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公共財ってなんですか?

公共財ってなんですか

私たちがいつも何気なく利用している道路や信号機、また火事があったら助けてくれる消防車などは、お店で売っている商品とは違いますが、経済学の世界ではこれも「商品」として考えます。

私たちの生活に必要な道路や消防、警察、教育などが「商品」だとしたら、サービスに値段が付けられて売ったり買ったりしているはずですが、値段はつけられていません。
なにか値段がつけられない理由があるのでしょうか?

今回はそんな「公共財」について解説します。

公共財とはなんですか?

公共財とは「誰でも無料で利用できる財やサービス」のことです。

それがないと私たちの生活が困るのに、民間企業の競争に任せていたら十分に手に入らないような性質をもつものを「公共財」と呼んでいます。例えば、国防がその代表です。また警察、消防、道路、橋、河川、海岸、公園、図書館、博物館、学校、病院などが「公共財」にあたります。

公共財の特徴 その1 使っても減らない

公共財には大きな2つの特徴があります。

その一つ目は「非競合性」です。
「非競合性」とは、誰かがその商品を使っても、そのものが減らない性質のことです。

例えば、道路や信号機は誰かが道を渡るときに使っても、減ったりはしません。防波堤や公園も同じです、防波堤を使ったとしても防波堤は波にさらわれない限り減ったりはしません。公園も遊具を使っても減ったり、土地が小さくなるなんてことはありません。公園のベンチを誰かが使ったら、一時的にその場は使えなくなりますが、その人が立ち去ればまた他の人が使うことが出来るようなものは「非競合性」があると言えます。

このように同じものを使っても誰かと取り合いになったりしない、競合しないものを「非競合性」と呼びます。

公共財の特徴 その2 ただ乗りが可能

もう一つの特徴が「非排除性」です。
「非排除性」とは、そのサービスをうけるとき代金を支払わなくても、そのサービスを受けるグループからその人を排除できない性質のことをいいます。

例えば、国防などは「自分は守られなくてもいいから支払わない」という人がいたとしても、軍の保護対象からは排除するということが現実的に不可能なものです。また消防活動も「燃えたままでいい」という人がいても、そこだけ消火活動しないということはありません。

このように、だれか特定の人だけ除外して、そのサービスを受けないようにすることが難しいものを「非排除性」と呼びます。

公共財の特徴のレベル 

公共財は、こうした「非競合性」と「非排除性」の性質をもちます。

公共財は政府が提供しているから「公共財」であるとは限りません。また、あるモノがこの2つの特徴を持たないからといって、それに対する公共政策が不要であるとは限りません。ややこしいのですが、実は公共財と呼ばれているものには、完全に「非競合的」だったり、「非排除性」だったりしないものがたくさん含まれています。市場から比べるとその「非競合性」や「非排除性」のレベルが高いと、市場に供給をまかせるとうまくいきません。

では公共財の代表的な例を見ていきましょう。

公共財の例

市場に任せられない対策として代表的なものをいくつかあげます。

  • 公衆衛生対策
    公衆衛生対策は、一度実施されると社会全体にその恩恵が広まります。例えば予防接種を受けた人は病気になりにくくなり、他の人に病気を広めなくなります。それは予防接種を受けていない人にも病気の蔓延が小さくなるという恩恵が受けられます。つまり対価を支払わなくても恩恵を受けられてしまうので、市場メカニズムでは適切に提供されにくいと考えられます。
  • 道路
    道路をつくることは社会全体に多くの便益を与えてくれます。
    有料道路は支払った人だけですが、一般道は誰でも使うことが出来ます。誰かが使ったからといって他の人が使えなくなることはありません。
  • 科学研究
    科学研究が市場に任せられるかどうかという議論は昔から議論のつきない問題ですが、一般的には市場に任せられといわれています。科学研究の成果は、一度発表されてしまうと、誰でも利用できる性質があります。そのため、対価を支払わない人を排除することが難しく、市場メカニズムでは適切に提供されにくいと考えられます。
    特に基礎研究は、短期的な収益性が期待できないため、市場メカニズムでは過小評価される可能性があります。基礎研究は、将来の技術革新の基礎となる重要な研究であり、社会全体の利益のためには、政府による支援が必要です。
  • 教育
    教育を市場に任せるかどうかも賛否両論あります、市場に任せた方が教育の質や効率があがるという意見もありますが、教育は公益性が高く、教育は社会全体に利益があります。このため市場に任せると優先順位が下がる可能性があり、また経済格差が教育格差につながる可能性もあります。

フリーライダー問題

もしも正当な対価を支払わずに、公共財の利益を手に入れられるとしたらどうなるでしょうか?

