ぽれぽれ経済学

景気とGDP

景気とGDP

私たちはどのようなときに景気がいいと感じるのでしょうか?

自分の収入が増えたり、仕事が見つかりやすかったり、景気が良いというニュースを聞いたりすることで世の中の景気が良いことを判断できます。

例えば、新しい商品を買っているときや、旅行の計画を立てている時、また住宅や車などの大きな買い物を検討したりしているときは「景気が良いかな・・・」と感じて将来の不安はあまり感じません。

もし、あなたがお金を増やしたいなら景気を読む力は必要不可欠です。

でも、そもそも「景気」とは一体何を指していて、どんな意味があるのでしょうか?

ここでは「景気」を表す代表的な指数「GDP」を中心に「景気」について詳しく解説していきます。

景気とはなんですか?

景気とは、売買や取引などの経済活動全般の動きを指します。

経済活動が活発な状態を「景気が良い」または「好景気」「好況」といい、反対に経済活動が停滞している状態を「景気が悪い」または「不景気」「不況」といいます。

経済活動の活発さを図るために、さまざまな経済指標があって、それらの指標をもとに景気を判断します。
指標の代表的なものとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 国内総生産(GDP)
    GDPは、ある一定期間内に国内で生産された付加価値の総額を示す指標です。GDPが拡大すれば、経済活動が活発化していると判断されます。
  • 消費者物価指数(CPI)
    CPIは、消費者が日常的に購入するモノやサービスの価格水準を示す指標です。CPIが上昇すれば、物価上昇が進み、景気が過熱していると判断されます。
  • 失業率
    失業率は、労働力人口のうち、仕事を探していても見つからない人の割合を示す指標です。失業率が低下すれば、雇用が拡大していると判断されます。

これらの指標は、それぞれ景気動向の異なる側面を示すものです。そのため、複数の指標を組み合わせて分析することで、より正確に景気の状況を把握することができます。

また、景気は常に一定の方向に動いているわけではありません。
好景気から不景気へ、不景気から好景気へ上がったり下がったりしています。このような景気の上がり下がりを経済学用語で「景気循環」と呼んでいます。
景気循環を判断するためには、複数の指標を長期的に分析することが大切です。

つまり、景気の良し悪しは、経済活動の活発さだけでなく物価の上昇や失業の減少など、さまざまな要因によって判断されます。そのため、単一の指標に頼るのではなく、さまざまな指標を組み合わせて分析することが重要です。

景気を判断する指標はたくさんある

景気を判断する指標には、経済活動の量、価格、雇用の3つの種類に分けることが出来ます。その中の代表的な指標をご紹介します。

  • 生産指標
    生産指標は、経済活動の量的な面を示す指標です。
    国内総生産(GDP)
    鉱工業生産指数
    卸売物価指数
    小売物価高
  • 価格指標
    価格指標は、経済活動の価格的な面を示す指標です。
    消費者物価指数
    生産者物価指数
    卸売物価指数
  • 雇用指標
    雇用指標は、経済活動の人的面を示す指標です。
    失業率
    労働力参加率
    就業者数

これらの指標は、それぞれ景気動向の異なる側面を示すものです。そのため、複数の指標を組み合わせて分析することで、より正確に景気の状況を把握することができます。

そうはいっても、この指標にすべて目を通して判断するのはとても大変です。もう少し簡単に景気を判断することはできないでしょうか?
景気動向指数 : 経済社会総合研究所 - 内閣府 (cao.go.jp)

GDPを理解してみよう

景気を判断するために使われている指標はとてもたくさんあるので、私たちがすべて理解するのはとても大変です。
なので一番ニュースとしても扱われやすい「GDP」だけに注目してみましょう。

GDPを簡単に理解するために、ざっくりとGDPと聞いたらどうやって考えたら良いのか見ていきましょう。

まず、GDPは「国の経済規模」つまり「大きさ」と考えましょう。
GDPは、国内で生産された付加価値の合計を示す指標です。
付加価値とは、製品やサービスの生産によって新たに創出された価値のことです。
GDPは国内で新たに創出された価値の総額(大きさ)を示す指標なのです。

2つ目の方法は、GDPを「国の経済活動の活発さ」つまり「動き」と考えましょう。
GDPは国内で生産された付加価値の総額を示す指標です。
GDPが拡大すれば、国内での経済活動の動きが活発になっています。

3つ目の方法は、GDPを「国民の所得の源泉」つまり「お金の湧き出るところ」と考える方法です。
GDPが大きくなれば、国のお金が増えていることになります。
そしてそのお金は、企業の利益や賃金、利子、家賃などの形で国民に還元されていきます。

このように、GDPはさまざまな視点から理解することができます。自分に合った好きな視点から理解して、GDPの意味や役割をより深く理解しましょう。

付加価値とはなんですか?

