。このように価値に強弱をつけたのです。

そして倉庫からモノを持ち出す場合は、その価値に応じた支払いをしなければいけないことにしました。

すると、みんな倉庫から持ち出すときに簡単に手が出せなくなります。持ち出すものが本当に必要なモノなのか考えるようになります。モノを運び込む側の生産者も、適当に自分のつくったモノを何でも入れればいいのではなく、みんなが欲しいと思うモノ、価値の高いものを運び込もうとするでしょう。

このようにモノに価値がつけられたおかげで倉庫はガラクタでいっぱいにならずに済むようになりました。

市場経済において、倉庫に入ってくるものと、倉庫から出ていくものの価値は、「需要」と「供給」によって決まります。そして、倉庫の中にあるモノの価値は「価格」です。

倉庫から何かを持ち出すには、その対価を支払わなければいけません。だから人々は持っていくものを慎重に検討して、無駄に取りすぎないように気を付けます。

反対に倉庫に運び込む側、つまりその労働の価値は、賃金や給料といった報酬に表れます。報酬をたくさん受け取るために、生産者はみんなが求めている価値の高いモノを持ってこようとします。

市場経済とは

個人や企業が自由に売買を行うことができる経済のかたち。他に国が生産を管理する「計画経済」というかたちがあります。

ほしい人とつくる人と価値

このような「ほしい人」「つくる人」と「価値のメカニズム」があって初めて市場経済は機能しています。このしくみがあってバランスの取れた分業が可能になって、倉庫に入ってくるものと、出ていくものがうまく釣り合うようになるのです。

このバランスのとり方が国によって「人々の自由なやりとり」で決める国、「国の政策」で決めるの国、またその両方の組み合わせて決めるの国などさまざまです。どんなバランスのとり方にしたとしても、社会は「3つの基本的な問い」に答えなければいけません。

  • 社会は何を生み出すべきか
  • どうやってそれを生み出すのか
  • 生み出されたものを誰がつかうのか


人々の自由なやり取りを中心にした市場経済は、優れた分業のしくみによって私たちに豊かな暮らしをもたらしてくれました。お店に行けばありとあらゆるものが手に入ります。日本に住む私たちにとってそれが当たり前のように思えますが、国が商品の配分を決める社会もいまでもたくさんあります。そのような国ではモノが簡単に手に入る、ということが少ないです。


また、経済のしくみを大きな倉庫に例えてきましたが、本当はそんなに単純ではありません。格差や貧困、公害、税金、規制などの問題も調整に大きな影響を与えています。

経済を知るということは、当たり前のようにみえる市場経済の優れたしくみにあらためて目を向けて理解を深めていく、ということでもあるのです。

まとめ

分業がもたらす社会への影響について見てきました。

モノに価値という尺度を与えると、ほしい人と、つくる人がその価値の釣り合う点が見つけやすくなります。このしくみによってバランスの取れた分業ができるようになり、倉庫に入ってくるものと、出ていくものがうまく釣り合うようになっていくのです。

参考文献

経済学入門 ティモシー・テイラー

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