例えば、すべての道の建築費を利用者が支払うことになり、すべての道が有料道路になったときのことを考えてみましょう。

すべての道路が有料になったら、その通行料をもれなく支払ってもらうためにたくさんの対策が必要になります。けれどすべての人にもれなく支払ってもらうのは難しくなりそうです。スマホを使って強制的に料金を徴収する方法など技術的には可能かもしれません。多くの人は不便を感じ、できるなら料金を払わずに道を使いたいと思うはずです。

道路は基本的に誰かが使っても減らないので、支払わないと頑張る人がいて支払いへの抜け道がみつかれば、無料で通行することが出来る可能性は高いです。その方法が広まれば通行料を支払いが滞り、道路の建築費が支払うことができなり、道路の建設が出来ず、結局みんなが道路の恩恵を受けられなくなるでしょう。

このように、経済活動に必要なコストを支払わずに、利益だけを受ける人を「フリーライダー」と経済学用語で呼んでいます。

フリーライダー問題は経済を考えるうえで大きな意味を持っています。
経済学とは基本的に「生産者と消費者がそれぞれ自分の利益だけを考えれば物事がうまくいく」前提で成り立っています。つまり「必要な人が、必要な分だけ購入して、必要な分支払う」ことで上手くいくはずです。

けれど、公共財については、それが上手く働きません。誰もが自分の利益だけを考えて「払わなくてもサービスを受けられるなら払わないようにしよう」という人が増えれば、誰にとっても望ましくない結果が待っているのです。

公共財は税金で成り立っている

みんなにとって必要なものだけど、自分が支払わなくてもそのサービスが受けられてしまうタイプの事業は一体どうしたら用意することが出来るのでしょうか?

それには「社会的圧力」や「強制」が有効です。

「社会的圧力」は、支払ってくれた人を高く評価して、支払わない人に後ろめたさを感じさせる方法です。フリーライダーを大きく批判するキャンペーンを実施したり、懲罰をつくり違反者を罰則を科すなどするとフリーライダーをしにくくなります。

けれど公共財の一番の提供方法は「強制」つまり税金です。
国民から「強制」的に税金をとって公共財の費用を賄います。私たちはその公共財を欲しくても、欲しくなくても、すべての人が税金を負担しなければいけません。集めた税金を使って政府が直接公共財をつくることもありますし、民間に依頼して間接的に提供することもあります。必要なお金を集めるのが政府なら、実際つくるのが民間だったとしても政府が公共財を提供したことになります。

もしも、公共財へのコストを支払うなんらかの方法を見つけることが出来なければ、私たち全員「損」をすることになるのです。

まとめ

公共財について見てきました。

公共財は、国民全体の利益につながる財です。例えば、国防は、国民の安全を守るために必要な財であり、警察は、国民の安全と秩序を維持するために必要な財です。道路や橋は、国民の移動を円滑にするために必要であり、公園や図書館は、国民のレクリエーションや学習のために必要です。

市場メカニズムは、効率性の高い財の供給を実現する仕組みですが、公共財の場合、フリーライダー問題や公益性などの理由から、市場メカニズムだけでは適切に供給されにくい財です。そのため、公共財の供給は、政府などの公共機関によって行われることが一般的です。

公共財は税金で支払われます。税金は強制的に国民から徴収するもので、私たちが欲しいかどうかにかかわらす使われてしまいます。しかし公共財は社会のすべての人にメリットがあるので、税金という方法で公共財のコストを支払うことは社会にとって大きな利益になるのです。

参考文献

経済学入門 ティモシー・テイラー

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