GDPは国内で生産された付加価値の合計ということですが、付加価値とはなんでしょうか?

ここで分かりやすい例をあげて見ていきましょう。

例えば、あるパン屋さんが1年間に100個のパンを販売したとします。
パン屋さんがパンを販売する際には、小麦や砂糖などの原材料を仕入れなければなりません。また、パンを焼くための電気やガスなどのエネルギーも必要になります。

パン屋さんが1年間に100個のパンを販売して得た売上高を100万円とします。この売上高をそのまま利益と単純に考えることはできません。パンをつくるためには小麦や砂糖などの原材料を仕入れましたし、電気やガスなどのエネルギーをつかいました。
今そのパン屋さんの1年間の小麦や砂糖などの原材料の価格と電気やガスなどのエネルギーの価格が合わせて40万円だったとします。
そうするとパン屋さんではこの経費を差し引いた利益つまり 

100 - 40 = 60万円

この60万円がパン屋さんの利益になります。
パン屋さんの利益、つまりパン屋さんが新しく生み出した「付加価値」になります。 

街にはたくさんの商店や企業があります。すべてのお店、企業がこのように売り上げから付加価値を生み出しています。その加価値をすべてを合算した指数がGDPです。
つまりGDPは、原材料やエネルギー(中間投入)を差し引いた「付加価値」の合計です。

別の例で考えてみましょう。
ある会社が1年間に10台の自動車を製造したとします。
自動車を製造する際には、鉄やアルミなどの原材料を仕入れなければなりません。また、自動車を製造するための工場や設備も必要になります。
会社が1年間に10台の自動車を製造して得た売上高は、1,000万円とします。
しかし、この売上高には鉄やアルミなどの原材料の価格や、工場や設備の費用などの材料費(中間投入)が含まれています。

会社が新たに生み出した価値は1,000万円から鉄やアルミなどの原材料の価格や、工場や設備の費用などの中間投入を差し引いた、500万円になります。

この500万円が付加価値となってGDPの指標の一部になります。

儲けた分だけ合計したら国民の豊かさが分かる?

GDPは、国内で新たに生み出された付加価値の合計です。
そのため、付加価値が大きい国、つまりGDPが高い国は、「その国の国民の儲けも大きそうだな」と判断することができます。

つまり「GDPで景気の度合いを判断する」こととは、こういうことです。
GDPは景気を知ることが出来ます、そしてGDPを比べれば一目瞭然どちらが大きいかがすぐにわかります。けれど逆に言えば付加価値の合計、経済の規模しか知ることはできません。

経済の規模を知ることも大切です、けれど経済の規模は私たちの豊かさとイコールではありません。

ニュースなどでGDPの報道がされるときによく言われているのが、その成長率だけに注目され
「前年度から比べてどうだったか?」
「成長率がマイナスなんか許されない」
ということばかり言われます。
また「中国に抜かされたから大変だ」
「アメリカはすごい」
などもよく耳にします。

しかし、GDPはあくまでも経済活動の規模を示す指標であり、国民の豊かさを直接的に示す指標ではありません。
例えば、GDPが高い国でも国民の平均所得が低い国や、格差が大きい国などがあります。
また、GDPが高い国でも環境破壊や社会問題が深刻な国もあります。

そのため、GDPはあくまでも、国の豊かさを判断する一つの指標として捉えるべきです。国の豊かさと国民一人一人の豊かさは違います。

GDPのほかにも、国民の平均所得や、格差、環境指標、社会指標など、さまざまな指標を組み合わせて、国の豊かさを判断することが重要です。さまざまな指標を組み合わせて分析し、より客観的に国の豊かさを判断しているニュースを見るようにしましょう。

まとめ

景気が良いという言葉の意味について解説しました。
景気を判断することは国にとっても、企業、そして投資をする人たちにとって大切なことです。
景気を判断するために生産活動、価格、そして雇用状態の3つの方向からたくさんの指標がまとめられています。

景気を判断するために一番有名なのがGDPです。
たびたびニュースに取り上げられているので注目度も高い指数ですが、この一つの指標だけで景気を判断してはいけません。
GDPはその国の付加価値を合計したもので、その国の「経済の規模」「経済の活発さ」「所得の源泉」です。

国全体の付加価値を合算しているので、その国の経済規模や国の豊かさを判断するには便利な指標です。しかしこの指標だけで単純に他の国と比べても意味がありません。

GDPには国の人口数、所得の格差、環境問題などが指数に反映されていません。国民の豊かさはGDP一つでは図ることはできません。けれどニュースではこの指標だけをもとに報道されることが多いので、注意が必要です。

参考文献

ティモシー・テイラー 経済学入門
土屋 剛俊 お金以前

おすすめの記事

-ぽれぽれ経済学