となりの生き物

小さな富士山 クロフジツボ

クロフジツボ

クロフジツボは富士山型の殻を持った海岸の生き物です。
潮が引いていると岩の間からクロフジツボが現れてその姿を見ることができます。

岩についたクロフジツボは、とげとげと尖った体で岩の一部のように見えます。

近づいてその中を覗いてみましょう。
中に奥に貝のような、何かが入っているのが見えます。

クロフジツボ

動物界
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顎脚綱
無柄目
クロフジツボ科

クロフジツボの特徴と生態

クロフジツボは海岸の近くの岩にくっついていますが、エビやカニと同じ仲間の生き物です。

エビやカニは動き回ることができますが、このフジツボの仲間は岩にくっついて動く様子はありません。なぜ、エビやカニの仲間なのでしょうか?

実は、クロフジツボは1829年まで貝の仲間として登録されていました。
岩にくっついているし、石灰質で出来た殻を持っているし、貝でいいだろ、と当時の方も考えたのですが、この生き物の幼いころを観察したところ、甲殻類と同じ「ノープリウス幼生期」という特別な形になる時期を過ごすことが分かったので「甲殻類」に変更されました。

クロフジツボの殻は濃い灰色で円錐形をしています。
直径は3~4センチくらい、
高さは3センチほど、海岸の生き物としては大型で目立ちます。

クロフジツボの若いときは、富士山のようなきれいな円錐形をしていますが、年を重ねていくうちに形が少し不均衡になり、波に現れてからの口の部分が欠けて大きく開いてきます。

クロフジツボの殻は外見から見ると、一つにつながった円錐形ですが、実は4枚の殻が合わさってつくられたものです。お互いがしっかりくっついているので表面を見ただけでは4枚の殻が合わさっているようには見えません。殻の表面には縦の線が引かれ強い波にも耐えられる体をもっています。

日本には津軽海峡から南に生息しています。
クロフジツボは強く波の当たる岩の上が好きなので、岩のある海岸でぜひ探してみてください。

フジツボを船から除去する方法

岩の上についているフジツボたちを観察するのは、とても楽しいのですが、実はフジツボは船底にもくっついてしまい船乗りたちに嫌われています。

フジツボが船底に付着すると、船体の表面が粗くなって、水との摩擦が増加します。
すると、船の航行速度が低下し、燃費が悪化するため、船底のフジツボは除去しなければいけません。

クロフジツボを制御するための方法はいくつかあります。

  1. 物理的除去
    高圧洗浄やブラシを使って船底からフジツボを物理的に取り除く方法です。
    定期的なメンテナンスが必要ですが、化学物質を使わないため環境に優しいです。
  2. バイオフィルム阻害
    フジツボが付着する前に形成されるバイオフィルムを阻害することで、フジツボの付着を防ぐ方法です。
    特定のバクテリアや酵素を利用することが研究されています。
    フジツボ等の海洋生物の付着を防止する微生物フィルムに関する研究 早瀬伸樹
  3. 紫外線照射
    紫外線を利用してフジツボの幼生を殺す方法です。
    紫外線照射装置を船底に取り付けることで、フジツボの付着を防ぐことができます。
    エネルギア総研レビュー No.51 (energia.co.jp)
  4. 生分解性ポリマー制御
    海水に影響を及ぼさない水棲生物の付着防止材料として注目されています。
    ポリ乳酸による海洋生物の付着制御
    海洋生物の付着防止技術研究の展開

フジツボが船につくと、船の性能低下やメンテナンスコストの増加してしまうため、フジツボの除去は欠かせません。
これらさまざまな除去を組み合わせることで、環境に配慮することができます。

また、近年では海洋環境への影響を考慮し、環境に優しい船底塗料の開発が進められています。これらの塗料は、フジツボの付着を抑制しつつ、海洋生物への影響を最小限に抑えることを目指しています。

参考文献

磯の生き物図鑑 トンボ出版
日本動物大百科

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